「建設業は他業種より税負担が重い」「重機投資の節税効果を最大化したい」「人手不足の中で賃上げと節税を両立したい」と悩む建設業の経営者・経理担当者の方は非常に多いのが実情です。
建設業は工事原価管理という業界特有の会計処理が必要で、適切な節税対策を講じれば年間500万円以上の税負担軽減も十分に可能です。
本記事では、税理士法人ディライトソリューションズが、建設業の法人向けに、工事原価管理から中小企業経営強化税制、倒産防止共済、賃上げ促進税制、多法人スキームまで、2026年最新の情報で網羅的に解説します。
この記事でわかること
- 建設業特有の工事原価管理と未成工事支出金の活用
- 中小企業経営強化税制で重機・車両を即時償却する方法
- 中小企業投資促進税制(30%特別償却または7%税額控除)の比較
- 倒産防止共済(年240万円損金)と小規模企業共済の組み合わせ
- 賃上げ促進税制で最大45%の税額控除を獲得する方法
- 年商1億・3億・10億円の売上規模別シミュレーション

建設業の法人が知るべき節税の基本構造
建設業の節税は、業界特有の会計処理を理解することから始まります。一般の業種と異なり、工事という長期プロジェクトを抱えるため「工事原価」と「未成工事支出金」という独自の概念があり、ここを最適化することで大きな節税効果が得られます。

建設業法人が負担する税金の全体像
建設業の法人は以下の税金を負担します。
| 税目 | 計算ベース | 実効税率(中小企業) |
|---|---|---|
| 法人税 | 所得 × 税率 | 15〜23.2% |
| 地方法人税 | 法人税額 × 10.3% | — |
| 法人住民税 | 法人税額 × 7.0%(標準) | — |
| 法人事業税 | 所得 × 税率 | 3.5〜7.0% |
| 消費税 | 売上 × 10%(簡易課税は60%控除) | — |
| 印紙税 | 請負契約書の金額により | 200円〜60万円 |
合計の実効税率は中小企業で約30%、大企業で約34%が目安です。所得3,000万円なら税負担900万円超となり、節税対策の重要性が高まります。
建設業の節税3つの基本アプローチ
- アプローチ①:工事原価の適正計上で課税所得を圧縮
- アプローチ②:設備投資・人件費・共済を活用した法人所得圧縮
- アプローチ③:役員報酬・退職金・多法人スキームで所得分散
節税対策で得られる効果額の目安
年商3億円・所得3,000万円の建設業法人が以下の節税策を組み合わせた場合、年間約500万円以上の税負担軽減が可能です。
| 節税策 | 所得圧縮額 | 節税効果(実効税率30%) |
|---|---|---|
| 中小企業経営強化税制(即時償却) | 1,500万円 | 約450万円 |
| 倒産防止共済(満額) | 240万円 | 約72万円 |
| 役員退職金準備(生命保険等) | 500万円 | 約150万円 |
| 合計 | 2,240万円 | 約672万円 |
工事原価管理で節税|建設業特有の会計処理
建設業の節税対策の核心は、工事原価管理です。一般の業種と異なり、建設業は売上計上のタイミングと費用計上のタイミングを慎重に管理する必要があり、これを最適化することで合法的に課税所得を圧縮できます。

工事原価の4要素(材料費・労務費・外注費・経費)
建設業会計では、工事原価を以下の4要素で分類します。
| 要素 | 具体例 |
|---|---|
| 材料費 | セメント・鉄筋・木材・タイル・配管材・電気部品など |
| 労務費 | 現場作業員の給与・賃金・法定福利費 |
| 外注費 | 下請業者への支払い・一人親方への請負代金 |
| 経費 | 現場運営費・重機リース料・現場保険・運搬費・電力費 |
未成工事支出金で課税繰り延べ
完成前の工事に投じた費用は、原則として「未成工事支出金」として資産計上し、工事完成時に売上原価へ振り替えます。これにより、決算期をまたぐ工事については、課税所得を翌期以降に繰り延べる効果が得られます。
ポイント|未成工事支出金の活用例
3月決算の建設会社が、年度末3月時点で「材料費500万円・外注費300万円・労務費200万円=合計1,000万円」を投じた未成工事を抱えている場合、これらを未成工事支出金として翌期に繰り延べることで、当期の課税所得を1,000万円圧縮できます(実効税率30%なら約300万円の節税)。
完成工事原価報告書の作成
建設業法上、年商1,000万円超の建設業者は完成工事原価報告書の作成が義務付けられています。この報告書は経営事項審査(経審)にも影響するため、税務だけでなく公共工事入札にも関わる重要書類です。
中小企業経営強化税制|重機・車両の即時償却
建設業の経営者にとって最も強力な節税策のひとつが、中小企業経営強化税制による即時償却です。重機・車両・ICT機器などの設備投資を、購入年度に全額損金算入できるため、資金繰りと節税を両立できます。

制度の概要|即時償却または10%税額控除
中小企業者等が「経営力向上計画」の認定を受け、対象設備を取得した場合、以下のいずれかを選択適用できます。
- 即時償却:取得価額の100%を初年度に損金算入
- 税額控除:取得価額の10%(資本金3,000万円超の法人は7%)を法人税額から控除
建設業で対象となる設備
| 類型 | 対象設備 | 建設業での具体例 |
|---|---|---|
| A類型(生産性向上) | 機械装置160万円以上、工具30万円以上 | 油圧ショベル、ブルドーザー、クレーン、測量機器 |
| B類型(収益力強化) | 投資利益率5%以上の設備 | 大型機械、工場設備 |
| D類型(経営資源集約化) | M&A後の経営力向上設備 | 合併後の建機統合投資 |
即時償却シミュレーション|重機3,000万円購入
| 項目 | 通常の減価償却 | 即時償却(経営強化税制) |
|---|---|---|
| 取得価額 | 3,000万円 | 3,000万円 |
| 初年度の損金算入額 | 約500万円(耐用年数6年) | 3,000万円(全額) |
| 初年度の節税効果(実効税率30%) | 約150万円 | 約900万円 |
| 節税額の差 | — | +750万円 |
注意|事前認定が必須
即時償却を活用するには、設備取得「前」に経営力向上計画の認定を受ける必要があります。設備購入後の認定では適用できないため、計画的な準備が重要です。適用期限は令和9年(2027年)3月31日までです。
中小企業投資促進税制|30%特別償却または7%税額控除
中小企業投資促進税制は、経営力向上計画の認定が不要な汎用的な税制優遇措置です。経営強化税制と並ぶ建設業の主要な節税策で、資本金1億円以下の中小企業が対象となります。

制度の概要
取得価額160万円以上の機械装置などの設備投資を行った場合、以下のいずれかを選択適用できます。
- 特別償却:取得価額の30%を初年度に追加で損金算入
- 税額控除:取得価額の7%を法人税額から控除(資本金3,000万円以下のみ)
経営強化税制との違い
| 項目 | 経営強化税制 | 投資促進税制 |
|---|---|---|
| 事前認定 | 必要(経営力向上計画) | 不要 |
| 特別償却率 | 100%(即時償却) | 30% |
| 税額控除率 | 10%(一部7%) | 7% |
| 適用しやすさ | 計画策定の手間あり | 手軽に適用可能 |
どちらを選ぶべきか
計画策定に余裕がある場合は経営強化税制(即時償却)が圧倒的に有利です。一方、決算直前の急な設備投資や、計画認定の手間を避けたい場合は投資促進税制が選択肢になります。
倒産防止共済(経営セーフティ共済)で年240万円損金算入
倒産防止共済は、建設業の連鎖倒産リスクに備えながら、最大年240万円を損金算入できる強力な節税ツールです。建設業は元請倒産による未収金リスクが高い業界のため、節税以外の保険機能も大きなメリットです。

制度の概要
独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営する公的制度で、月額5,000円〜200,000円の範囲で5,000円単位の掛金を選択できます。掛金は法人の必要経費に算入され、解約時には掛金累計の100%(40か月以上加入の場合)が戻ります。
建設業での活用シミュレーション
| 月額掛金 | 年間掛金 | 節税効果(実効税率30%) |
|---|---|---|
| 100,000円 | 1,200,000円 | 約360,000円 |
| 150,000円 | 1,800,000円 | 約540,000円 |
| 200,000円(満額) | 2,400,000円 | 約720,000円 |
建設業での加入メリット
- 節税効果:年最大240万円の損金算入
- 連鎖倒産対応:取引先倒産時に掛金累計の最大10倍まで無担保・無保証で借入可能
- 掛金累計上限:800万円まで積立可能
- 解約時の優遇:40か月以上で掛金累計100%返戻
役員報酬・退職金の最適化で大幅節税
建設業の法人節税で最も影響が大きいのが、役員報酬と退職金の設計です。法人と個人の所得を最適配分し、退職時には大幅な税優遇を活用することで、長期的な節税効果が得られます。

役員報酬の適正水準
役員報酬は法人税と個人所得税のバランスで最適化します。一般的に、法人所得を800万円以下(軽減税率15%適用)に収まる範囲で役員報酬を設定すると、法人と個人の合計税負担が最小化されます。
役員退職金の活用
役員退職金は法人で全額損金算入できる強力な節税策です。さらに、受取人である役員側でも以下の優遇税制が適用されます。
- 退職所得控除:勤続20年超で「800万円+70万円×超過年数」
- 1/2課税:退職所得控除後の金額の1/2のみが課税対象
- 分離課税:他の所得と合算されず、独立した税率計算
退職金原資の準備|倒産防止共済との組み合わせ
倒産防止共済の解約返戻金を、役員退職金の原資に充てるのが定番の節税スキームです。共済加入中は損金算入で節税し、退職時に解約返戻金を受け取り、それを退職金として支給することで、再度損金算入できる「二重節税」が実現します。
短期前払費用と賃上げ促進税制で攻めの節税
決算直前の節税策として活用できるのが、短期前払費用の特例と賃上げ促進税制です。建設業は人手不足が深刻なため、賃上げ促進税制との相性が特に良い業種です。

短期前払費用の特例
翌期以降に提供されるサービスの前払費用のうち、1年以内にサービス提供を受けるものは、支払った事業年度に全額経費計上できます。建設業で活用しやすいのは以下の支出です。
- 事務所家賃の年払い
- 保険料の年払い(業務災害保険・賠償責任保険)
- システム利用料の年払い(建設業向けクラウド会計・施工管理システム)
- 会費の年払い(建設業協会・商工会議所)
賃上げ促進税制の概要
中小企業向け賃上げ促進税制は、給与等支給額の前年度比増加率に応じて最大45%の税額控除が受けられる制度です。
| 賃上げ率(前年比) | 基本控除率 |
|---|---|
| 1.5%以上 | 15% |
| 2.5%以上 | 30% |
| +教育訓練費10%以上増 | +10% |
| +両立支援・女性活躍認定 | +5% |
| 最大合計 | 45% |
建設業での活用例
給与総額1億円の建設業法人が前年比3%(300万円)の賃上げを実施した場合、賃上げ額300万円×30%=90万円の税額控除が受けられます。教育訓練費を10%増加させれば、さらに30万円が上乗せされ合計120万円の節税となります。
売上規模別シミュレーション|年商1億・3億・10億円
建設業の節税効果は、年商規模により大きく変動します。ここでは典型的な3つの売上規模ごとに、節税策の組み合わせと実質節税額をシミュレーションします。

ケース1|年商1億円・所得1,000万円
| 節税策 | 所得圧縮額 |
|---|---|
| 中小企業投資促進税制(特別償却) | 300万円 |
| 倒産防止共済 | 240万円 |
| 役員退職金準備 | 200万円 |
| 合計圧縮額 | 740万円 |
| 節税効果(実効税率24%) | 約178万円 |
ケース2|年商3億円・所得3,000万円
| 節税策 | 所得圧縮額 |
|---|---|
| 中小企業経営強化税制(即時償却) | 1,500万円 |
| 倒産防止共済(満額) | 240万円 |
| 賃上げ促進税制(給与1億円の3%増) | 90万円(税額控除) |
| 役員退職金準備 | 500万円 |
| 合計効果 | — |
| 節税効果(実効税率30%) | 約760万円 |
ケース3|年商10億円・所得1億円
| 節税策 | 所得圧縮額 |
|---|---|
| 中小企業経営強化税制(複数設備の即時償却) | 5,000万円 |
| 倒産防止共済(満額) | 240万円 |
| 賃上げ促進税制(給与3億円の3%増) | 270万円(税額控除) |
| 役員退職金準備+多法人スキーム | 2,000万円 |
| 合計効果 | — |
| 節税効果(実効税率34%) | 約2,750万円 |
タックスコンサルティングが選ばれる理由|建設業の節税最適化
建設業の節税対策は、工事原価管理・設備投資判断・共済設計・賃上げ計画と多岐にわたり、業界を熟知した専門家のサポートが不可欠です。税理士法人ディライトソリューションズのタックスコンサルティングが選ばれる理由をご紹介します。
建設業会計の専門知識
工事原価管理、未成工事支出金、完成工事原価報告書、経営事項審査(経審)対応など、建設業特有の会計実務に精通したアドバイスを提供します。建設業財務諸表の作成代行・経審対策も対応可能です。
設備投資の節税最適化
重機・車両・ICT機器の購入計画を踏まえ、経営力向上計画の認定取得から即時償却の適用まで一気通貫でサポート。投資タイミング・金融機関交渉・補助金活用も総合的にコンサルティングします。
多法人スキームの設計
年商10億円超の建設業向けに、元請会社・施工会社・人材会社・不動産保有会社などの多法人スキームを設計。所得分散・消費税対策・事業承継までトータルで支援します。
初回相談は無料|建設業専門窓口
建設業の節税対策・工事原価管理・経審対応・法人化検討について、初回相談は無料で承っております。業界経験豊富な税理士が直接対応します。
よくある質問(FAQ)
建設業特有の経費計上で見落とされやすいポイントは?
建設業では「工事原価」と「販売費及び一般管理費」の区別が重要です。現場経費(材料費・労務費・外注費・現場諸経費)は工事原価として原則として未成工事支出金に計上し、工事完成時に売上原価へ振り替えます。本社経費は販管費として期中に費用処理します。この区別を誤ると利益操作と判断されるため、税理士のサポートが推奨されます。
工事完成基準と工事進行基準のどちらが節税に有利ですか?
短期的な節税効果は工事完成基準(売上計上を完成時まで繰り延べる)の方が有利な場合が多いです。ただし、工事期間1年以上かつ請負金額10億円以上の長期大規模工事は工事進行基準が強制適用されます。新収益認識基準(2021年4月以降)の適用範囲となる中小企業は会計処理を税理士と慎重に検討する必要があります。
一人親方への外注費はどう処理すれば税務調査で指摘されませんか?
外注費として処理するには「請負契約の締結」「報酬の出来高払い(時給制ではない)」「指揮命令を受けない独立性」「工具・材料の自己負担」などの実態が必要です。実態が雇用に近い場合は給与認定され、源泉徴収・社会保険・消費税の追徴リスクが発生します。請負契約書・業務日報・支払明細を整備し、税理士に契約形態を事前確認しましょう。
重機の中古購入でも即時償却の対象になりますか?
中小企業経営強化税制および中小企業投資促進税制は、原則として新品の機械装置のみが対象です。中古重機は対象外となります。ただし、減価償却の耐用年数を残存年数で短縮できるため、初年度の減価償却費が大幅に増えるメリットがあります。新品か中古かは資金繰りと節税効果を総合判断する必要があります。
倒産防止共済と小規模企業共済は両方加入できますか?
はい、両制度の併用は可能です。倒産防止共済は法人の必要経費(最大年240万円)、小規模企業共済は個人の所得控除(最大年84万円・役員加入)と性質が異なります。建設業の法人経営者は両方加入することで、法人税と個人所得税の両方を圧縮できます。
建設業の賃上げ促進税制はどう活用すれば最大効果を得られますか?
中小企業向け賃上げ促進税制は、給与等支給額の前年度比1.5%以上増加で15%、2.5%以上で30%、教育訓練費10%以上増加で+10%、両立支援・女性活躍で+5%、最大45%の税額控除が受けられます。建設業は人手不足が深刻で賃上げ需要が高いため、特に活用効果が大きい制度です。
建設業の法人税顧問料の相場はどれくらいですか?
年商規模により異なりますが、年商5,000万円以下:年間30〜50万円、年商5,000万〜2億円:年間50〜100万円、年商2億円超:年間100〜200万円が目安です。建設業会計(工事原価管理・建設業財務諸表)に対応できる税理士を選ぶことが重要で、節税効果が顧問料を大きく上回るケースが多いです。
多法人スキーム(複数の会社を使った節税)は建設業で有効ですか?
年商10億円超の建設業では多法人スキームが有効な場合があります。元請け会社・施工会社・人材会社・不動産保有会社などに分割することで、所得分散・消費税対策・経営者退職金の最適化が図れます。ただし、実態のない法人は税務否認されるため、各法人に独自の事業実態と従業員配置が必要です。専門家の設計が必須です。
まとめ|建設業の法人が今すぐ取り組むべき節税アクション
本記事では、建設業の法人向け節税対策を、工事原価管理から多法人スキームまで包括的に解説しました。
| 節税策 | 効果額の目安(年間) | 難易度 |
|---|---|---|
| 工事原価・未成工事支出金の最適化 | 100〜500万円 | ★★ |
| 中小企業経営強化税制(即時償却) | 300〜2,000万円 | ★★★ |
| 中小企業投資促進税制 | 50〜300万円 | ★ |
| 倒産防止共済(満額) | 72〜103万円 | ★ |
| 役員報酬・退職金最適化 | 100〜500万円 | ★★ |
| 賃上げ促進税制 | 30〜500万円 | ★★ |
| 短期前払費用の特例 | 20〜100万円 | ★ |
建設業の節税は、業界特有の会計処理を理解した上で、設備投資・共済・人件費・退職金準備を総合的に組み合わせることがポイントです。一つひとつの節税策の効果額は中程度でも、組み合わせによって年間数百万円〜数千万円の税負担軽減が実現します。専門家との相談を通じて、長期的に最適な節税ポートフォリオを設計することが、建設業経営の成功への近道です。
税理士法人ディライトソリューションズのタックスコンサルティングでは、建設業の法人向けに、節税診断・確定申告サポート・経営強化計画認定支援・多法人スキーム設計まで、ワンストップでご支援しています。初回相談は無料です。
出典・参考文献
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