「顧問料だけでは事務所の成長に限界がある」「顧問先から節税の相談を受けるが、具体的な商品提案ができない」——こうした悩みを抱える会計事務所が増えています。
実は、会計事務所は節税商品を取り扱う最も有利なポジションにあります。顧問先の決算データを把握し、経営者との信頼関係があり、税務の専門知識を持つ——この3つの強みを活かせば、顧問料に依存しない新たな収益の柱を構築できるのです。
本記事では、会計事務所が取り扱える節税商品の種類・収益モデル・必要資格から、顧問先への提案方法・リスク管理まで、実務で使える完全ガイドをお届けします。
なぜ会計事務所が節税商品を取り扱うべきなのか

会計事務所が節税商品の取り扱いを検討すべき理由は、外部環境の変化と事務所経営の両面にあります。
会計事務所を取り巻く経営環境の変化
- 顧問料の価格競争:クラウド会計の普及により記帳代行の単価が下落。月額顧問料3〜5万円が相場に
- 防衛特別法人税の導入:2026年4月から法人税額×4%が追加され、企業の節税ニーズが急増
- 顧問先の期待値の変化:「税務申告だけでなく、節税や経営の相談にも乗ってほしい」という要望の増加
- 他士業との競争:FP・経営コンサルタントが節税提案を行い、会計事務所の領域に進出
会計事務所だからこそ有利な3つの強み
| 強み | 内容 | 他業種との比較 |
|---|---|---|
| 決算データの把握 | 顧問先の利益額・資金繰りをリアルタイムで把握 | 保険営業マンにはない情報 |
| 経営者との信頼関係 | 長年の顧問契約で築いた信頼 | 飛び込み営業より圧倒的に有利 |
| 税務の専門知識 | 節税効果の正確な試算・税務リスクの判断が可能 | FPでは税務判断に限界 |
取り扱いによる事務所経営へのインパクト
節税商品の取り扱いは、単なる副収入にとどまりません。
- 顧問料の維持・値上げ:「節税提案もしてくれる事務所」として付加価値が向上
- 顧問先の離脱防止:他の保険営業マンやFPに顧問先を奪われるリスクを低減
- 職員のモチベーション:成果報酬型のインセンティブで職員の収入アップが可能
会計事務所が取り扱える節税商品の全体像

会計事務所が取り扱える節税商品は、大きく4つのカテゴリに分類できます。
カテゴリ1:法人保険(生命保険・損害保険)
| 保険種類 | 節税の仕組み | 手数料率 | 必要資格 |
|---|---|---|---|
| 逓増定期保険 | 保険料の一部を損金算入、解約返戻金で退職金準備 | 初年度40〜60% | 保険募集人 |
| 長期平準定期保険 | 長期にわたり損金算入、安定した返戻率 | 初年度30〜50% | 保険募集人 |
| 養老保険(ハーフタックス) | 保険料の1/2を損金算入、福利厚生と節税を両立 | 初年度25〜40% | 保険募集人 |
| 経営者保険(がん・医療) | 保険料の全額または一部を損金算入 | 30〜50% | 保険募集人 |
法人保険は会計事務所が最も取り扱いやすい商品です。保険募集人資格さえ取得すれば販売でき、継続報酬(ストック収入)も得られます。
カテゴリ2:オペレーティングリース
| リース対象 | 初年度損金算入率 | 手数料率 | 最低出資額 |
|---|---|---|---|
| 航空機 | 70〜80% | 出資額の3〜5% | 3,000万円〜 |
| コンテナ | 60〜70% | 出資額の3〜5% | 1,000万円〜 |
| 船舶 | 50〜70% | 出資額の2〜4% | 5,000万円〜 |
オペレーティングリースは1件あたりの手数料が高額ですが、出資額が大きいため利益の大きい法人向けです。紹介のみなら資格不要です。
カテゴリ3:不動産小口化商品
不動産小口化商品は、500万円〜1,000万円の小口投資で不動産の減価償却メリットを享受できる商品です。相続税対策にも有効で、手数料率は販売額の3〜8%が一般的です。
カテゴリ4:即時償却型商品
| 商品 | 節税の仕組み | 手数料率 | 投資額目安 |
|---|---|---|---|
| コインランドリー | 中小企業経営強化税制で即時償却 | 5〜10% | 2,000〜4,000万円 |
| IoT自販機 | 中小企業経営強化税制で即時償却 | 8〜15% | 500〜1,500万円 |
| LED照明レンタル | 即時償却+省エネ効果 | 5〜10% | 300〜1,000万円 |
決算直前の法人に提案しやすく、「今期の利益をすぐに圧縮したい」というニーズに応えられます。
取り扱い方法は3つ:販売・紹介・情報提供の違い

会計事務所が節税商品を取り扱う方法は、3つの形態があります。事務所の方針やリスク許容度に応じて選択しましょう。
形態1:自社販売(代理店契約)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 概要 | 保険会社等と代理店契約を締結し、自ら販売する |
| 必要資格 | 保険募集人資格(生保・損保) |
| 手数料率 | 最も高い(販売額の15〜60%) |
| 責任 | 契約説明義務・アフターフォロー義務あり |
| 向いている事務所 | 職員10名以上、保険部門を設置できる事務所 |
形態2:紹介(取次ぎ契約)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 概要 | 顧問先をメーカーの営業担当に紹介し、紹介手数料を受け取る |
| 必要資格 | 原則不要 |
| 手数料率 | 中程度(販売額の5〜20%) |
| 責任 | 紹介のみで契約責任なし |
| 向いている事務所 | 小規模事務所、まず試したい事務所 |
形態3:情報提供(コンサルティング)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 概要 | 顧問先に節税商品の情報を提供し、顧問料に上乗せ |
| 必要資格 | 税理士資格のみ |
| 手数料率 | なし(顧問料アップで回収) |
| 責任 | 税務アドバイスの範囲内 |
| 向いている事務所 | 商品販売に抵抗がある事務所 |
おすすめは「紹介」からのスタートです。資格不要・責任最小限で始められ、実績を積んでから代理店契約に移行できます。
【収益シミュレーション】節税商品の取り扱いでいくら稼げる?

会計事務所が節税商品を取り扱った場合の収益を、3つのモデルでシミュレーションします。
モデルA:紹介のみ(小規模事務所・顧問先30社)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 取扱商品 | 法人保険の紹介(年間保険料200万円の案件) |
| 紹介手数料率 | 10% |
| 年間紹介件数 | 6件(月0.5件、顧問先30社の20%が契約) |
| 年間追加収入 | 200万円 × 10% × 6件 = 年間120万円 |
| 所長の稼働 | 月2〜3時間程度(決算時に提案するだけ) |
モデルB:保険代理店(中規模事務所・顧問先100社)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 取扱商品 | 逓増定期保険(年間保険料300万円の案件) |
| 代理店手数料率 | 初年度40%、2年目以降10% |
| 年間新規契約 | 12件(月1件) |
| 初年度手数料 | 300万円 × 40% × 12件 = 年間1,440万円 |
| 2年目以降ストック | 300万円 × 10% × 12件 = 年間360万円(累積) |
| 3年目の総収入 | 新規1,440万円 + ストック720万円 = 年間2,160万円 |
モデルC:複合型(大規模事務所・顧問先300社)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 取扱商品 | 保険+リース+即時償却型を組み合わせ |
| 年間新規契約 | 保険24件+リース6件+即時償却12件 |
| 年間手数料合計 | 保険2,880万円+リース900万円+即時償却720万円 |
| 合計 | 年間4,500万円(+ストック収入) |
モデルAの「紹介のみ」でも年間120万円の追加収入。職員1名分の賞与に相当する金額が、所長の月2〜3時間の稼働で得られます。
必要な資格と届出:取り扱い形態別の一覧

節税商品の取り扱い方法によって、必要な資格・届出が異なります。
保険商品の取り扱い
| 取り扱い方法 | 必要資格 | 取得方法 | 取得期間 |
|---|---|---|---|
| 自社販売(代理店) | 保険募集人資格(生保・損保) | 各保険会社の研修+試験 | 1〜3ヶ月 |
| 紹介のみ | 不要 | — | — |
金融商品(リース・ファンド等)の取り扱い
| 取り扱い方法 | 必要資格 | 取得方法 | 取得期間 |
|---|---|---|---|
| 自社販売(仲介) | 金融商品仲介業の登録 | 財務局への登録申請 | 3〜6ヶ月 |
| 紹介のみ | 不要 | — | — |
即時償却型商品・不動産の取り扱い
| 取り扱い方法 | 必要資格 | 備考 |
|---|---|---|
| 紹介のみ | 不要 | 紹介契約書の締結を推奨 |
| 不動産仲介 | 宅地建物取引士 | 事務所での兼業は少数 |
紹介(取次ぎ)であれば、どの商品カテゴリも資格不要で始められるのが大きなポイントです。
顧問先への提案方法:信頼を損なわない節税商品の勧め方

会計事務所が節税商品を提案する際、最も重要なのは顧問先との信頼関係を維持することです。
提案のベストタイミング
- 決算3ヶ月前:利益予測が固まり、節税対策の検討を始める時期
- 決算月:「今期中に手を打ちたい」という経営者の意欲が最も高い
- 事業承継の相談時:退職金準備や株価対策として自然に提案できる
- 設備投資の相談時:即時償却型商品を「投資+節税」として提案
提案の3ステップ
- 現状分析:顧問先の決算データから「節税余地」を数値で示す(例:「今期の利益2,000万円のうち、800万円は対策可能です」)
- 選択肢の提示:2〜3の商品を比較表で提示(1つだけの提案は「売り込み」に見える)
- メーカー紹介:興味を持った商品のメーカー営業を紹介し、詳細説明は専門家に任せる
絶対にやってはいけないNGパターン
- 全顧問先に一斉営業:「金儲けに走った」と見られ、顧問契約解除のリスク
- 資金繰りを無視した提案:利益が出ていても手元資金がない法人に高額商品を勧めない
- 1社だけの保険会社を押し付ける:「癒着」と思われるため、複数社を比較提示
- 税理士法に抵触する行為:税務顧問としての中立性を損なう過度な販売活動
税理士法・保険業法との関係:法的リスクの整理

会計事務所が節税商品を取り扱う際、法的な制約を正しく理解しておくことが不可欠です。
税理士法上の注意点
| 行為 | 税理士法との関係 | 判断 |
|---|---|---|
| 顧問先に節税商品の情報を提供 | 税務顧問業務の一環 | 問題なし |
| 保険代理業を兼業 | 税理士の業務外だが兼業は可能 | 問題なし(届出推奨) |
| 手数料の受領 | 業務外報酬として受領可能 | 問題なし(会計処理は適正に) |
| 顧問先の利益に反する提案 | 信用失墜行為に該当する可能性 | 注意が必要 |
保険業法上の注意点
- 保険募集人資格なしでの販売行為は保険業法違反(紹介のみなら問題なし)
- 「節税」を前面に出した保険勧誘は、2019年の国税庁通達改正以降、保険会社からも自粛を求められている
- 比較推奨義務:乗合代理店の場合、複数社の比較・推奨理由の説明が必要
リスク回避のための3つの原則
- 顧客本位の業務運営:顧問先の利益を最優先にし、手数料の高い商品に偏らない
- 税務顧問と販売の分離:可能であれば、税務担当者と保険担当者を分ける
- 記録の徹底:提案経緯・顧客の意思決定プロセスを文書化し、後日のトラブルに備える
節税商品の取り扱いを始める5ステップ

会計事務所が節税商品の取り扱いを開始するための具体的な手順です。
ステップ1:取り扱い方針の決定
まず、事務所として「販売」「紹介」「情報提供」のどの形態で取り扱うかを決めます。初めての場合は「紹介」からスタートするのがおすすめです。
ステップ2:パートナー(メーカー)の選定
取り扱う商品のメーカーや総代理店を選びます。選定のポイントは以下の通りです。
- 設立5年以上の実績ある企業
- 税理士・会計事務所向けの支援プログラムがあること
- 研修・勉強会の提供があること
- 過去に税務否認された事例がないこと
ステップ3:契約締結と社内体制の構築
メーカーとの代理店契約または紹介契約を締結し、社内での取り扱いルールを定めます。
- 担当者の選定(所長自ら or 専任職員)
- 顧問先への提案基準(利益○○万円以上の法人に限定、等)
- 手数料の分配ルール(事務所取り分と担当者インセンティブ)
ステップ4:顧問先リストの整理と優先順位付け
既存顧問先から、節税ニーズの高い法人をリストアップします。
| 優先度 | 条件 | 提案商品例 |
|---|---|---|
| 最優先 | 決算前3ヶ月以内、利益3,000万円以上 | オペレーティングリース、法人保険 |
| 優先 | 利益1,000〜3,000万円、退職金準備なし | 逓増定期保険、即時償却型商品 |
| 通常 | 利益500〜1,000万円 | 養老保険、LED照明 |
ステップ5:提案の実行と振り返り
優先順位の高い顧問先から提案を開始し、四半期ごとに成果を振り返ります。成約率・顧問先の反応をデータ化し、提案方法を改善していきましょう。
よくある質問(FAQ)
Q. 会計事務所で取り扱える節税商品にはどんな種類がありますか?
A. 法人保険(逓増定期保険・養老保険等)、オペレーティングリース(航空機・コンテナ・船舶)、不動産小口化商品、即時償却型商品(コインランドリー・IoT自販機)、経営セーフティ共済、中小企業退職金共済などが代表的です。
Q. 税理士が保険代理店をしても問題ありませんか?
A. 問題ありません。税理士法上、保険代理業は業務外ですが兼業は認められています。ただし、保険募集人資格の取得が必要で、顧問先の利益を最優先にした提案が重要です。
Q. 節税商品の取り扱いで会計事務所はどのくらい収益を得られますか?
A. 紹介のみの小規模事務所で年間120万円、保険代理店の中規模事務所で年間1,400万円以上、複合型の大規模事務所で年間4,500万円以上の追加収入が見込めます。
Q. 節税商品を取り扱う際に必要な資格や届出はありますか?
A. 紹介のみなら原則資格不要です。保険の直接販売には保険募集人資格、金融商品の販売には金融商品仲介業の登録が必要です。
Q. 顧問先に節税商品を提案する際のリスクは?
A. 主なリスクは、税制改正による節税効果消滅、過度な提案による信頼喪失、商品説明不十分な場合の損害賠償の3つです。顧問先の財務状況を踏まえた適切な提案が必須です。
Q. 節税商品の取り扱いを始めるにはどうすればよいですか?
A. まず取り扱い方針を決め、パートナー(メーカー)を選定し、契約を締結します。紹介からスタートし、実績を積んでから代理店契約に移行するのがおすすめです。
まとめ:会計事務所の節税商品取り扱いで経営基盤を強化しよう
本記事のポイントを整理します。
| 項目 | 要点 |
|---|---|
| 取り扱える商品 | 法人保険・オペレーティングリース・不動産小口化・即時償却型の4カテゴリ |
| 取り扱い形態 | 販売(代理店)・紹介・情報提供の3形態。紹介からスタートがおすすめ |
| 収益モデル | 紹介のみで年120万円、代理店で年1,400万円、複合型で年4,500万円 |
| 必要資格 | 紹介のみなら資格不要。販売は保険募集人資格等が必要 |
| 提案のコツ | 決算3ヶ月前がベスト。2〜3商品を比較提示し、売り込み感を出さない |
| 法的注意点 | 顧客本位の業務運営、税務顧問と販売の分離、記録の徹底 |
会計事務所は、顧問先の決算データ・信頼関係・税務知識という他業種にはない圧倒的な強みを持っています。この強みを活かして節税商品を取り扱えば、顧問料に依存しない安定した収益基盤を構築できます。
当社では、会計事務所向けの節税商品取り扱い支援を行っています。商品選定・提案方法・契約締結までワンストップでサポートいたします。
関連記事:
