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即時償却の事例|設備類型別モデルケースで減る税額を試算

設備類型別の即時償却モデルケースと減る税額をまとめた図

即時償却で節税できると聞いて設備投資を検討しているが、いくら減るのかが分からない。金額の載った事例を探しても、前提が書かれていないので自社に当てはめられない。税額控除とどちらを選ぶべきかも判断できないまま、決算期だけが近づいてくる。

即時償却で減る税額は、取得価額に自社の税率を掛ければ概算できます。所得800万円超の帯なら、国税ベースで取得価額の約25.6%です。ただし翌期以降の償却費が消えるため通算では戻ります。税額控除は金額こそ小さいものの取り切りで、調整前法人税額の20%が上限になります。

この記事でわかること

  • 設備類型ごとの最低取得価額(機械160万円・器具備品30万円ほか)
  • 機械装置1,600万円のモデルケースで減る国税
  • 器具備品とソフトウェア合計500万円のモデルケースで減る国税
  • 設備2,200万円を入れた場合のモデルケースで減る国税
  • 同じ設備で即時償却と税額控除のどちらが有利か
  • 税額控除が上限20%で頭打ちになる場面

自社の設備でいくら減るか確認しませんか

取得予定の設備と決算期が分かれば、即時償却と税額控除のどちらが有利かを試算できます。

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目次

事例を読むときの前提|最低取得価額と期限

即時償却の対象となる設備類型と最低取得価額を示した図

即時償却の事例は、対象設備の条件を満たしていることが前提になっています。まずここを確認しないと、金額だけ見ても意味がありません。

設備の種類ごとに最低取得価額がある

中小企業経営強化税制の対象になるのは、機械装置160万円以上、工具・器具備品30万円以上、建物附属設備60万円以上、ソフトウェア70万円以上の設備です。

1台または1基あたりの取得価額で判定します。同じ種類の設備を複数買って合算する、という考え方はできません。

この金額に届かない設備は、少額減価償却資産の特例など別の枠で処理することになります。

認定を受けた中小企業者であることが条件

対象は青色申告書を提出し、中小企業等経営強化法の認定を受けた中小企業者等です。

資本金1億円以下、または従業員1,000人以下の法人が中小企業者に当たります。税額控除率は資本金3,000万円以下なら10%、それを超えると7%です。

指定事業に該当する必要もあります。製造業や建設業など広い範囲が対象ですが、娯楽業(映画業を除く)と性風俗関連特殊営業は除かれます。

適用期限は令和9年3月31日

取得と事業供用を、令和9年3月31日までに終える必要があります。

ここでいう取得は契約日ではなく引き渡しの日です。据付や試運転が必要な設備は、事業供用まで含めて逆算します。

事例に出てくる会社は、この期限と社内のリードタイムを織り込んで動いています。決算間際に思いついて再現できるものではありません。

設備の種類 最低取得価額
機械装置 160万円以上
工具・器具・備品 30万円以上
建物附属設備 60万円以上
ソフトウェア 70万円以上

事例に出てくる会社は、この期限と社内のリードタイムを織り込んで動いています。決算間際に思いついて再現できるものではありません。

出典: 国税庁 タックスアンサー No.5434

この記事の試算の前提

法人税(年800万円以下15%/超える部分23.2%)と地方法人税(法人税額の10.3%)だけで計算しています。法人住民税と事業税は自治体や規模で異なるため含めていません。資本金3,000万円以下で青色申告、中小企業等経営強化法の認定を受けた中小企業者を前提にしています。

事例1|製造業が機械装置1,600万円を入れる

所得3,000万円の製造業が機械装置1,600万円を即時償却した場合の税額比較を示した図

従業員25名、資本金2,000万円、所得3,000万円の製造業。老朽化したNC旋盤を1,600万円で更新するという前提です。

所得3,000万円が1,400万円に下がる

取得価額の全額を損金にすることで、国税ベースで約409.4万円減ります

対策前は法人税630.4万円と地方法人税64.9万円で合計695.3万円。対策後は法人税259.2万円と地方法人税26.7万円で合計285.9万円です。

1,600万円のうち削られたのはすべて23.2%の帯なので、国税ベースで約25.6%がそのまま効いています。

税額控除を選ぶと最大160万円

同じ設備で税額控除を選ぶと、取得価額の10%にあたる160万円が控除額になります。

ただし調整前法人税額の20%が上限です。この会社なら630.4万円の20%で126.1万円までとなり、残る33.9万円は翌期に繰り越します。

金額だけを見れば即時償却が大きく見えますが、性質がまったく違います。

繰り延べか取り切りかで選ぶ

即時償却は繰り延べ、税額控除は税額そのものが減る取り切りです。

即時償却を選ぶと翌期以降の償却費がなくなるため、数年で均せば税額の合計はほぼ変わりません。効果は資金繰りの前倒しです。

税額控除は通常の減価償却を続けながら税額を直接減らせます。長い目で見れば、こちらのほうが総額では有利になる場面が多くなります。

項目 対策前 即時償却1,600万円
所得金額 3,000万円 1,400万円
法人税 630.4万円 259.2万円
地方法人税 64.9万円 26.7万円
国税合計 695.3万円 285.9万円
差額 約409.4万円の減少

事例2|物流業が器具備品とソフトウェアを入れる

所得1,200万円の物流業が器具備品とソフトウェア合計500万円を即時償却した場合の税額比較を示した図

従業員12名、資本金1,000万円、所得1,200万円の物流業。倉庫のハンディ端末200万円と配車管理ソフトウェア300万円を導入するという前提です。

所得1,200万円が700万円に下がる

合計500万円を損金にすることで、国税ベースで約118.9万円減ります

対策前は法人税212.8万円と地方法人税21.9万円で合計234.7万円。対策後は法人税105.0万円と地方法人税10.8万円で合計115.8万円です。

所得800万円をまたぐため、削られる500万円のうち400万円は23.2%の帯、100万円は15%の帯にかかります。

小さい会社ほど税額控除の上限に当たりやすい

税額控除を選ぶと50万円になりますが、上限は調整前法人税額の20%で42.6万円です。

残る7.4万円は翌期に繰り越します。所得が小さい会社ほど、この20%の上限が実際の制約になります。

税額控除を最大限使いたいなら、法人税額がある程度の水準にあることが前提です。

ソフトウェアは70万円以上でないと対象外

この事例が成立するのは、ソフトウェアが70万円以上、器具備品が30万円以上だからです。

ハンディ端末は1台あたりの単価が30万円に届かないことが多く、その場合は少額減価償却資産の特例など別の枠で処理します。

事例の金額をそのまま真似する前に、1台または1基あたりの取得価額で条件を満たしているかを確認してください。

項目 対策前 即時償却500万円
所得金額 1,200万円 700万円
法人税 212.8万円 105.0万円
地方法人税 21.9万円 10.8万円
国税合計 234.7万円 115.8万円
差額 約118.9万円の減少
見落としやすい点

取得価額は1台または1基あたりで判定します。同じ種類の設備を複数買って合算し、最低取得価額を満たすことはできません。

事例3|設備2,200万円をまとめて入れる

所得5,000万円の会社が設備2,200万円を即時償却した場合の税額比較を示した図

従業員40名、資本金3,000万円、所得5,000万円の会社。工場の空調と電気設備の更新に建物附属設備600万円、生産ラインに機械装置1,600万円を投じるという前提です。

所得5,000万円が2,800万円に下がる

合計2,200万円を損金にすることで、国税ベースで約563.0万円減ります

対策前は法人税1,094.4万円と地方法人税112.7万円で合計1,207.1万円。対策後は法人税584.0万円と地方法人税60.2万円で合計644.2万円です。

削られた2,200万円がすべて23.2%の帯にあるため、国税ベースで約25.6%が丸ごと効いています。

建物附属設備は60万円以上で対象になる

空調や電気設備といった建物附属設備も、1基あたり60万円以上なら対象です。

建物本体とは扱いが違います。建物そのものは、生産等設備として規模拡大に著しく資する場合に限られ、償却率も別に定められています。

工場の環境整備は後回しにされがちですが、この枠を使えば更新のタイミングを前倒しできます。

税額控除は220万円だが上限に当たる

税額控除なら取得価額の10%で220万円です。

この会社の調整前法人税額は1,094.4万円なので、20%の上限は218.9万円。ほぼ満額を使えますが、わずかに超える分は翌期に繰り越します。

所得が大きい会社ほど20%の上限に余裕があり、税額控除を選びやすくなります。

項目 対策前 即時償却2,200万円
所得金額 5,000万円 2,800万円
法人税 1,094.4万円 584.0万円
地方法人税 112.7万円 60.2万円
国税合計 1,207.1万円 644.2万円
差額 約563.0万円の減少

自社の場合はどうなるか確認しませんか

決算期と利益の見込みが分かれば、使える制度と実行時期を具体的に整理できます。

自社のケースを相談する

同じ設備でどちらを選ぶか|3事例の比較

3つの事例で即時償却と税額控除の効果を比較した図

3つの事例を横に並べると、選び方の基準が見えてきます。

初年度の金額だけなら即時償却が大きい

どの事例でも、初年度に減る税額は即時償却のほうが大きくなります

取得価額の約25.6%が一度に効くのに対し、税額控除は10%で上限もあります。目先の納税を抑えたいなら即時償却です。

ただしこれは翌期以降の償却費を先食いした結果です。数年後には差が消えます。

通算で見ると税額控除が残る

税額控除は通常の減価償却を続けながら税額そのものを減らす仕組みです。

設備の償却費は耐用年数にわたって損金になり、それとは別に税額が10%分減ります。通算の税負担では税額控除のほうが軽くなります。

翌期以降も安定して利益が出る見込みがあるなら、税額控除を選ぶ判断に合理性があります。

資金繰りが厳しいなら即時償却

手元資金に余裕がない年は、今期の納税を抑えられる即時償却が現実的です。

設備投資で現金が出た年に納税も重なると、資金繰りが一気に苦しくなります。今期を乗り切ることを優先するなら即時償却です。

どちらが正解ということはなく、その年の資金状況と翌期以降の利益見通しで決まります。

事例 取得価額 即時償却で減る国税 税額控除額(上限適用後)
事例1 製造業 1,600万円 約409.4万円 126.1万円(残33.9万円繰越)
事例2 物流業 500万円 約118.9万円 42.6万円(残7.4万円繰越)
事例3 設備更新 2,200万円 約563.0万円 218.9万円(残1.1万円繰越)

どちらが正解ということはなく、その年の資金状況と翌期以降の利益見通しで決まります。

出典: 国税庁 タックスアンサー No.5434

税額控除が上限で頭打ちになる場面

調整前法人税額の20%という税額控除の上限を示した図

事例の金額をそのまま期待すると外れるのが、この20%の上限です。

控除できるのは調整前法人税額の20%まで

取得価額の10%を計算しても、調整前法人税額の20%を超える部分は使えません

所得が小さい会社ほど、この制約が強く効きます。事例2では50万円のうち42.6万円しか当期に使えませんでした。

控除しきれなかった額は1年間繰り越せますが、翌期も利益が出ていなければ結局使い切れません。

複数の税制を併用すると枠を取り合う

賃上げ促進税制など他の税額控除と枠を分け合うことになります。

それぞれに上限がある一方、法人税額そのものが有限です。複数を同時に使うと、どこかで頭打ちになります。

どの制度を優先するかは、繰越の可否や翌期の見通しを見て決めることになります。

赤字なら税額控除は使えない

法人税額がゼロなら、控除する対象がないため効果もゼロです。

赤字の年に設備を入れる場合、税額控除ではなく即時償却を選んでも当期の効果はありません。欠損金として繰り越すことになります。

設備投資の時期を選べるなら、利益が出ている年に合わせるほうが制度を生かせます。

判断のポイント

税額控除を軸に考えるなら、調整前法人税額の20%が取得価額の10%を上回っているかを先に確認してください。下回るなら控除は使い切れません。

事例が成立しなかったケース

即時償却を使えなかった典型的な失敗パターンを示した図

同じ設備を買っても、手続きや時期を外すと制度が使えません。

事業供用が期末に間に合わなかった

納品されていても、事業の用に供していなければ当期の適用は受けられません

据付や試運転が終わり、実際に稼働を始めた日が事業供用日です。決算日の翌日に稼働開始では翌期扱いになります。

工事を伴う設備は、施工業者のスケジュールを先に押さえておく必要があります。

証明書や認定が取れなかった

工業会証明書や経営力向上計画の認定は、取得前に段取りしておく必要があります。

メーカーへの証明書依頼から発行まで、また計画の申請から認定までにはそれぞれ日数がかかります。並行して進めても数か月見ておくのが安全です。

取得後に申請できる例外的な取扱いもありますが、期限が短く余裕がありません。原則どおり先に進めるべきです。

そもそも指定事業に当たらなかった

対象は指定事業に限られ、娯楽業(映画業を除く)と性風俗関連特殊営業は除外されます。

業種によっては、同じ設備でも制度を使えません。事業内容の実態で判定されるため、定款の記載だけで判断しないでください。

複数の事業を営んでいる場合、その設備をどの事業で使うかによって結論が変わることがあります。

実務での線引き

決算3か月前を切ってから経営強化税制を目指すのは現実的ではありません。間に合わない可能性が高いなら、少額減価償却資産の特例など別の枠に切り替えるほうが確実です。

逆算スケジュール|決算日から並べ直す

即時償却を使うための決算日からの逆算スケジュールを示した図

事例に載っている会社は、この順番で動いています。

6か月前|設備の選定と証明書の依頼

この時期に対象設備の候補を絞り、メーカーへ証明書を依頼します。

最低取得価額を満たすか、指定事業で使う設備かをここで確認します。候補が複数あるなら、証明書の取りやすさも判断材料になります。

同時に経営力向上計画の骨子を作り始めます。

3か月前|計画の認定と発注

認定が下りる見込みが立った段階で、発注と納期の確定に進みます。

据付工事が必要な設備は、この時点で工事日程まで押さえます。決算日の直前に工事が集中すると、遅延したときに逃げ場がありません。

利益の着地見込みもこの時期に固め、即時償却と税額控除のどちらを選ぶかを決めます。

1か月前|納品と事業供用

遅くともこの時期には、納品を受けて稼働を始めている状態を目指します。

事業供用の事実は、稼働記録や写真、作業日報などで説明できるようにしておきます。後から証拠を作ることはできません。

申告では別表と適用額明細書の添付が必要です。決算作業と並行して準備します。

16か月前:設備選定と証明書依頼
24か月前:経営力向上計画の申請
33か月前:認定と発注
41か月前:納品と事業供用
5申告:別表と明細書の添付

疑問点をそのままお持ちください

適用できるかどうかの判定だけでもご利用いただけます。費用はかかりません。

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即時償却の事例に関するよくある質問

即時償却の事例と税額控除との比較に関するよくある質問をまとめた図

実務へ落とし込むときに、相談として多く寄せられる論点をまとめます。

即時償却でいくら減るか概算する方法はありますか?

取得価額に約25.6%を掛けると概算できます。

取得価額に自社の税率を掛けるだけで概算できます。所得800万円を超える帯なら、法人税と地方法人税を合わせて取得価額の約25.6%です。住民税と事業税を含めればさらに大きくなります。

即時償却と税額控除はどちらが得ですか?

初年度なら即時償却、通算なら税額控除です。

初年度の金額なら即時償却、通算の税負担なら税額控除です。即時償却は翌期以降の償却費を先食いする繰り延べで、税額控除は通常の償却を続けながら税額そのものを減らす取り切りだからです。資金繰りが厳しい年は即時償却を選ぶ判断になります。

ハンディ端末やパソコンも対象になりますか?

1台あたり30万円以上が条件です。

工具・器具・備品として1台あたり30万円以上であれば対象になり得ます。30万円未満なら少額減価償却資産の特例で、40万円未満の資産を合計300万円まで即時償却できます。単価で判定するため、複数台を合算することはできません。

税額控除を使い切れないことはありますか?

上限は調整前法人税額の20%です。

あります。控除額は調整前法人税額の20%が上限で、超える分は1年間しか繰り越せません。所得が小さい会社ほどこの上限に当たりやすく、取得価額の10%を計算した金額をそのまま使えるとは限りません。

決算3か月前からでも間に合いますか?

3か月前からでは間に合わないことが多いです。

経営強化税制は厳しいと考えてください。工業会証明書の発行と経営力向上計画の認定にそれぞれ日数がかかり、そのうえ納品と事業供用まで終える必要があります。間に合わない見込みなら、少額減価償却資産の特例など別の枠に切り替えるほうが確実です。

赤字の年に設備を入れたらどうなりますか?

赤字なら当期の効果はありません

所得がなければ即時償却をしても当期に減る税額はありません。損金が増えた分は欠損金として繰り越すことになります。税額控除も法人税額がなければ効果がありません。投資時期を選べるなら、利益が出ている年に合わせるほうが制度を生かせます。


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