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売掛金が回収不能になったら?仕訳と貸倒損失の条件

売掛金が回収不能になったら?仕訳と貸倒損失の条件

売掛金の回収不能:事実確認・回収・税務処理

決算が近いのに、取引先から入金がない。電話もつながらなくなると、「もう売掛金を損失にしてよいのか」と迷います。売上げは立っているのにお金は入らず、税金や仕入れの支払いが迫るのも悩ましいところです。

売掛金が未入金というだけでは、税務上の貸倒損失にはできません。請求や入金の記録、相手の支払能力、担保・保証の回収余地を調べ、貸倒れの条件が成立した年度に処理します。回収のための行動と、決算で損失にする判断を分けることが出発点です。

法人の売掛金を中心に、最初の確認から貸倒損失の判断、仕訳、消費税、資金繰りまで順に見ていきましょう。帳簿の売掛金を減らしても、会社の預金が増えるわけではありません。

この記事でわかること

  • 回収に向けた確認と手続の選び方
  • 貸倒損失の三つの基準と計上する年度
  • 引当金の有無による仕訳と消費税の調整
目次

まず未入金の原因と売掛金の残高を確かめる

未回収と資金繰り:売上・未入金・支払い

請求漏れと支払いの争いを切り分ける

最初にそろえるのは、契約書、納品・検収の記録、請求書、入金履歴です。相手が受け取った請求額と自社の帳簿残高が一致し、支払期限を過ぎているかを確認します。

請求書の送付漏れや、入金済みなのに売掛金を減らしていない「消込み忘れ」なら、まず事務処理を直します。納品物の品質や金額に争いがあるなら、その内容を確かめる必要があります。相手にお金がない場合とは、対応が違います。

未回収の責任が営業担当者にあるか、取引先の契約違反なのかという問題も、税務上の貸倒れとは別です。社内で責任を決めたことだけを、損失計上の根拠にはできません。

担保と保証人からの回収余地も調べる

取引先が支払えなくても、担保の売却や保証人への請求で回収できる可能性があります。自社が相手に買掛金などの債務を負っているなら、相殺の余地も確認します。

担保の不動産に先順位の抵当権がある場合は、売却代金から自社にいくら回るのかが重要です。保証人についても、名前があるだけでなく、財産や支払能力を調べます。

国税庁には、実質的な担保価値が全くない事例や、保証人に回収可能な資力がない事例もあります。ただし、その事実関係に基づく判断です。「担保があっても無視できる」という一般ルールではありません。

回収の判断と損失計上を別に進める

「今は入金されていない」「今後の回収が心配」「税務上の貸倒れが成立した」は、それぞれ違う状態です。回収の余地が残る段階で、決算を合わせるためだけに売掛金を消すことはできません。

会計上、回収できない見込みを費用に反映する必要があっても、その全額が法人税の計算で認められるとは限りません。回収担当と経理担当で情報を共有し、回収の見込みと税務の条件を両方確認します。

回収に向けた行動は証拠を残して選ぶ

回収の選択肢:交渉・担保・手続き

督促と分割払いの約束を記録する

請求が正しいと確認できたら、支払状況を問い合わせます。連絡した日、相手の担当者、支払えない理由、約束した金額と入金日を残しましょう。担当者の記憶だけに頼ると、後から経緯を説明できなくなります。

一括では払えなくても、分割なら回収できる場合があります。合意する際は、支払額と期限を明確にして書面等に残し、実際の入金と照合します。約束をしただけで回収できた扱いにはせず、税務上の貸倒れの時期も別に判定します。

内容証明郵便は、どのような通知をいつ差し出したかを証拠にする手段です。送っただけで相手の預金を差し押さえたり、貸倒損失を確定させたりする効力はありません。

相殺と債権放棄は権利への影響を確かめる

自社にも取引先への支払債務があるなら、互いの債務を対当額で消す「相殺」を検討できます。ただし、弁済期などの要件があり、契約や倒産手続による制限もあります。残高が同じという理由だけで、経理処理を先に進めないことが大切です。

一方、債権放棄は、請求する権利を自ら手放す行為です。回収の可能性や税務上の扱いを確かめず、節税のためだけに免除すると、取り戻せない不利益が生じかねません。

特に関連会社への免除などは、貸倒損失ではなく寄附金等の問題になることがあります。詳しい確認点は債権放棄の判断と税務上の注意点も参考にし、権利の処分は法律面も相談して決めます。

支払督促や少額訴訟は金額と費用で比べる

交渉で解決しないときは、裁判所を使う方法があります。支払督促は原則として書面で審査される手続ですが、債務者が受領から2週間以内に異議を申し立てると、通常の訴訟手続へ移ります。

少額訴訟は、60万円以下の金銭の支払いを求める場合に利用でき、原則として1回の審理で解決を図ります。ただし、通常訴訟へ移る場合もあります。申立てをしただけで、現金が必ず入るわけではありません。

争いがある場合、倒産が迫る場合、保全や強制執行が必要な場合は、費用や回収可能性を弁護士に相談します。仮差押えは財産を保全する手続であり、それだけで代金を受け取る手続ではありません。商品の引揚げも、自社の判断だけで実行せず権利関係を確認します。

時効は請求書を送るだけで更新されない

回収を後回しにすると、時効の問題も生じます。民法の原則では、権利を行使できることを知った時から5年、権利を行使できる時から10年という期間があります。債権の発生時期や起算点、途中の手続によって確認が必要です。

催告には、時効の完成を6か月間猶予する扱いがあります。ただし、その猶予中に催告を繰り返しても、同じ効力で延長し続けることはできません。内容証明を送れば時効が一律に更新する、とは覚えないでください。

裁判上の請求等による完成猶予・更新や、時効の援用は別の論点です。「未回収から5年たったから自動的に貸倒れ」と決めず、期限が近づく前に確認します。

貸倒損失にできる三つの基準と計上時期

貸倒損失の条件:切捨て・全額不能・売掛特例

貸倒れの理由で使う基準が変わる

貸倒損失とは、回収できなくなった債権について生じる損失です。法人税では、国税庁の法人税基本通達9-6-1から9-6-3に沿って、理由と時期を確認します。

以下の「損金経理」は、決算で費用や損失として処理することです。「備忘価額」は、債権を管理するため帳簿に残す額をいいます。

表は横にスクロールできます

確認する事実 年度と処理の要点
再生計画等の切捨て・条件を満たす免除 切捨て等の事実が発生した年度の対象額
全額の回収不能が明らか 明らかになった年度に貸倒れとして損金経理
一定期間の取引停止後等の売掛債権 要件成立後に備忘価額を除いた残額を損金経理

実務では「法律上・事実上・形式上の貸倒れ」と説明されることもあります。呼び名よりも、どの条件に当てはまり、いつ成立したかが重要です。

再生計画の切捨てや書面免除がある場合

更生計画や再生計画の認可決定、特別清算の協定認可などで債権が切り捨てられた場合は、その切捨額を確認します。法令の整理手続によらない協議でも、通達が定める条件に該当するものがあります。

また、相手の債務超過が相当期間続き、弁済を受けられないと認められる場合に、書面で免除した額を対象とする扱いもあります。単に通知書を作れば足りるのではなく、相手の状態と回収不能の根拠が必要です。

ここで求められる書面と、内容証明郵便という送付方法は同じものではありません。内容証明がすべての貸倒れに必須というわけでもありません。切捨て・免除の内容と発生年度を資料で確認します。

全額の回収不能が明らかになった場合

債権の全額を回収できないことが、相手の資産や支払能力等から明らかになった場合は、その年度に損金経理を検討できます。単に一部の回収が難しい、営業を止めたらしいという情報だけでは足りません。

その明らかになった事業年度において貸倒れとして損金経理をすることができる。

出典:国税庁 法人税基本通達9-6-2

担保物があるときは、原則として処分した後に判定します。破産についても、申立てや開始決定だけで全額を損失にするのではありません。

国税庁の破産法人の事例では、残余財産がなく手続が終結した年度の処理を示す一方、終結前でも無配当が明らかなら、全額回収不能の基準で処理し得るとしています。通知の日付と、回収不能が明らかになった事実を分けて整理しましょう。

取引停止から一年以上たった売掛金の場合

継続取引をしていた相手の資産・支払能力等が悪化し、そのために取引を止めた場合には、一定の期間経過による扱いがあります。担保のある売掛債権は、この期間経過の基準から除かれます。

1年の起点は、取引停止時です。ただし、最後の弁済期や最後の弁済がその後なら、そのうち最も遅い時から数えます。例えば3月に取引停止、4月が最後の支払期限、6月に一部入金があれば、起点は6月です。

対象は売掛金や未収請負金などの売掛債権で、貸付金は含まれません。たまたま一度行った不動産取引などに、継続取引の扱いをそのまま当てはめることもできません。通販で購入が一回だけだった事例でも、反復販売を予定していた事情などが判断材料になります。

別の経路として、同一地域の相手に対する売掛債権の総額が取立ての旅費等に満たず、督促しても弁済がない場合の扱いがあります。単に少額というだけでは足りません。

いずれも、この通達で処理する際は備忘価額を残し、その残額を損金経理します。通達が備忘価額を全件一律に「1円」と定めているわけではありません。

仕訳は貸倒引当金の有無で変わる

会計処理を分ける:見積り・引当金・貸倒損失

引当金がなければ貸倒損失で売掛金を減らす

次に帳簿の処理です。消費税を含めた金額で記帳する「税込経理」で、税込110万円の売掛金が全額貸倒れとなった例を考えます。ここでは、備忘価額を残す9-6-3以外の全額貸倒れを前提にします。

貸倒引当金は、将来の貸倒れに備えてあらかじめ見積もり、記帳した額です。下の表は、左の借方で損失等を記録し、右の貸方で売掛金を減らす仕訳を示しています。引当金がない場合と、同じ債権に20万円ある場合を比べます。

表は横にスクロールできます

条件 借方 貸方
引当金なし 貸倒損失 110万円 売掛金 110万円
同じ債権に引当金20万円あり 貸倒引当金 20万円
貸倒損失 90万円
売掛金 110万円

「雑損失」などにまとめて処理する前に、貸倒れによる損失と分かる科目・記録にしておくと、申告時の確認がしやすくなります。税務上は、科目の名前だけで損金が認められるものではありません。

前期に計上した売上げでも、今期に貸倒れが成立したなら、その事実に沿って今期の損失を考えます。前期の記帳ミスを直す場合とは別の話です。消費税の申告調整も、次の章で分けて確認します。

引当金を使う仕訳では費用の重複を避ける

同じ110万円の債権に使える引当金が20万円あるなら、それを取り崩し、不足する90万円を貸倒損失にします。110万円を再び全額費用にして、引当金もそのまま残す処理は避けます。

ただし、過年度の引当金が税務上は損金になっていなかった場合などは、会計と申告の数字が違います。帳簿の仕訳だけで終えず、過去の申告調整と今回の損金額を照合します。

税抜経理では、仮受消費税等を含む処理も会計方針に合わせて検討します。税込経理の例を、そのまま税抜経理へ置き換えないようにしましょう。

回収が不安な段階では引当金の条件を確認する

全額回収不能とはいえない債権でも、会計上の貸倒見積りが必要な場合があります。しかし、税務の貸倒引当金には適用法人、対象債権、繰入限度額、損金経理、申告明細等の条件があります。

資本金1億円以下の普通法人等が対象になりますが、大法人の完全支配下にある場合などには除外があります。また、完全支配関係のある法人への債権など、対象から外れる債権もあります。「中小企業だから、心配な額を自由に損金にできる」制度ではありません。

個別評価では、再生計画による弁済猶予や相手の財産状況等に応じた事由と回収見込額を確認します。一括評価では原則として貸倒実績率を使い、一定の中小法人等には法定繰入率の選択肢があります。税務で損金にした引当金は翌期に戻し入れる扱いもあるため、翌期まで管理が続きます。

なお、2026年10月に貸倒見積りの改正会計基準等が公表されました。公表直後から全法人が一律に切り替わるものではないため、早期適用も含め、自社の採用基準と適用開始時期を確認します。

消費税の貸倒調整と後日の回収は別に扱う

貸倒れと消費税:貸倒時と回収時

元の課税売上に対応する消費税額を調整する

国内の課税売上に係る売掛金等が貸倒れになった場合、課税事業者は対応する消費税額を、貸倒れが発生した課税期間の売上税額から控除します。法人税で損失を計上することとは、別の申告上の確認です。

標準税率10%は、国の消費税7.8%と地方消費税2.2%の合計です。税込110万円が貸倒れになった例では、国税分は「110万円×7.8/110=7万8,000円」です。地方消費税分も含めると、この売掛金に対応する消費税等は10万円ですが、申告全体の納付額や還付額がその額になると保証するものではありません。

貸倒れの事実を明らかにする書類の保存が必要です。免税事業者や、非課税取引・貸付元本に、この計算をそのまま使うことはできません。他社から買い取った債権も、自社が行った元の課税売上とは区別します。

古い売上げや軽減税率の売上げでは、対応する税率も確認します。「貸倒れになった今の税率で、全額一律に計算する」とは限りません。

後日入金があれば回収益と消費税も確認する

適正に貸倒処理した後で、一部の代金を受け取ることもあります。税込経理の概略では、5万円を回収したときに「普通預金5万円/償却債権取立益5万円」などとして処理します。以前消した売掛金を、重ねて売上げに計上するものではありません。

消費税について貸倒控除を受けていたなら、回収した額に対応する消費税額を、回収した課税期間に加算します。一般課税と簡易課税では申告書上の計算にも違いがあるため、回収を経理担当へ確実に伝えましょう。税抜経理や過年度の税務調整がある場合も、処理を別途確認します。

決算前は証拠と資金繰りを一緒に整える

決算前の整理:証拠・申告・翌期

債権の発生から回収不能までを一組で残す

税務調査で説明する際に必要なのは、「回収できないと思った」という結論だけではありません。何が起こり、どの基準を満たし、なぜその年度に処理したのかをたどれる記録です。

表は横にスクロールできます

説明したいこと 資料の例
債権の発生と残高 契約書・納品書・検収記録・請求書・売掛台帳
期限と回収の経過 支払期限・最終入金・督促記録・交渉メモ
回収できない根拠 相手の財務資料・整理手続の通知・担保評価・保証人の調査
年度と申告への反映 成立日を整理したメモ・決算仕訳・申告明細・過年度調整

これらは証拠の例であり、すべての案件に同じ書類が法定で必須という一覧ではありません。書面免除の書面、個別評価引当の事実を証する書類、消費税の貸倒事実に関する保存書類など、制度が求める条件は別に確認します。

少額債権を取立費用との比較で処理するなら、残高だけでなく旅費等の根拠と督促の記録もそろえます。テンプレートの通知書を作るだけで、成立事実まで補えるわけではありません。

損金が認められても売掛金の現金は戻らない

税金の負担が減り得ることと、未回収代金を取り戻すことは違います。消費税を考慮しない単純な仮例で、100万円の損失が税務上も全額損金になり、十分な課税所得があり、税率を仮に30%とすると、税額差は30万円です。

その条件でも、税負担を考慮した損失は70万円残ります。売掛金100万円が現金で戻るのではなく、今期に100万円を追加で支払うという意味でもありません。赤字などの場合には、当期の税額差が同じ30万円になるとは限りません。

給与、仕入れ、借入返済、納税の予定を並べ、必要な運転資金を確認します。日本政策金融公庫の取引企業倒産対応資金などは、対象条件と審査がある融資です。借入金は返済が必要で、未回収債権の買取りや税還付ではありません。

ファクタリングも、売掛債権を売却して資金を得る取引です。手数料、買戻義務、リスクの負担を確認する必要があり、回収不能になった債権を必ず買ってもらえる仕組みではありません。

次の取引は与信枠と入金確認を見直す

同じ問題を繰り返さないためには、新規取引の前金、取引額の上限、期日直後の入金確認などを見直します。請求を自動化しても、相手の支払能力まで保証されるわけではありません。

売掛保証や取引信用保険を使う場合も、対象債権、限度額、免責、申請期限等の契約条件を確認します。経営セーフティ共済なども、売掛金が自動的に全額補填される保険と同じものではありません。加入・貸付け等の制度条件を確認して検討します。

複数の債権をまとめて管理する方法は、不良債権処理と決算前の整理でも解説しています。回収見込みと納税額を整理できたら、会社に残す資金から逆算して、ほかの決算対策を考える順序が大切です。

未回収があるときほど、税金だけを見て新しい支出を決めることは避けたいものです。貸倒れの判断資料と資金繰り表をそろえ、決算後に残す資金も含めて相談してみませんか。

よくある質問

処理の疑問を整理:回収・会計・税金

連絡が取れなければ貸倒損失にできますか?

連絡不能だけでは決まりません。相手の資産・支払能力、担保や保証の回収余地、切捨てや取引停止等の事実を調べ、貸倒れの基準と年度を確認します。

少額の売掛金も一年待つ必要がありますか?

一年経過の基準とは別に、同一地域の相手に対する売掛債権の総額が取立費用に満たず、督促しても弁済がない場合の扱いがあります。単に少額だから、という理由だけでは足りません。

個人事業主も同じ仕訳で処理できますか?

会計の科目は似ていても、この記事は法人税を前提にしています。個人の所得税では必要経費や引当金の適用条件を別に確認し、法人の要件をそのまま使わないでください。

貸倒損失は税務調査で否認されますか?

条件を満たす処理であることを、成立年度と客観的な資料で説明する必要があります。回収余地、損金経理や申告の条件も確認します。資料を作れば必ず認められるという保証はありません。

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