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一括評価金銭債権とは?対象と法定繰入率をわかりやすく解説

一括評価金銭債権とは?対象と法定繰入率をわかりやすく解説

一括評価の会社条件と対象債権と限度額

決算の売掛金一覧を見ると、まだ入金されていない代金がいくつもある。ほとんどは回収できるはずなのに、税理士から「貸倒引当金も確認しましょう」と言われた。回収できるお金まで、費用にしてよいのでしょうか。

一括評価金銭債権は、売掛金や貸付金などのうち、税務上の個別評価の対象を除いて、まとめて貸倒引当金を計算する債権です。将来の回収不能に備える仕組みですが、すべての会社が、すべての未収金に好きな割合を掛けられるわけではありません。

会社の条件を確かめ、残高を選び、限度額を計算する。この順で見ると、決算で確認したい点がつながってきます。

この記事でわかること

  • 一括評価と個別評価の違い
  • 対象になる債権と除外する残高
  • 実績率と現行の法定繰入率の使い分け
  • 計算例から決算仕訳と申告へ進む手順
目次

一括評価金銭債権とは?貸倒引当金の基本

未収代金の回収に備える見積りと実際の損失の違い

金銭債権は代金や貸したお金を受け取る権利

商品を納め、来月代金を受け取る約束をした。この代金を受け取る権利が売掛金で、金銭債権の一つです。会社がお金を貸したときの貸付金も含まれます。

「一括」は、取引先ごとに残高を見る必要がない、という意味ではありません。税務上の対象を選んだうえで、まとめた残高を使って引当金の限度額を計算します。

「売掛金、貸付金その他これらに準ずる金銭債権で、個別評価金銭債権を除いたもの」

引用元:国税庁 No.5500 一括評価金銭債権に係る貸倒引当金の対象となる金銭債権の範囲(原文の一部)

貸倒引当金と貸倒損失の違い

貸倒引当金は、回収できなくなる可能性を見込み、損失に備えて帳簿に計上するものです。そのために、同額のお金を別の銀行口座へ移すわけではありません。

一方、貸倒損失は、実際に回収できなくなった債権などを損失にする処理です。税務上も、それぞれに条件があります。「支払いが遅いから全額を損失にする」「利益が出たから多めに引き当てる」とは決められません。

個別評価金銭債権との違い

個別評価は、再生手続などの一定の事実により、債権の一部について損失が見込まれる場合に、相手ごとの事情から限度額を計算する区分です。一括評価には、この個別評価に該当する債権を含めません。

入金の遅れだけで、自動的に個別評価へ移るわけではありません。相手の財産や返済の状況、手続の進行などから、法令の条件を確認します。

会計では一般債権・貸倒懸念債権・破産更生債権等に分けて見積もる考え方もあります。ただし、会計上の分類と税務上の一括・個別評価は、同じ名称の対応表で決まるものではありません。

貸倒引当金を損金にできる法人の条件

資本金と株主関係と法定率特例の資格を確認

残高を集める前に、会社が制度の対象かを確かめます。ここでいう「損金」は、法人税を計算するときに収入から差し引ける費用などのことです。帳簿に引当金を載せても、税務でその全額を引けるとは限りません。

資本金1億円以下でも株主と通算関係を確認

一般の会社では、事業年度末の資本金または出資金が1億円以下の普通法人などが対象になります。普通法人でも投資法人や特定目的会社は、この区分から除かれます。

さらに、資本金5億円以上の法人など一定の大法人による完全支配関係や、複数の大法人による支配に関する除外を確認します。企業グループで法人税を計算するグループ通算制度では、大通算法人に該当しないかも確認が必要です。

たとえば、自社の資本金が1000万円でも、一定の大法人の100%子会社なら、その数字だけで制度を使えるとは判断できません。株主構成と、直接・間接の支配関係を税理士に見てもらいます。

このほか、資本や出資を有しない一定の普通法人、公益法人等・協同組合等、人格のない社団等、銀行・保険会社等、一定の金融取引の債権を持つ法人にも対象区分があります。最後の区分は対象債権が限定されるため、一般の中小会社と同じ扱いにしないでください。

法定繰入率を使える中小法人の追加条件

貸倒引当金の制度が使えるかと、業種別の「法定繰入率」を選べるかは、別の確認です。法定繰入率は、一定の中小法人などが、過去の実績から計算する率に代えて使える特例です。

普通法人では、資本金や支配関係に加え、所得の大きさなどによる除外も確認します。原則として、当期の開始日前3年以内に終了した基準年度の所得を、合計月数から年換算した額が15億円を超える法人などは、この特例の対象から外れます。設立から3年未満の場合などは、調整があります。

グループ通算制度における適用除外事業者も対象外です。まず制度全体の対象か、次に特例を選べるか。二つを分けると、会社の条件を読み違えずに済みます。

一括評価金銭債権の対象と対象外

売掛金と貸付金と対象外の残高を選別

売掛金と貸付金に加えられる未収金

会社が対象なら、期末の残高一覧を用意します。売掛金・貸付金だけでなく、取引の中身によって含められる未収金もあるため、科目の名前だけで集計を終えないようにします。

残高の例 一括評価での確認点
売掛金・実際の貸付金 個別評価や完全支配関係等の除外を確認
未収の請負代金・加工料・手数料・賃料等 益金に算入されたものか確認
貸付金の未収利子・未収損害賠償金 益金に算入されたものか確認
他人のために払った立替金 将来精算する費用の前払等と区別
保証債務を履行した場合の求償権 保証しただけでなく履行後の請求権か確認
通算税効果額に係る未収金 制度上の取扱いと完全支配関係の除外等を確認

「益金に算入」とは、法人税の所得計算で収入側に含めている、ということです。まだ入金されていなくても収入として計上した代金などは、その内容を確認します。

立替金と役員貸付金は取引の中身で判定

取引先が負担すべき支払いを会社が立て替え、後で返してもらう約束がある。こうした立替金は検討対象です。一方、出張前に概算で渡す旅費や給料の前払いなど、将来精算する費用の前払は対象外です。

役員貸付金も、実際に貸したお金を受け取る権利なのかを確認します。名前だけ「貸付金」にしていても、給与の前払などが中身なら扱いは変わります。契約、送金、返済の記録を揃えて判断しましょう。

個人の役員への貸付と、100%支配関係にある法人への貸付は同じではありません。後者には、後述する完全支配関係の除外があります。

割引手形と裏書手形を含める条件

売掛金などの代金として受け取った手形を銀行で割り引いたり、支払いのために裏書譲渡したりしても、元の債権を対象として扱う場合があります。国税庁の通達では、裏書譲渡された手形額を財務諸表の注記等で確認できることが条件です。

売掛金や貸付金などに由来しない手形を取得し、さらに譲渡した場合まで、同じように含められるわけではありません。受取手形や電子記録債権は、受取権利が生じた取引と、譲渡後の状態を確認します。

このほか、所定の先日付小切手や、税法上売買があったものとされるリース取引の未到来リース料にも取扱いがあります。通常の売掛金と違う取引は、残高を一覧へ足す前に条件を確認してください。

敷金や前渡金など対象外になる債権

返してもらえるお金だからといって、すべて一括評価に入るわけではありません。預貯金とその未収利子、公社債の未収利子、未収配当、敷金・保証金・預け金、手付金・前渡金などは対象外に挙げられています。

仕入割戻しや、一定の法令に基づく給付金の未収金、未決済のデリバティブ差金等にも除外があります。仮払金・立替金は、科目ではなく実質で判定します。

一括評価で除外する敷金等と、返還請求した債権を個別評価で検討する場面も別です。一括に入らないから、どの処理でも費用にできないと決めつけないようにします。

完全支配関係がある法人への債権は除外

自社と完全支配関係がある他の法人への債権は、一括評価にも個別評価にも含めません。典型例は100%の親子関係ですが、間接保有や兄弟会社なども含め、法的な関係を確認します。

これは、グループ通算制度を選んだ会社だけの除外ではありません。一方、単に「関連会社」と呼んでいる、株式を80%持っている、といった事情だけで、すべて自動的に除外するわけでもありません。

実績繰入率と法定繰入率の計算方法

対象残高と実績率または法定率による限度額の計算

対象残高を選べたら、限度額の計算方法を確認します。原則は過去の貸倒実績に基づく方法で、特例の資格がある会社等は法定繰入率による方法も検討できます。

実績繰入率は過去3年間の貸倒状況から計算

原則の限度額は、期末の一括評価金銭債権の帳簿価額の合計に、貸倒実績率を掛けて計算します。実績率は、当期の開始日前3年以内に開始した各事業年度の貸倒状況と、各期末の対象残高から求めます。

損失側は、対象の貸倒損失に個別評価分の引当金繰入額を加え、戻入額を引くなどして、月数から一年分へ換算します。これを、対象年度の平均残高で割ります。個別評価の加減算や対象損失の範囲を省いて、直近一年の貸倒額だけで計算しないようにしましょう。

仮に、比較する3年度がすべて12か月で、各期末の対象残高がいずれも1億円だったとします。3年度を合計した対象の貸倒損失は300万円、個別評価の繰入・戻入等による加減算はないケースです。

計算するもの 仮例の金額と率
一年当たりの貸倒額 300万円÷3=100万円
対象債権の平均残高 (1億円+1億円+1億円)÷3=1億円
貸倒実績率 100万円÷1億円=0.01(1%)

国税庁の算式では、小数点以下4位未満を切り上げます。短い事業年度が混ざる場合は、上の例のように単純に3で割れません。為替換算の損失や、保険金等で補われた貸倒損失部分、返品債権特別勘定の繰入額等も、そのまま対象損失へ入れない取扱いがあります。

法定繰入率は主たる事業ごとの5区分

法定繰入率は、会社の主たる事業に応じた率です。2026年10月確認時点の国税庁の表は、次の5区分です。率が大きいから選ぶのではなく、自社が特例の対象で、どの事業区分かを確かめます。

主たる事業 法定繰入率
卸売・小売(飲食店・料理店を含み割賦販売小売を除く) 10/1000(1%)
製造(電気・ガス・熱供給・水道・修理を含む) 8/1000(0.8%)
金融・保険 3/1000(0.3%)
割賦販売小売・包括信用購入あっせん・個別信用購入あっせん 7/1000(0.7%)
その他 6/1000(0.6%)

割賦販売小売等の13/1000は、2021年4月1日前に開始した事業年度の旧率です。過去の記事や資料を使う場合は、年度を確認してください。

特例の資格があれば、年度ごとに実績率の方法と比べて検討できます。ただし、法定率には次章の残高調整があるため、率の数字だけを比べても限度額は決まりません。

兼業の場合は主たる事業で判定

製造と小売など複数の事業を営む場合は、事業ごとに債権を分けて別々の法定率を掛けるのではなく、主たる事業を判定します。収入や所得、従業員、通常の売掛債権の範囲などから総合的に判断します。

今年だけ率の高い業種を選ぶ、といった扱いは避けましょう。合理的に判定した区分は、事業内容などに著しい変動がない限り、継続して同じ区分で計算することができます。

実質的に債権とみられない額の扱いと計算例

同じ相手への受取代金と支払代金の見合いを確認

同じ取引先への買掛金や借入金との見合い

法定率では、期末の対象残高から「実質的に債権とみられない金額」を引きます。典型例は、同じ相手に受け取る代金と支払う代金の両方がある場合です。

たとえば、A社への売掛金が100万円あり、A社へ払う買掛金が30万円ある。取引の条件から、その30万円が見合いとなる場合は、法定率の計算で調整します。支払手形、営業に係る受入保証金、借入金などにも確認すべき組合せがあります。

この見合い額と、担保や保証で回収できそうな金額は別です。一括評価の計算で担保価値を一律に引く方法ではありません。また、計算上の調整をすることと、実際に相殺の手続きをして帳簿残高を消すことも区別します。

売掛金8000万円から限度額を試算

制度と法定率の特例を使える卸売会社の仮例です。個別評価分、完全支配関係法人への債権、対象外の残高を除いた期末残高が8000万円。同じ相手への買掛金等との見合いによる調整額が、合計2000万円だったとします。

確認する順番 仮例の計算
調整後の計算基礎 8000万円−2000万円=6000万円
卸売業の法定率 10/1000(1%)
繰入限度額 6000万円×1%=60万円
帳簿に繰り入れた額が80万円の場合 限度60万円まで損金。超過20万円は法人税の所得計算で足す

60万円は「法人税が60万円減る」という数字ではありません。所得計算で損金にできる上限の仮例です。実際の納税への影響は、課税所得や他の処理などによって変わります。

実質的な債権額の簡便法は過去の基準年度を確認

実質的に債権とみられない額には、基準年度の実績を使う簡便な計算方法もあります。ただし、その基準は直近3年ではありません。国税庁の通達では、2015年4月1日から2017年3月31日までの間に開始した各事業年度が基準とされています。

当時引当金を設定していたかどうかにかかわらず、この基準年度の取扱いを確認します。古い帳簿を使うため、資料の有無や自社に適した計算は税理士へ相談してください。先ほどの貸倒実績率の「過去3年」と混ぜないようにしましょう。

決算仕訳と別表十一の申告で確認すること

帳簿と申告明細と翌期の戻入れを確認

損金経理した繰入額と税務限度額を照合

限度額が出ても、計算表を作っただけでは足りません。税務上の損金算入には、帳簿上も引当金へ繰り入れる「損金経理」などが必要です。会計で必要な見積額と、税務で認められる上限を照合します。

先ほどの仮例で、会計上80万円を繰り入れるなら、基本の仕訳は借方「貸倒引当金繰入」80万円、貸方「貸倒引当金」80万円です。そのうち税務の限度額は60万円なので、超える20万円は所得計算で加算します。

納税を減らしたい額に合わせて、会計の見積りを増やす処理ではありません。根拠のある見積額と、制度に沿った限度額をそれぞれ確認します。

別表十一(一の二)と債権明細を揃える

一括評価の貸倒引当金は、別表十一(一の二)「一括評価金銭債権に係る貸倒引当金の損金算入に関する明細書」で申告の計算を整理します。法人税法施行令96条8項に基づく実績率の計算をする場合は、所定の個別評価分の金額について、別表十一(一)の明細も添付します。

国税庁の2026年版様式は、2026年4月1日以後に終了する事業年度分です。旧率の適用を分ける事業年度の「開始日」と、様式の「終了日」を読み違えないようにしてください。

相談前には、相手別の残高一覧と元帳、請求・契約・入金の記録を揃えると、対象の選別が進みます。株主構成、同じ相手への支払残高、事業区分、過去の貸倒額も、今回の計算に必要な範囲で用意します。すべてを新たな法定添付書類とする意味ではなく、判断と計算を確かめるための資料です。

翌期の戻入れまで含めて納税と資金を考える

税務上、当期に損金にした引当金は、翌期に全額を益金へ戻し、その期の新しい繰入額を計算します。つまり、損金が永久に増える制度ではなく、翌期以降も関わる課税時期の調整です。

先ほどの例では、前期の会計繰入額は80万円、税務の損金は60万円で、20万円を加算していました。翌期に会計上80万円を戻すときは、前期に足した20万円を、翌期の法人税の所得計算では差し引きます。80万円−20万円=60万円が、税務上の戻入れとなります。

その翌期に、新たに65万円を会計上繰り入れ、その全額が税務の限度内で損金になると仮定します。戻入れ60万円と新しい損金65万円の差額5万円が、その期の所得を押し下げる計算になります。翌期の新しい引当額も見るため、「次の年に必ず60万円分の税金を払う」とも限りません。

引当金の計上で売掛金が回収できるようになるわけではありません。納税の見込みと、実際の入金予定を分けて資金計画を立てます。赤字などの場合は、引当金を損金にしても、その期の現金負担が直ちに減るとは限りません。

また、引当金を積んだだけで、消費税の貸倒税額控除は受けられません。課税取引の債権が実際に貸倒れた場合の条件や、その事実を明らかにする書類の保存は別に確認します。

設備の購入費を年ごとに配分する減価償却とも、支出や回収の状況が違います。会社全体の決算を見直すなら、法人の減価償却と節税の考え方も併せて確認すると、費用と資金の関係を整理できます。

一括評価金銭債権のよくある質問

会社条件と取引の実態と税務上の取扱いを確認

貸倒れがなくても法定繰入率を使えますか?

特例の資格や対象残高、損金経理等の条件を満たせば、過去に貸倒れがなかったことだけを理由に法定率が使えなくなるわけではありません。制度の対象法人か、法定率の特例を選べるかを先に確認します。

すべての法人が貸倒引当金を損金にできますか?

できません。会計で引当金を計上することと、法人税で損金にすることは別です。適用法人、債権の範囲、損金経理と繰入限度額、申告の条件を確認します。

入金が遅れている売掛金は個別評価ですか?

遅れているという理由だけで、自動的に個別評価になるわけではありません。相手の財産や返済の状況、再生手続等の事実が、税務上の条件に該当するかを確認します。

役員貸付金は一括評価の対象ですか?

実際の貸付金で、個別評価等の除外に該当しなければ、対象になり得ます。給与の前払を貸付金の科目で処理している場合などは、取引の中身から判断します。個人役員への貸付と、完全支配関係法人への貸付は区別します。

関連会社の債権はすべて除外されますか?

単に関連会社だから一律に除外するわけではありません。ただし、自社と完全支配関係がある他の法人への債権は、一括評価にも個別評価にも含めません。直接・間接の株式保有等から法的な関係を確認します。

貸倒引当金を計上すると消費税も減りますか?

引当金の計上だけで、消費税の貸倒税額控除は受けられません。消費税の課税取引の債権が実際に貸倒れたなどの条件と、その事実を明らかにする書類の保存を別途確認します。

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