外形標準課税とは?2026年の対象法人と計算方法を解説
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今年は赤字なのに、事業税の納付が残る。資本金は1億円以下なのに、親会社から対象判定を求められた。外形標準課税は、そんな場面で確認が必要になる仕組みです。
外形標準課税は、会社の所得だけでなく、付加価値額や資本金等の額も使って法人事業税を計算する方法です。2024年度の税制改正により、2025年・2026年に始まる事業年度から、資本金1億円以下でも対象になる場合が加わりました。
まず自社が対象かを確かめ、次に税率を掛ける金額を整理します。最後に一つの赤字会社の数字で計算してみると、決算前に用意する資料と納税資金が見えてきます。
この記事でわかること
- 2026年の対象法人と資本金1億円以下の追加基準
- 付加価値割・資本割の計算と赤字会社の試算
- 申告期限と決算前にそろえたい資料
外形標準課税とは?赤字でも事業税がかかる仕組み

所得割だけでなく付加価値と資本も計算対象
法人事業税は、会社の事業に対して都道府県が課す税金です。その計算方法の一つが外形標準課税で、これだけで独立した新しい税目ではありません。
一般の事業を行う対象法人では、所得に応じた「所得割」、給与や利子などから求める付加価値額に応じた「付加価値割」、資本金等の額に応じた「資本割」を合算します。
2004年度に導入された背景には、道路や消防などの行政サービスを利用する会社に、事業の規模に応じた負担を求める考え方があります。所得だけで計算する会社と比べて、税率だけでなく計算に使う資料も変わります。
会社の赤字と税務上の所得は別
「赤字だから税金はゼロ」と考えると、納税資金が足りなくなることがあります。外形標準課税では、所得割がゼロでも付加価値割や資本割の負担が残る場合があるためです。
また、決算書の赤字が、そのまま税務上の所得ゼロを意味するわけではありません。税務では費用の扱いなどを調整します。後で出てくる「単年度損益」も、決算書の最終利益をそのまま写す数字ではありません。
法人住民税の均等割も、所得がなくても負担が残る別の税金です。法人税と法人住民税の均等割の違いも確認し、税額一覧では税目ごとに分けておきましょう。
外形標準課税の対象法人と2026年の追加基準

期末資本金1億円超の法人と適用除外
最初に見るのは、事業年度末の資本金または出資金です。基本の対象は1億円を「超える」法人で、ちょうど1億円ならこの基準には当たりません。ただし、そこで確認を終えず、追加された二つの基準も見ます。
表の「払込資本」は、貸借対照表の「資本金」と「資本剰余金」を足した金額です。まずこの二つの欄と前期の申告書、グループの出資関係を手元に置いて確認します。
| 判定の区分 | 主な条件 | 適用時期 |
|---|---|---|
| 従来の基準 | 期末の資本金・出資金が1億円超 | 従来から |
| 減資への対応 | 前期が外形対象/期末資本金1億円以下/払込資本10億円超 | 2025年4月1日以後開始年度 |
| 100%子法人等への対応 | 特定法人による完全支配関係等/期末資本金1億円以下/調整後の払込資本2億円超 | 2026年4月1日以後開始年度 |
公共法人等、特別法人、一般社団法人・一般財団法人などには除外の定めがあります。電気・ガス・保険等の事業にも別の課税方式があるため、以下は通常の事業を行う普通法人を中心に説明します。
2025年から適用される減資への対応
資本金を減らし、同じ金額を資本剰余金へ振り替えても、払込資本の合計は減りません。
前期に外形標準課税の対象だった会社が、期末資本金を1億円以下にしても、払込資本が10億円を超えるなどの要件を満たせば対象になります。「減資したから対象外」とは判断できなくなっています。
施行初年度には、2024年3月の公布日前後の状態を確認する経過措置もあります。過去に減資した会社は、今年の貸借対照表だけでなく、各年度の資本金と対象だった履歴を並べて確認してください。
2026年から対象となる100%子法人等
2026年4月1日以後に始まる事業年度からは、一定の大企業グループの子法人等も加わりました。「特定法人」は、原則として払込資本50億円超の法人等を指し、非課税・所得割のみの法人等を除くなどの定義があります。
特定法人に直接・間接に100%支配される関係や、100%グループ内の複数の特定法人が全株式等を保有する関係が対象です。さらに、子法人側の期末資本金1億円以下、払込資本2億円超などの条件を併せて見ます。
一定の2024年3月30日以後の資本剰余金からの配当等には、判定額への加算調整があります。単に「親会社が上場企業」「新設会社」「資本金が小さい」という理由だけで、対象・対象外を決めないことが大切です。
一定のM&Aには、所定の5年間を対象外とする特例もあります。2024年9月2日~2027年3月31日に認定を受けた特別事業再編計画に基づく買収等が対象で、一般の企業買収すべてに使えるわけではありません。
外形標準課税の税率と特別法人事業税

所得割と付加価値割と資本割の税率
対象法人だと分かったら、次は税率を選びます。税率を掛ける基になる金額を「課税標準」と呼びます。一般の所得等課税事業を行う外形対象法人について、2022年4月1日以後開始事業年度の標準税率と東京都の税率を比べると、次のようになります。
| 区分と掛ける金額 | 標準税率 | 東京都の超過税率 |
|---|---|---|
| 所得割:所得 | 1.0% | 1.18% |
| 付加価値割:付加価値額 | 1.2% | 1.26% |
| 資本割:調整後の資本金等の額 | 0.5% | 0.525% |
三つの税率は、掛ける相手の金額が違います。1%・1.2%・0.5%を足して、会社の利益に2.7%を掛ける計算にはなりません。
標準税率より高い超過税率を使う自治体もあります。所在地と事業年度、事業の種類に合う現行の税率表を選び、過去の申告書の率を無条件に使わないようにします。
特別法人事業税は基準所得割額の260%
法人事業税の三つの区分に加え、特別法人事業税も計算します。これは国税ですが、法人事業税と同じ申告書・納付書で都道府県へ申告・納付する税金です。
一般の外形対象法人では、標準税率で求めた基準法人所得割額に260%を掛けます。東京都でも、超過税率1.18%で求めた所得割額へ掛けるのではなく、標準税率1.0%で計算した基準額を使います。
標準税率により算定した基準法人所得割額が課税標準額となります。
出典:東京都主税局「概要」
「所得に260%」ではありません。所得割の基準額を一度求め、その金額に260%を掛ける二段階の計算です。法人事業税と特別法人事業税の計算でも、両者の違いを説明しています。
付加価値割の計算と雇用安定控除

報酬給与と利子と家賃から収益配分額を集計
付加価値割で最初に集めるのは、「報酬給与額」「純支払利子」「純支払賃借料」です。この合計を収益配分額と呼びます。会社から人や資金の貸し手などに配分した金額、と考えると関係を追いやすくなります。
報酬給与額には、役員・従業員の給与や賞与、退職金などが関係します。ただし、会計上の人件費を全部足す計算ではありません。社会保険料の会社負担や引当金など、扱いが異なるものを分けて集計します。
| 項目 | 基本の考え方 | 確認したい資料 |
|---|---|---|
| 報酬給与額 | 税務上対象となる給与等を集計。出向・派遣等は個別の扱い | 給与台帳・元帳・出向等の契約 |
| 純支払利子 | 対象となる支払利子から受取利子を差し引く。受取超過ならゼロ | 借入明細・利息の元帳 |
| 純支払賃借料 | 対象となる土地・家屋の支払賃借料から受取賃借料を差し引く。受取超過ならゼロ | 賃貸借契約・家賃の元帳 |
純支払賃借料は、原則として使用・収益する期間が1か月以上の土地・家屋等が対象です。機械のレンタル料まで一律に入れるわけではなく、共益費などが契約上明確に分かれているかも確認します。
給与・利子・家賃等が棚卸資産や固定資産の取得原価に含まれると、法人税で費用になる年度と集計年度がずれることもあります。勘定科目の合計だけで決めず、該当する取引を自治体の手引と照合しましょう。
単年度損益は繰越欠損金を引く前の金額
収益配分額に加減するのが単年度損益です。これは原則として、過去の赤字である繰越欠損金を差し引く前の、税務上のその年度の利益・損失を基にします。
利益なら足し、損失なら収益配分額から差し引きます。単年度損益がマイナスだから、その数字をゼロにして足す、という扱いではありません。繰越欠損金の控除で所得割の所得が小さくなっても、付加価値額が同じように減るとは限らない点に注意します。
ここまでで求めているのは税率を掛ける前の「付加価値額」です。「付加価値割」は、控除などを確認した後の付加価値額に税率を掛けて求める税額を指します。
給与の割合が70%を超える場合の雇用安定控除
収益配分額に占める報酬給与額が70%を超える場合は、その超過部分を付加価値額から差し引く雇用安定控除があります。人件費の割合が高い会社の負担に配慮する仕組みです。
雇用安定控除額=報酬給与額-収益配分額×70%
報酬給与額が70%相当額を超える場合に、その超過額を控除します。
このため、給与が増えればその全額に付加価値割の税率分だけ負担が増える、と単純にはいえません。別に賃上げに関する時限的な控除もあるため、雇用安定控除と混同せず、適用年度と要件を確かめます。
資本割の計算と資本金等の額の違い

対象判定の払込資本と税額計算の資本金等
付加価値額の次は、資本割に使う金額です。似た言葉が多いものの、対象判定に使う額と、資本割の税額計算に使う額は同じとは限りません。
| 用語 | 主な使い方 |
|---|---|
| 資本金・出資金 | 従来の期末1億円超基準の判定 |
| 払込資本 | 会計上の資本金+資本剰余金。減資対応や100%子法人等の追加判定 |
| 資本金等の額 | 税法上の金額を基に調整し、資本割の課税標準を計算 |
| 資本金+資本準備金 | 資本割の課税標準の下限を確認する比較に使用 |
資本割は、税法上の資本金等の額を出発点に、必要な加算・控除等をして計算します。さらに、その金額が期末の資本金と資本準備金の合計額を下回る場合には、合計額を使う定めがあります。
登記簿にある資本金だけを見て0.5%を掛けると、税額を小さく見積もるおそれがあります。前年の申告書の資本額と、今年の資本取引を並べて確認する方が確実です。
無償増減資や持株会社で必要な調整
欠損を埋める無償減資等を行った場合には、一定の条件で資本金等の額の調整が必要です。一定の要件を満たす持株会社には特定子会社の株式等に関する控除、非常に大きな法人には1000億円超の部分の圧縮措置などもあります。
短い事業年度では月数、外国法人などでは国内事業に対応する額も確認します。これらは全社が使える一律の値引きではありません。自社に該当する取引や法人区分があるときに、公式の計算方法へ進みます。
次の例では、こうした確認を済ませた後の資本割の課税標準を3億円と置きます。対象判定用の払込資本も自動的に同額だとは扱わず、例の条件として別にそろえます。
赤字法人の外形標準課税の計算例と負担軽減

収益配分額と雇用安定控除を計算
自社の数字を当てはめるときは、給与台帳、利子・賃借料の元帳、前期の申告書と資本取引の資料を用意します。以下では、税務上の集計・調整を済ませた金額を使います。
ここまでの言葉を、一つの会社の数字につなげてみましょう。2026年4月1日からの12か月決算で、100%子法人等への対応により初めて対象になる、通常の事業を行う普通法人を想定します。
特定法人の定義と完全支配関係等の要件を満たし、子法人の期末資本金は1億円以下、調整後の払込資本は2億円超とします。事務所は標準税率を使う1県だけにあり、以下の課税標準や控除条件がそろった例です。
| 項目 | 今回置く金額・条件 |
|---|---|
| 報酬給与額 | 1億円 |
| 純支払利子・純支払賃借料 | 300万円・1200万円 |
| 単年度損益 | 2000万円の損失 |
| 所得割の課税所得 | ゼロと仮定。会計上の赤字だけからは判断しない |
| 資本割の調整済み課税標準 | 3億円 |
| その他 | 雇用安定控除以外の控除なし。中間等の先払いなし。非外形とみなして比較する法人事業税額もゼロ |
収益配分額は1億円+300万円+1200万円で、1億1500万円です。その70%は8050万円。報酬給与額1億円との差額1950万円を、雇用安定控除として差し引きます。
付加価値額は、1億1500万円-損失2000万円-控除1950万円=7550万円となります。損失と雇用安定控除は、別々に計算したうえで差し引いています。
赤字でも残る付加価値割と資本割
この例では所得割の課税所得をゼロと置いているため、所得割と特別法人事業税はゼロです。一方、付加価値割と資本割には、次の金額が残ります。
| 区分 | 計算 | 税額 |
|---|---|---|
| 所得割 | 課税所得ゼロ | 0円 |
| 付加価値割 | 7550万円×1.2% | 90万6000円 |
| 資本割 | 3億円×0.5% | 150万円 |
| 合計 | 三つの区分を合算 | 240万6000円 |
「赤字でも税金が残る」というのは、こうした計算基礎の違いによります。ただし、この240万6000円をそのまま今回の納付額とせず、新たに対象となる子法人等の負担軽減も確かめます。
2026年と2027年の軽減は増加した税額が対象
100%子法人等への対応で対象になった所定の法人には、従来の課税方式と比較した税額の増加分を軽減する措置があります。法人事業税の全額を一律に減らす制度ではありません。
2026年4月1日~2027年3月31日に開始する事業年度は、その正の差額の3分の2、翌年の対応する開始事業年度は3分の1が対象です。今回の非外形とみなした比較税額はゼロなので、差額は240万6000円になります。
差額240万6000円×3分の2=160万4000円を差し引くと、軽減後の概算は80万2000円です。翌年度も全条件・数値が同じなら概算160万4000円、その後にこの段階的な軽減がなくなれば240万6000円、という比較になります。
これらは条件を固定した説明用の概算です。実際の申告では各欄の端数処理や個別の調整・特例も確認します。法人税や住民税まで含めた総納税額、将来の確定納付額を示すものではありません。
外形標準課税の申告と決算前の準備

申告期限と中間申告
確定申告・納付は、原則として事業年度終了の日から2か月以内です。申告期限延長や休日による繰延べなどは別に確認し、申告を延ばせても納付条件まで同じとは考えないようにします。
中間申告は、2025年4月1日以後開始事業年度では原則として前期の外形対象状況が重要です。前期が対象で年度が6か月を超える場合等には、法人税の中間申告義務がなくても、事業税等の中間申告が必要になります。当期に初めて対象になったという理由だけでは一律に決まりません。
複数の都道府県に事務所等があれば、業種別の分割基準も使います。一般の非製造業では従業者数と事業所等の数が関係しますが、これは付加価値割を人数で直接計算する、という意味ではありません。
地方税の電子申告にはeLTAXを使います。電子申告義務は、事業年度開始時の資本金の額または出資金の額が1億円を超える場合など、別の要件で判定します。資本割に使う「資本金等の額」と混同せず、外形対象だから全社同じ義務があるとは扱いません。
計算に使う資料と拠点情報
決算前に集めたいのは、前期の申告書、資本関係図、親会社等の払込資本の資料、給与台帳、利息の明細、賃貸借契約、資本取引の資料です。拠点が複数ある会社は、事務所の一覧や従業者数もそろえます。
前年から増減資、配当、買収、出向、拠点の開廃があったなら、変更点を一枚にまとめておくと確認が進みます。何も変わっていないように見えても、適用開始年度が変わることで対象になる場合があります。
納付が難しい場合の徴収猶予にも、所得状況や申請等の条件があります。税金が免除される制度とは違うため、資金不足が見込まれる時点で所管の税事務所へ相談してください。
会計上の表示と損金算入の時期
会計でどの科目に表示するかと、法人税の計算でいつ損金にできるかは別の話です。損金とは、法人税を計算するときに所得から差し引く費用を指します。
事業税等の損金算入は原則として申告書を提出した事業年度で、直前年度分には特例もあります。支払日だけで年度を決めたり、損金になるから全額が戻ると考えたりしないようにします。
納税申告書を提出した事業年度です。
会計上は所得割と付加価値割・資本割を区別します。ASBJの2026年改正基準をまだ適用していない場合、外形の二つの区分は原則として販管費とし、合理的な配分による売上原価表示も認められます。
2026年改正は原則2028年4月1日以後開始年度からで、公表日以後開始年度からの早期適用も可能です。適用後は「法人税等」に含めず、内容に応じた適切な表示区分を使います。全社一律に同じ仕訳を当てず、適用する会計基準と年度を確認します。
税額より先に残すべき資金を整理
税額が大きいと、何かを買って利益を減らしたくなるかもしれません。ただ、所得が減っても付加価値割・資本割が同じ割合で減るとは限りません。支出したお金がすべて税金から戻るわけでもありません。
まず納税と仕入れ、人件費、返済に使う資金を確保します。そのうえで、決算までの期間と利益の見込み、当面使わずに置ける資金を整理し、制度や商品の効果・条件・将来負担を比較する順番が大切です。
外形標準課税のよくある質問

資本金1億円ちょうどなら対象外ですか?
従来の「1億円超」の基準には当たりません。ただし2025年の減資対応、2026年の100%子法人等への対応に該当すれば対象になるため、前期の対象状況、払込資本、支配関係等も確認します。
赤字なら外形標準課税はゼロですか?
所得割がゼロでも、付加価値割・資本割が残る場合があります。会計上の赤字と税務上の所得ゼロも同じではなく、計算する金額をそれぞれ確認します。
資本金と資本金等の額は同じですか?
同じとは限りません。従来の対象判定の資本金、追加基準の払込資本、資本割に使う税法上の資本金等の額は、役割と計算方法を分けて扱います。
外形標準課税は従業員数で決まりますか?
一般の付加価値割は、給与の額などから求める付加価値額を基に計算します。従業者数が関係する都道府県間の分割基準とは別です。床面積を直接使う計算でもありません。
外形標準課税の税率を合計して計算できますか?
所得割、付加価値割、資本割は税率を掛ける金額が違うため、率だけを足して利益に掛けることはできません。特別法人事業税も基準所得割額から別に計算します。
外形標準課税になったら中間申告は必須ですか?
適用年度、前期の対象状況、事業年度の長さなどで判定します。2025年4月1日以後開始年度の原則は前期の外形対象状況が重要で、当期に初めて対象になったという理由だけで一律には決まりません。
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