借上社宅とは?法人の家賃設定と節税メリットを税務処理まで解説

法人の借上社宅は、会社が賃貸物件を借り上げ、役員・従業員へ貸与する福利厚生制度です。
借上社宅は、会社が賃貸借契約を結び、従業員等から適切な社宅使用料を受け取る制度です。法人契約にするだけでは給与課税を避けられないため、対象者、使用料、住宅手当との区分、退去時精算を規程化します。
この記事でわかること
- 借上社宅とは?法人が借りた賃貸物件を従業員へ貸与する制度
- 借上社宅の家賃は賃貸料相当額と50%基準で決める
- 借上社宅の経理処理は社宅規程と契約資料をそろえる
- 借上社宅のメリットは家賃負担軽減でデメリットは管理負担
- 借上社宅で失敗しないために契約名義と家賃を確認する
2026年時点で導入する場合は、法人契約にするだけでは不十分で、社宅使用料の計算、対象者の基準、住宅手当との違い、社宅規程、退去時精算まで設計する必要があります。
この記事では、借上社宅の税務、社宅使用料、経理処理、メリット・デメリット、給与課税を避けるための確認事項を整理します。
2026年7月更新の確認ポイント
- 法人契約、入居者負担、対象者基準をセットで決める
- 社宅使用料の根拠が弱い場合や対象者が不公平な場合は給与課税リスクがある
- 住宅手当との違いを整理し、採用・転勤・福利厚生の目的を明確にする
借上社宅とは?法人が借りた賃貸物件を従業員へ貸与する制度

借上社宅は、法人が家主と賃貸借契約を結び、その住宅を役員や従業員へ貸与する制度です。会社が家賃を直接支払い、入居者から社宅使用料を受け取る形が基本です。
制度の目的は、単なる節税ではなく、採用力向上、転勤支援、遠方人材の受け入れ、福利厚生の標準化です。節税効果は、適正な社宅使用料と給与課税の整理ができて初めて成立します。
借上社宅の家賃は賃貸料相当額と50%基準で決める

従業員へ社宅や寮を貸与する場合、賃貸料相当額の50%以上を従業員から受け取っていれば、差額は給与として課税されない扱いが示されています。
ここで重要なのは、会社が実際に支払う家賃の50%ではなく、国税庁の計算で求める賃貸料相当額の50%以上という点です。借上社宅でも、固定資産税課税標準額や床面積の確認が必要になります。
ここで重要なのは、会社が実際に支払う家賃の50%ではなく、国税庁の計算で求める賃貸料相当額の50%以上という点です。借上社宅でも、固定資産税課税標準額や床面積の確認が必要になります。
使用人に社宅を貸す場合の賃貸料相当額、50%基準、住宅手当や個人契約補助が給与扱いになりやすい点を確認します。
役員を借上社宅の対象にする場合は、使用人社宅とは別に役員社宅のルールを確認します。小規模住宅、非小規模住宅、豪華社宅で判断が変わります。
借上社宅の賃貸料相当額は物件区分で計算する
金額・計上時期・証憑を帳簿と一致させることが重要です
| 項目 | 原則の考え方 | 必要資料 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 従業員社宅 | 賃貸料相当額の50%以上を受け取っていれば給与課税を避けやすいです。 | 固定資産税課税標準額、床面積、社宅使用料の台帳。 | 会社が払う家賃の50%ではありません。 |
| 役員社宅 | 役員用の賃貸料相当額を確認し、低額貸与や豪華社宅判定に注意します。 | 物件資料、賃貸借契約書、役員負担額、議事録。 | 従業員と同じ50%基準だけで判断しないことが重要です。 |
| 住宅手当 | 社宅貸与ではなく現金支給に近いため、原則として給与課税を前提にします。 | 給与規程、給与台帳、源泉徴収簿。 | 手軽ですが、税・社会保険の負担増につながります。 |
| 消費税 | 住宅用の貸付けは一定要件で非課税です。 | 契約書の用途、家賃内訳、駐車場契約。 | 事務所利用、駐車場、1か月未満の貸付けは別扱いになる可能性があります。 |
借上社宅の使用料は固定資産税評価額から順番に計算する
金額・計上時期・証憑を帳簿と一致させることが重要です
| 手順 | 確認内容 | 間違いやすい点 |
|---|---|---|
| 1. 対象者を分類 | 役員、正社員、転勤者、単身赴任者、新卒などを分けます。 | 役員と従業員を同じ基準で一括処理する。 |
| 2. 物件資料を取得 | 床面積、固定資産税課税標準額、家賃内訳、駐車場を確認します。 | 家賃総額だけで社宅使用料を決める。 |
| 3. 使用料を計算 | 従業員は賃貸料相当額の50%以上、役員は役員社宅ルールを確認します。 | 会社負担を大きくしすぎて給与課税になる。 |
| 4. 給与台帳に反映 | 毎月の社宅使用料を天引きまたは入金で管理します。 | 徴収漏れを決算時にまとめて処理する。 |
借上社宅の経理処理は社宅規程と契約資料をそろえる

借上社宅では、会社が支払う家賃、入居者から受け取る社宅使用料、敷金、礼金、更新料、退去時原状回復を分けて処理します。会社負担部分は福利厚生や採用施策として説明できる状態にしておくことが大切です。
制度が広がるほど、物件上限、入居資格、家族同居、自己都合退去、転勤時、退職時、休職時の扱いが問題になります。税務だけでなく、人事制度として運用できるかまで見ます。
| 規程・資料 | 決める内容 | 残さないと起きる問題 |
|---|---|---|
| 社宅規程 | 対象者、入居資格、物件上限、会社負担、本人負担、退去条件。 | 特定社員だけの利益供与、社内不公平、給与課税リスクが出ます。 |
| 賃貸借契約書 | 法人契約、用途、家賃、共益費、駐車場、更新料、敷金。 | 個人契約補助と区別できず、住宅手当扱いになりやすくなります。 |
| 社宅使用契約書 | 入居者の負担額、禁止事項、退去精算、原状回復。 | 未徴収、退去時トラブル、会社負担の私的利用が起きます。 |
| 計算根拠資料 | 固定資産税課税標準額、床面積、賃貸料相当額。 | 50%基準の根拠が説明できず、給与課税が問題になります。 |
| 給与台帳・入金記録 | 毎月の社宅使用料徴収、未収管理。 | 徴収していない期間が給与と見られやすくなります。 |
借上社宅のメリットは家賃負担軽減でデメリットは管理負担

メリットは、税額だけでなく「制度として説明できる条件」が揃って初めて成立します。デメリットも、何が起きるかだけでなく、どの資料を残せば避けやすいかまで見ておきます。
借上社宅は従業員の手取りと採用力を高めやすい
要件・証拠・資金繰りを一体で確認することが重要です
| メリット | 成立する条件 | 経営上の効果 | 確認資料 |
|---|---|---|---|
| 採用力・定着率を上げやすい | 対象者と物件上限を規程化し、福利厚生として公平に運用すること。 | 遠方採用、転勤、新卒採用で住居不安を減らし、応募・定着に効きやすくなります。 | 社宅規程、採用資料、対象者一覧、入居承認記録。 |
| 従業員の手取り改善につながる | 社宅貸与として実態があり、社宅使用料が税務上の基準を満たすこと。 | 住宅手当を給与で払うより、従業員側の税・社会保険負担を抑えやすくなります。 | 賃貸料相当額の計算書、給与台帳、社宅使用契約。 |
| 福利厚生費として説明しやすい | 制度対象、負担基準、入退去ルールが明文化されていること。 | 属人的な手当ではなく、会社制度として運用できます。 | 社宅規程、稟議書、契約書、支払明細。 |
| 転勤や勤務地変更に対応しやすい | 勤務地、入居期間、退去条件を決めておくこと。 | 急な異動でも住居手配を会社主導で進めやすくなります。 | 異動辞令、入居申請書、退去精算書。 |
借上社宅は物件管理と退職時対応が負担になる
要件・証拠・資金繰りを一体で確認することが重要です
| デメリット | 起きやすい場面 | 会社への影響 | 回避策 |
|---|---|---|---|
| 物件管理と事務負担が増える | 入居者、契約更新、退去精算、原状回復が増える場合。 | 総務・経理の工数が増え、退去トラブルが会社負担になります。 | 物件上限、承認フロー、退去時チェックリストを規程化します。 |
| 社宅使用料が低すぎると給与課税される | 賃貸料相当額を計算せず、本人負担を低く設定した場合。 | 差額が給与課税され、源泉所得税や社会保険料に影響します。 | 年1回、賃貸料相当額と本人負担額を見直します。 |
| 固定資産税資料の取得が難しい | 貸主や管理会社から課税標準額を入手できない場合。 | 計算根拠が曖昧になり、税務説明が弱くなります。 | 契約前に資料取得可否を確認し、代替資料と税理士見解を残します。 |
| 不公平感が出やすい | 一部社員だけが使える、上限が曖昧、家族構成で差が大きい場合。 | 社内不満や労務トラブルにつながります。 | 対象者、勤務地、職務上の必要性、本人負担基準を明文化します。 |
借上社宅で失敗しないために契約名義と家賃を確認する


| 失敗パターン | 起きる問題 | 回避策 |
|---|---|---|
| 個人契約のまま会社が家賃を補助する | 借上社宅ではなく住宅手当と見られ、給与課税の対象になりやすいです。 | 法人契約へ切り替え、社宅使用契約と本人負担額を整えます。 |
| 社宅規程なしで個別対応する | 誰にいくら補助するかが属人的になり、福利厚生として説明しにくくなります。 | 入居対象、上限家賃、本人負担、退去条件を規程化します。 |
| 会社負担を大きくしすぎる | 本人負担が税務基準を下回ると給与課税の論点になります。 | 賃貸料相当額を計算し、毎月の給与台帳で徴収します。 |
| 退職時・退去時の精算を決めていない | 原状回復、違約金、敷金精算、未払使用料でトラブルになります。 | 退去期限、自己負担範囲、会社負担範囲を入居前に同意します。 |
| 駐車場・事務所利用・短期利用を混ぜる | 消費税や経費区分が住宅家賃と異なり、処理を誤りやすくなります。 | 契約内訳を分け、住宅部分とその他を別管理します。 |
金額の有利さだけを説明して、契約名義、規程、計算根拠、承認記録、実態資料が残っていないケースです。制度を使うなら、毎月の処理と保存資料まで同時に設計します。
借上社宅は住宅手当より社会保険料を抑えやすい


借上社宅を導入するか迷う場合は、同額を住宅手当として給与支給した場合と比較します。従業員の手取り、会社の社会保険料、法人税、事務工数、社内公平性まで含めると判断しやすくなります。
節税額だけではなく、採用・定着の効果、転勤対応、総務負担、退去リスクを含めた総合判断が必要です。
借上社宅が向く会社は採用と福利厚生を強化したい会社


借上社宅は物件選定から給与反映まで順番に導入する

借上社宅は、契約前の設計がほぼ勝負です。契約後に税務や労務のルールを合わせると、本人負担額の修正や社内説明が難しくなります。
借上社宅を法人で導入する前に契約と家賃を確認する
要件・証拠・資金繰りを一体で確認することが重要です
借上社宅と住宅手当と社有社宅の違いを比較する
名称ではなく要件と税務効果の違いで区分することが重要です
| 制度 | 特徴 | 税務上の見方 | 向いている会社 | 注意点 |
|---|---|---|---|---|
| 借上社宅 | 法人が賃貸物件を借り、従業員へ貸与します。 | 賃貸料相当額と本人負担額を確認します。 | 採用・転勤・福利厚生を整えたい会社。 | 固定資産税資料、社宅規程、退去精算が必要です。 |
| 住宅手当 | 現金で家賃補助を支給します。 | 原則として給与課税を前提にします。 | 制度を簡単に始めたい会社。 | 税・社会保険の負担が増えやすいです。 |
| 社有社宅 | 会社が不動産を所有して貸与します。 | 固定資産税、減価償却、賃貸料相当額を確認します。 | 長期保有や事業所近接の社宅が必要な会社。 | 購入資金、固定資産リスク、出口が重くなります。 |
| 寮制度 | 複数人向けに住宅を提供します。 | 社宅使用料と福利厚生の公平性を確認します。 | 新卒採用、工場、店舗、地方拠点。 | 管理人、共同利用、労務管理が必要です。 |
借上社宅のよくある質問
要件・証拠・資金繰りを一体で確認することが重要です
借上社宅は法人節税になりますか?
適正に運用すれば、 住宅手当より税・社会保険の負担を抑えやすい場合があります 。ただし、節税よりも福利厚生制度としての実態が重要です。
従業員から家賃はいくら取ればよいですか?
従業員社宅では、 賃貸料相当額の50%以上を受け取っていれば給与課税を避けやすい扱いがあります 。会社が払う家賃の50%ではない点に注意します。
役員も借上社宅に入れますか?
可能ですが、 役員社宅のルールで賃貸料相当額を確認します 。従業員の50%基準だけで処理すると危険です。
住宅手当から借上社宅へ変えるときの注意点は?
給与規程、社宅規程、対象者、本人負担額、 契約名義を整理します 。既存の住宅手当を単に法人契約へ置き換えるだけでは不十分です。
固定資産税課税標準額の資料が取れない場合は?
貸主や管理会社へ確認します 。取得できない場合は、代替資料や計算根拠を税理士と整理し、安易に低い本人負担へしないことが重要です。
借上社宅の消費税はどうなりますか?
住宅用の貸付けは 一定要件で非課税とされます 。事務所利用、駐車場、短期貸付けなどが混ざる場合は内訳を確認します。
借上社宅は賃貸料相当額と社宅規程をそろえて導入する
法人の借上社宅は、 住宅手当よりも税務・福利厚生の設計余地がある制度です 。採用、転勤、定着の課題がある会社では、従業員の手取り改善と会社の制度整備を同時に進められます。
ただし、法人契約、社宅規程、賃貸料相当額、本人負担額、固定資産税資料、退去時精算を整えないと、給与課税や社内不公平につながります。導入前に運用まで作り込むことが成功条件です。
税額だけでなく資金繰りと将来の課税まで比較することが重要です
借上社宅とは?法人の家賃設定と節税メリットを税務処理まで解説に関するよくある質問

借上社宅とは?法人の家賃設定と節税メリットを税務処理まで解説は節税だけを理由に選んでもよいですか?
いいえ。税額だけでなく、事業上の必要性、手元資金、将来の課税、解約・売却条件まで確認して判断します。不要な支出を増やすと、税負担が下がっても手元資金は減るためです。
適用できるかは何で決まりますか?
対象者、取引や資産の内容、金額、取得・契約・支払・事業供用の時期、申告書類で決まります。制度名が同じでも、事実関係が違えば税務処理は変わります。
契約や支出の前に確認する書類は何ですか?
見積書、契約書、仕様書、請求書、支払条件、所有権と解約条件を確認します。税制を使う場合は、申請や認定が取引前に必要かも確認してください。
税務調査に備えて何を残せばよいですか?
取引目的を示す稟議書、契約書、請求書、振込記録、納品・事業供用を示す写真や作業記録を残します。帳簿の摘要と証憑の内容を一致させることが重要です。
顧問税理士にはいつ相談すべきですか?
契約・購入・支払の前が基本です。決算直前では申請期限や納期に間に合わないことがあるため、利益の着地が見えた段階で早めに相談してください。
制度改正や最新要件はどこで確認できますか?
国税庁、財務省、e-Gov、制度を所管する省庁の最新資料で確認します。前年の記事や事業者資料だけで判断せず、適用日と経過措置まで確認してください。
契約や支出の前に論点を確認しておけば、選べる打ち手が広がります。
出典: 国税庁:No.2597 使用人に社宅や寮などを貸したとき / 国税庁:No.2600 役員に社宅などを貸したとき / 国税庁:No.6225 地代、家賃や権利金、敷金など / 国税庁|税について調べる

