即時償却 対象設備|4類型の一覧と金額基準を解説【2026年】

「これから買う予定のこの設備、即時償却の対象になるのか」。見積書を前にして最初に確認したいのはこの一点です。ところが解説を読んでも類型の話と金額の話が混ざっていて、自社の設備がどこに当てはまるのかが分かりにくいまま、発注時期だけが迫ってきます。
対象になるのは、中小企業経営強化法の認定を受けた経営力向上計画に記載された設備のうち、種類ごとの取得価額の基準を満たすものです。機械装置は160万円以上、工具・器具備品は30万円以上(令和8年度改正で40万円以上)、建物附属設備は60万円以上、ソフトウェアは70万円以上が基準で、そのうえでA・B・D・Eいずれかの類型の要件を満たす必要があります。
この記事でわかること
- 即時償却 対象設備の全体像
- 設備の種類ごとの取得価額の基準
- A類型(生産性向上設備)の対象と証明書
- B類型(収益力強化設備)の対象と投資利益率
- D類型・E類型の対象と使いどころ
即時償却 対象設備の全体像

対象かどうかは「金額基準」と「類型の要件」の2段階で決まります。どちらか一方だけでは適用できません。
| 判定の段階 | 確認すること | 確認先 |
|---|---|---|
| 1. 制度の対象法人か | 青色申告の中小企業者等に当たるか | 資本金・従業員数 |
| 2. 金額基準を満たすか | 設備の種類ごとの取得価額の下限 | 見積書・資産計上単位 |
| 3. 類型の要件を満たすか | 生産性向上・投資利益率などの要件 | 工業会・経済産業局 |
| 4. 計画に記載されているか | 経営力向上計画への記載と認定 | 主務大臣 |
設備単体では対象にならない
制度の対象になるのは経営力向上計画に記載され認定を受けた設備であり、 計画の認定を受けずに取得した設備は金額基準を満たしても適用できません 。「対象設備の一覧に載っているから大丈夫」という理解は誤りです。
逆に言えば、計画に記載する設備を選ぶ段階で、どの設備を対象にするかを決めておく必要があります。後から追加するには計画の変更認定が必要になります。
生産等設備を構成するものに限られる
対象は事業の用に供する生産等設備を構成する資産であり、 本社事務所のみで使用する設備や福利厚生施設は対象外とされています 。同じ器具備品でも、どこで何に使うかで判定が変わります。
自社の事業のどの工程で使う設備なのかを説明できる状態にしておくと、計画の記載も申告時の説明もスムーズになります。
中古資産と貸付用資産は対象にならない
新品であることが要件とされているため、 中古で取得した設備はこの制度の対象になりません 。また、主要な事業として行われるものを除き、貸付けの用に供する資産も対象外です。
中古資産で節税を検討する場合は、耐用年数の短縮による減価償却の前倒しなど、別の枠組みで考えることになります。
設備の種類ごとの取得価額の基準

金額基準は設備の種類ごとに異なります。1件あたりの取得価額で判定します。
| 設備の種類 | 取得価額の下限 | 販売開始時期の目安(A類型) |
|---|---|---|
| 機械装置 | 160万円以上 | 10年以内 |
| 測定工具・検査工具 | 30万円以上(改正後40万円以上) | 5年以内 |
| 器具備品 | 30万円以上(改正後40万円以上) | 6年以内 |
| 建物附属設備 | 60万円以上 | 14年以内 |
| ソフトウェア | 70万円以上 | 5年以内 |
令和8年度改正で工具・器具備品が40万円以上になる
少額減価償却資産の特例が40万円未満へ拡充されることに合わせ、 工具および器具備品の取得価額要件が30万円以上から40万円以上へ引き上げられます 。40万円を境に、少額減価償却資産の特例と経営強化税制が切り替わる形になります。
30万円台の器具備品は、改正後はこの制度ではなく少額減価償却資産の特例で処理することになります。手続きの負担は大きく変わります。
判定は資産として計上する単位で行う
見積書の合計金額ではなく、 資産として計上する1件ごとの取得価額で基準を満たすかを判定します 。据付費や運搬費などの付随費用を取得価額に含めるかどうかで、基準線をまたぐこともあります。
複数台をまとめて購入する場合、1台ごとの金額で判定するのが原則です。まとめれば基準を超えるという考え方は通用しません。
A類型は販売開始時期の要件が加わる
A類型では金額基準に加えて、 一定期間内に販売が開始されたモデルであることが要件になります 。機械装置なら10年以内、ソフトウェアなら5年以内が目安です。
古いモデルの在庫品を安く購入した場合、金額基準を満たしていても販売開始時期の要件で外れることがあります。工業会証明書が取得できるかで確認してください。
古いモデルの在庫品を安く購入した場合、金額基準を満たしていても販売開始時期の要件で外れることがあります。工業会証明書が取得できるかで確認してください。
出典: 中小企業庁|中小企業経営強化税制
A類型(生産性向上設備)の対象と証明書

最も件数が多く、手続きも比較的シンプルなのがA類型です。
旧モデル比で生産性が年平均1%以上向上する設備が対象
単位時間当たりの生産量、歩留まり率、投入コストの削減率などで測り、 旧モデルと比べて生産性が年平均1%以上向上することが要件です 。この判定は事業者ではなく、設備を製造した工業会等が行います。
自社で計算する必要はありません。設備メーカーに証明書の発行を依頼し、工業会等が要件を満たしていることを確認して証明書を発行します。
証明書は設備メーカー経由で取得する
事業者から工業会へ直接申請するのではなく、 設備メーカーに依頼して工業会等から証明書を発行してもらう流れになります 。発行までの期間はメーカーや工業会によって差があります。
商談の初期段階で「この設備で経営強化税制のA類型の証明書は取れますか」と確認しておくと、後の手戻りを防げます。実績のあるメーカーであれば手続きは早く進みます。
証明書は設備の取得前に申請する
工業会等による証明書は、 設備を取得する前に申請しなければなりません 。取得後に依頼しても、原則として制度の適用は受けられません。
証明書を取得したうえで経営力向上計画に記載し、主務大臣の認定を受けてから設備を取得するのが正しい順序です。
B類型(収益力強化設備)の対象と投資利益率

工業会証明書が取れない設備でも、投資計画で要件を満たせばB類型で適用できます。
投資利益率が年平均7%以上となる投資計画が要件
設備そのものの性能ではなく、 その投資によって年平均7%以上の投資利益率が見込まれることが要件になります 。設備単体ではなく、投資計画全体で判定する点がA類型と大きく違います。
営業利益と減価償却費の増加額を投資額で割って計算します。計画段階での見込みで判定するため、根拠となる数値の裏づけが求められます。
税理士または公認会計士の事前確認が必要になる
事業者が投資計画を作成し、 その内容について税理士または公認会計士の事前確認書を取得する必要があります 。そのうえで本社所在地を管轄する経済産業局へ申請します。
確認申請書の説明はオンラインでも可能とする運用になっており、提出先は本社所在地を管轄する経済産業局に一元化されています。
A類型より期間に余裕を見ておく
投資計画の作成、専門家の確認、経済産業局への申請と説明という段階を踏むため、 A類型よりも手続きに時間がかかるのが通常です 。決算間際からの着手では間に合いません。
工業会証明書が取得できる設備であればA類型のほうが早く進みます。まずA類型で取れないかを確認し、取れない場合にB類型を検討する順序が実務的です。
D類型・E類型の対象と使いどころ

古い解説ではA類型とB類型しか触れられていないことがありますが、現在はD類型とE類型が加わっています。
| 類型 | 対象となる場面 | 事前に必要な書類 |
|---|---|---|
| D類型 | M&Aや事業承継による経営資源の集約化 | 経済産業大臣の確認書 |
| E類型 | 売上高の拡大を目指す経営規模拡大 | 経済産業大臣の確認書 |
C類型は2025年4月1日をもって廃止された
デジタル化設備を対象としていたC類型は廃止されており、 現在使えるのはA・B・D・Eの4類型です 。遠隔操作やデータ連携を要件としていた枠組みは、現在は利用できません。
ソフトウェアやIT関連設備を検討している場合は、A類型の対象になるか、B類型の投資計画で要件を満たせるかを確認することになります。
D類型は事業承継やM&Aとセットで検討する
経営資源集約化設備を対象とする類型で、 M&Aによる事業の引き継ぎに伴う設備投資が想定されています 。修正ROAや有形固定資産回転率といった指標で判定されます。
事業承継を予定している会社では、設備投資の時期を承継のタイミングに合わせることで、この類型を使える可能性があります。
E類型は少額減価償却資産の特例と併用できない
経営規模拡大設備を対象とする類型ですが、 E類型の投資計画の期間中は少額減価償却資産の特例を使えません 。投資利益率が年平均7%以上であることに加え、経営規模の拡大に関する要件を満たす必要があります。
40万円未満の資産を多く購入する予定がある会社では、どちらを優先するかを先に決める必要があります。両方は使えません。
対象にならない設備と除外事由

金額基準を満たしていても対象外になるケースがあります。契約前に確認してください。
中古資産・貸付用資産は対象外
新品であることが前提のため中古設備は使えず、 主要な事業として行われるものを除き貸付けの用に供する資産も対象外です 。自社で使うために取得する新品の設備、というのが基本形になります。
リース取引の扱いは契約の形態によって異なります。所有権移転外ファイナンスリースなど、契約内容によって判定が変わるため個別の確認が必要です。
特定の業種で使用する設備は除外される
コインランドリー業や暗号資産のマイニング業について、 その事業が主要な事業でない場合に用いる設備は対象から除かれています 。節税目的での設備導入が問題視されたことを受けた措置です。
本業として営んでいる場合は対象になり得ます。副業的に導入して即時償却だけを狙う使い方が制限されている、という理解になります。
本社機能のみで使う設備は判定に注意する
対象は生産等設備を構成する資産であるため、 事務所や福利厚生施設のみで使用する設備は対象外とされています 。同じパソコンでも、生産管理に使うのか総務で使うのかで判定が変わり得ます。
どの工程で使う設備なのかを説明できるようにしておくことが、計画の記載でも申告時の説明でも重要になります。
対象設備かどうかを確認する手順

次の順に進めると、判定と手続きが同時に進みます。
メーカーへの確認を商談初期に行う
A類型で進められるかどうかは工業会証明書が取れるかで決まるため、 設備を選ぶ段階でメーカーに証明書の取得可否を確認してください 。取れない場合はB類型の投資計画を検討することになり、必要な期間が変わります。
メーカー側に実績があれば、型式ごとに証明書の取得可否をすぐ回答してもらえることが多くなっています。
発注時期は手続き期間から逆算する
証明書の取得と計画認定を設備の取得前に終わらせる必要があるため、 納期だけでなく手続きにかかる期間を含めて発注時期を決めます 。適用期限は2027年3月31日までとされています。
決算対策として使うなら、決算の3〜6か月前から動くのが現実的な線です。期末の1か月前からでは、ほぼ間に合いません。
年度改正が対象設備に与える影響

改正で金額の境界が動くため、購入する設備の仕様と時期の判断が変わります。
万円が制度の切り替え点になる
少額減価償却資産の特例が40万円未満へ拡充され、この制度の工具・器具備品は40万円以上になるため、 40万円を境に使う制度がきれいに分かれる形になります 。30万円台の器具備品は、改正後は少額減価償却資産の特例で処理することになります。
少額減価償却資産の特例には年間合計300万円という上限があります。台数が多い場合は上限に注意してください。
取得日で適用される基準が変わる
改正後の基準が適用されるのは2026年4月1日以後に取得する資産であり、 同じ事業年度の中で基準が切り替わる会社もあります 。資産台帳では取得日の管理が重要になります。
決算月によっては、期の途中で基準が変わることになります。自社の事業年度と改正の適用開始時期を並べて確認してください。
即時償却 対象設備に関するよくある質問

実務へ落とし込むときに、相談として多く寄せられる論点をまとめます。
パソコンやサーバーは即時償却の対象になりますか?
金額基準と用途の両方を満たせば対象になり得ますが、 本社事務所のみで使用する設備は対象外とされています 。
器具備品として取得価額の基準を満たし、生産等設備を構成する資産であれば対象になり得ます。基準は30万円以上(令和8年度改正で40万円以上)です。ただし本社事務所のみで使用する設備は対象外とされているため、どの工程で使うかの説明が必要になります。
中古の機械は対象になりますか?
新品であることが前提のため、 中古で取得した設備は対象になりません 。
なりません。この制度は新品であることが前提です。中古資産で減価償却を前倒ししたい場合は、中古資産の耐用年数の見積りによる方法など、別の枠組みで検討することになります。
A類型とB類型のどちらで申請すべきですか?
証明書が取得できるならA類型が早く、 取れない場合にB類型を検討する順序が実務的です 。
工業会等の証明書が取得できる設備であれば、手続きが早いA類型が実務的です。証明書が取れない場合や投資計画全体で要件を満たせる場合にB類型を検討します。まずメーカーに証明書の取得可否を確認するのが出発点になります。
C類型はまだ使えますか?
C類型は2025年4月1日に廃止されており、 現在使えるのはA・B・D・Eの4類型です 。
使えません。デジタル化設備を対象としていたC類型は2025年4月1日をもって廃止されており、現在はA・B・D・Eの4類型です。古い解説記事の情報を前提に検討すると誤ります。
設備を先に買ってから申請できますか?
証明書・確認書は設備の取得前に申請する必要があり、 先に発注すると適用を受けられない可能性があります 。
原則としてできません。工業会等の証明書または経済産業大臣の確認書は設備の取得前に申請する必要があり、経営力向上計画の認定を受けてから設備を取得するのが基本の順序です。発注前に手続きを始めてください。
複数台まとめて買えば金額基準を満たせますか?
判定は資産計上する1件ごとの取得価額で行うため、 まとめ買いで基準を満たすことはできません 。
満たせません。判定は資産として計上する1件ごとの取得価額で行うのが原則です。1台あたりの金額が基準を下回る場合、まとめて購入しても対象にはなりません。
契約や支出の前に論点を確認しておけば、選べる打ち手が広がります。
出典: 中小企業庁|中小企業経営強化税制 / 国税庁|税について調べる / e-Gov法令検索



