法人の不動産購入は節税になる?減価償却と資金繰りの考え方
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決算で利益が出そうなので、会社で不動産を買う。そう考えたとき、まず確かめたいのは「いくらの物件なら税金が減るか」よりも、購入代金のどこまでが今年の費用になるかです。
法人が不動産を買っても、代金の全額をその年の費用にはできません。土地は減価償却の対象外です。建物は使い始めてから費用を配分し、その償却費などが税務上の所得を減らす場合に、税負担へ影響します。
ただし、税金が減ることと、会社にお金が残ることは別です。購入時の持ち出し、借入金の返済、修繕、売却まで並べると、購入を見送る判断になることもあります。ここでは既存の法人による購入を中心に、社長個人の購入や法人化との違いも整理します。
この記事でわかること
- 土地・建物・購入時の費用を分ける考え方
- 減価償却と税額と返済後の現金の違い
- 社宅・消費税・売却まで含めた購入前の確認
法人が不動産で節税できる仕組み

購入代金とその年の費用は一致しない
会社が3,200万円の物件を買っても、3,200万円の利益がそのまま消えるわけではありません。現金を、不動産という資産へ置き換える取引だからです。
建物は長く使うため、原則として取得に要した金額を何年かに分けて費用にします。これが減価償却です。土地には同じ償却を行いません。建物付きの物件でも、まず土地と建物の金額を分ける必要があります。
法人税の計算で所得から差し引く費用を「損金」といいます。会計上の費用がすべて同じ年度の損金になるとは限らないため、帳簿と税務の両方を確かめます。
本業と不動産の損益を会社全体で計算する
同じ法人で営む本業と不動産賃貸は、原則として会社全体の所得の計算に入ります。家賃収入から認められる管理費や償却費などを引き、不動産部門に赤字が出れば、本業の黒字を小さくする場合があります。
ここで大切なのは「同じ法人」という点です。社長が個人で持つ物件や、別に設立した資産管理会社の赤字を、本業の会社の利益から自動的に引くことはできません。誰が所有し、誰が収入を得るのかを先に決めます。
費用が増えても同じ額の税金は戻らない
償却費が300万円増えることは、税金が300万円減ることではありません。税額への影響は、損金として認められる額だけでなく、会社全体の所得、税率、使える控除などによって変わります。
会社全体が赤字なら、追加の費用がその年の税負担をすぐ減らすとは限りません。将来の黒字から欠損金を引く制度もありますが、適用条件があり、現金がただちに還付される仕組みとは別です。
根拠:法人税法22条・31条
土地と建物で変わる購入費用の扱い

土地と建物の価格を根拠のある資料で分ける
土地付き建物の総額が同じでも、建物に対応する取得価額が違えば、償却費も変わります。ただし、節税額を大きくするために、建物の金額を都合よく増やしてよいわけではありません。
売買契約の内訳、固定資産税評価額、鑑定や見積りなど、価格を説明できる資料を確認します。消費税でも土地と建物の合理的な区分が必要です。消費税の按分例を、法人税の取得価額へ無条件に当てはめず、取引全体の整合を取ります。
給排水設備など、建物本体と別に扱う資産がある場合は、その種類と金額も確認します。単に短い耐用年数を使いたいという理由で、実態のない細分化はできません。
仲介料や取得税は一括経費と決めつけない
建物の取得価額には、原則として購入代価に加え、購入手数料などの取得費用と、使うために直接要した費用が含まれます。仲介料を払ったから全額がその年の経費になる、と考えると試算がずれます。
一方、不動産取得税や登録免許税など、取得価額に含めないことができる費用もあります。請求書の合計を一つの科目へ入れず、何のための支払いかで整理しましょう。
また、不動産取得税を費用として扱うことと、税そのものが軽減されることは別です。法人名義というだけで自動的に軽減されるわけではなく、新築か中古か、面積や用途などの要件を、所在地の自治体の案内で確認します。
決算前の支払いだけでは償却を始められない
契約や代金の支払いを決算前に済ませても、それだけでは償却の開始を決められません。事業に使い始めたかという「供用」の事実を確認します。賃貸物件では、完成後に入居者を募集し始めた状況なども判断材料になります。
年度の途中で供用すれば、通常はその年度の月数に応じた計算になります。現在新たに取得する通常の建物や建物附属設備は、取得価額に決められた償却率を掛ける定額法が基本です。法人税では、帳簿に償却費として計上した額(損金経理)と、税法上の上限(償却限度額)の関係も確認します。好きな年度に自由に全額を費用化できる制度ではありません。
中古物件の減価償却と手元資金の試算

木造住宅22年とRC住宅47年は用途付きの年数
建物の耐用年数は、構造だけでなく用途で変わります。例えば住宅用の木造建物は22年、鉄筋コンクリート造(RC造)の住宅は47年です。事務所用の年数とは区別します。
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| 構造と用途 | 法定耐用年数 | 確認する点 |
|---|---|---|
| 木造の住宅 | 22年 | 事務所用などとは異なる |
| RC造の住宅 | 47年 | 構造だけでなく用途も確認 |
鉄骨造も「軽量鉄骨」という呼び名だけでは決まりません。骨格材の厚みなどを確認します。税務上の耐用年数は、建物の物理的な寿命や融資の返済期間を保証する数字でもありません。
築古なら必ず4年になるわけではない
中古資産では、供用後の使用可能期間を見積もる方法があります。その見積りが難しい場合などに使えるのが簡便法です。法定耐用年数を全部経過した場合と、一部だけ経過した場合とで計算が異なります。
その法定耐用年数の20パーセントに相当する年数
全部を経過した木造住宅で簡便法の条件を満たせば、22年×20%=4.4年から、1年未満を切り捨てて4年です。一部経過なら「残る法定年数+経過年数の20%」で計算し、算定年数が2年未満なら2年とします。
ただし、使い始める前に機能や価値を高める改修などを行うときは注意が必要です。この資本的支出が中古資産の取得価額の50%を超えると、簡便法は使えません。同じ新品を取得する場合の金額である「再取得価額」の50%を超える場合には、法定耐用年数による扱いです。二つの50%を混ぜず、購入前の改修も含めて確認します。耐用年数の算定は、供用した事業年度に行う必要があります。
年300万円の償却でも税額差は条件で変わる
一つの仮例で、購入しない場合と比べてみます。土地2,000万円、建物1,200万円の中古木造住宅を取得し、会社が住宅として貸すケースです。建物は簡便法4年を適用でき、年度の初日から通年供用し、必要な損金経理をしているものとします。
金額は説明用の税抜額です。仲介料などの取得費用、不動産取得税、購入時の消費税は表から除いています。建物の年間償却費は1,200万円×定額法の償却率0.250=300万円です。
表は横にスクロールできます
| 年間の項目 | 購入しない場合 | 購入する場合 |
|---|---|---|
| 本業の所得 | 1,000 | 1,000 |
| 家賃収入 | 0 | 360 |
| 管理・修繕等の現金費用 | 0 | △90 |
| 借入利息 | 0 | △30 |
| 建物の減価償却費 | 0 | △300 |
| 会社全体の所得 | 1,000 | 940 |
| 説明用の一定率30%による仮税額 | 300 | 282 |
不動産部門は360−90−30−300=60万円の赤字です。この例で購入しない場合と比べた税額差は、300−282=18万円です。償却費300万円が、そのまま戻るわけではありません。家賃などの利益も同時に会社へ入るからです。
30%は法人税・地方税等をまとめて比較するための仮の一定率で、実際の税率ではありません。税率の区分、防衛特別法人税、各種控除や欠損金などを個別に反映した正式な納税額は、別途計算します。
借入元金の返済を入れると残るお金が見える
同じ物件を、借入金2,400万円と自己資金800万円で買ったとします。年間の元金返済が120万円なら、運用中に残る現金は次のようになります。利息30万円と元金120万円は別の支払いです。
表は横にスクロールできます
| 項目 | 金額 | 読み方 |
|---|---|---|
| 家賃収入 | 360 | 会社に入る現金 |
| 管理・修繕等と利息 | △120 | 90+30を支払う |
| 借入元金の返済 | △120 | 現金は減るが費用ではない |
| 運用による税前現金 | 120 | 360−120−120 |
| 会社全体の仮税額差 | +18 | 前の表との比較 |
| 比較上の年間現金増分 | 138 | 初期支出と売却は含まない |
年138万円という数字には、購入時の自己資金800万円や、表から除いた諸費用・消費税が入っていません。物件価格の変動や売却時の税負担も別です。これを投資の利益や、将来も続く節税額として受け取らないようにしましょう。
空室や修繕の増加で家賃から残るお金が減っても、借入元金の返済は続きます。税額だけでなく、月ごとの返済後残高に、本業の資金を圧迫する月がないかを確認します。
保有中の修繕と消費税にも注意する理由

修繕費と資本的支出では費用になる時期が違う
購入後の工事代も、一律にその年の費用とは限りません。通常の維持管理や元の状態へ戻す修理は修繕費、使える期間を延ばしたり価値を増したりする部分は資本的支出として、原則、償却していく扱いです。
増築など、新しい資産の取得に当たるものもあります。「リフォーム代」という請求書の名前だけでは判定できないため、工事内容、交換前後の機能、見積りの内訳を確認します。
工事の判断基準は、修繕費と資本的支出の違いで詳しく整理しています。物件価格だけで償却額を見積もらず、入居前や保有中の工事も資金計画へ入れましょう。
住宅家賃の非課税と建物購入の消費税は別
通常の住宅家賃は、原則として消費税が非課税です。一方、建物の購入や売却は別の取引として判断します。家賃に消費税がかからないから、購入した建物にもかからない、とはいえません。土地の譲渡は非課税です。
店舗や事務所の賃料は、住宅家賃と同じ扱いではありません。貸付期間が1か月未満の場合や、ホテル・民泊なども住宅貸付けの非課税から外れます。住宅と店舗が混在すれば、用途ごとの区分が必要です。
自社で使う建物には、そもそも賃貸の家賃収入がありません。前の家賃の試算や住宅家賃非課税の前提を、そのまま自社ビルへ当てはめないようにします。取得時の消費税は、会社の課税方式と事業用途などで別に確認します。
高額な居住用賃貸建物には控除制限がある
消費税の課税事業者でも、賃貸住宅を買えば購入時の消費税が全額戻るわけではありません。事業で支払った消費税を納付額の計算で差し引く仕組みを、仕入税額控除といいます。一定の高額な居住用賃貸建物には、この控除の制限があります。
対象には、原則として一つの取引単位で税抜1,000万円以上の高額特定資産に当たる建物などが含まれます。住宅に貸さないことが明らかな部分や、その後に課税賃貸・譲渡をした場合の調整は、別の条件で判断します。
前の仮例の建物1,200万円も、この制限の確認が必要になるケースです。「3,200万円あれば購入できる」と表の税抜合計だけで資金を決めず、実際に支払う消費税、控除できる額、控除対象外となった額の処理まで確かめます。
社宅と法人化を選ぶときの条件

役員社宅は家賃の50%負担と一律に決めない
役員の住宅として会社が貸す場合には、「賃貸料相当額」を受け取っているかを確認します。役員からの家賃が不足すれば、その差額が給与として課税される問題が生じます。
計算は住宅の区分で異なります。小規模住宅の目安は、法定耐用年数30年以下の建物では132㎡以下、30年超では99㎡以下です。区分所有建物は共用部分の按分も含め、固定資産税の課税標準額などを使って計算します。
小規模でない借上げ社宅では、会社が家主に払う家賃の50%と、自社所有の場合の算式で出した額のうち、多い方を用います。豪華社宅は通常の使用料で判断します。「半分を払えばよい」「会社の家賃の9割が必ず経費」という一律の割合ではありません。
また、自社で買った社宅の建物代が、その年に全額経費になるわけではありません。役員本人が契約した家賃を会社が負担する場合や住宅手当も、社宅の貸与とは区別します。
社長個人と法人の税金を合わせて比較する
既存の会社で買うことと、個人の不動産投資のために新会社を作ることは別の判断です。個人の課税所得が900万円を超えたら、必ず法人化が有利になるという境界はありません。
会社から社長へ報酬を払えば、会社の所得だけでなく、本人の所得税や社会保険、会社の維持費なども変わります。役員給与には損金算入の要件があります。個人と会社の税率の上限だけを並べて、家計まで含む得失を決めないようにしましょう。
法人が物件を持つ方法のほか、個人所有のまま会社が管理する方法や、借り上げて転貸する方法もあります。ただし、会社が実際に行う仕事と対価を説明する必要があり、管理料7%などの一律の「安全な割合」はありません。
法人の不動産と相続する株式は別の財産
会社が所有する不動産は、株主個人の所有物ではありません。株主に相続が起きたときは、その人が持つ会社の株式などを評価します。非上場株式の評価は、会社の規模、株主の立場、資産の構成などで変わります。
そのため「法人で物件を買えば相続評価が一律40%下がる」とは計算できません。2024年からの居住用区分所有財産の相続・贈与時の評価見直しや、小規模宅地等の特例を、法人の不動産購入による法人税の効果へそのまま足すこともできません。
会社の税負担を考える相談と、株主の相続を考える相談では、必要な資料も変わります。目的が相続なら、物件の価格だけでなく、株主構成や株価の評価方法まで確認します。
売却まで含めた購入前の確認

値下がりしても売却益が出る場合がある
減価償却で建物の税務上の帳簿価額が下がると、将来の売却益の計算にも影響します。買った値段より安く売れたとしても、税務上の利益が出る場合があるのです。
前の物件を4事業年度にわたり通年償却した後、3,000万円で売り、譲渡費用が100万円かかったとします。土地の簿価は2,000万円、建物の簿価は概算でほぼゼロなら、売却益は次のとおりです。
売却益の概算:3,000万円−2,000万円−100万円=900万円
建物の最終的な備忘価額1円などの端数は省いた概算です。会計と税務の簿価が違う場合には調整も必要です。
取得価格3,200万円より200万円値下がりしていても、900万円の税務上の利益が生じる計算です。法人では原則として他の所得と合わせて計算し、個人の不動産売却にある保有期間による分離課税の税率を使うわけではありません。
売却代金から借入残高を引いて資金を確かめる
売却益900万円と、売った後に残る現金も一致しません。借入元金を年120万円ずつ4回返済していれば、残高は2,400万円−480万円=1,920万円です。
売却時の税前手残り:3,000万円−100万円−1,920万円=980万円
売却に伴う法人税等と消費税は、ここから別に確認します。980万円は税引後の残高ではありません。
この980万円だけで投資の損得も決まりません。購入時の自己資金や諸費用と、4年間の家賃・修繕・返済などを合わせ、全期間で比べます。売却益と退職金や買い替えを同じ年度に置けば、自動的に相殺できるとも限りません。それぞれに損金算入の条件と時期があります。
決算までに揃える資料と購入を急がない基準
契約前には、次の材料を一緒に確認すると、税額だけの判断を避けられます。これは全案件に一律で必要な法定書類の一覧ではなく、購入判断のための資料です。
- 土地・建物・設備の価格内訳と、その根拠
- 構造・用途・築年数と、募集や供用の予定
- 工事の見積り・修繕履歴・家賃と空室の見込み
- 融資条件・元金と利息を分けた返済予定表
- 会社の利益見込み・青色申告の状況・売却時の見込み
会社全体に欠損金が生じた場合、青色申告をした事業年度の欠損金は、連続した申告や帳簿保存などの条件を満たすことで繰越控除の対象となります。現行の10年という期間も、赤字なら必ず現金が戻るという意味ではありません。
決算までの残り日数だけで購入を急ぐと、募集、修繕、資金調達の検討が後回しになります。空室が続いても返せるか、修繕が重なっても本業の支払いを守れるか。節税の前に、会社が保有を続けられる条件を確かめましょう。
不動産の購入では、償却費だけでなく、会社全体の税額と返済後の現金を確かめる必要があります。物件の価格内訳、利益の見込み、返済予定表があれば、購入を進める場合と、別の節税策を選ぶ場合を比べやすくなります。
よくある質問

土地だけ買っても節税になりますか?
土地の購入代金を減価償却して、毎年の損金にすることはできません。取得時の付随費用の扱いや、将来売却したときの損益は別に確認します。土地を買った金額だけ、その年の税金が減るわけではありません。
木造とRCのどちらが節税に有利ですか?
構造や償却年数だけでは決まりません。建物の価格、使い始める時期、修繕費、空室、借入返済、売却時の価格まで含めて比べます。償却費を早く計上できる物件が、会社に多くの現金を残すとは限りません。
個人名義の物件を法人へ移せますか?
売買などの取引として検討できますが、単なる名義の書き換えではありません。個人側の譲渡課税、法人側の取得税や登記費用、借入契約などの確認が必要です。個人から法人への著しい低額売却では、個人の譲渡所得を時価で計算する場合もあります。
赤字の会社でも購入を急ぐべきですか?
節税だけを理由に急ぐ必要はありません。追加の費用が当期の税額をすぐ減らすとは限らず、欠損金の繰越にも条件があります。購入費や返済が本業の支払いを圧迫しないかを先に確かめ、将来の黒字を前提に効果を保証しない計画が必要です。
