タックスコンサルティング

決算前の節税は何が間に合うか|残り日数別にできること

決算前の残り日数別にできる節税策を仕分けた図

決算まであと1か月を切ったが、利益が想定より出ていて何か手を打ちたい。ただ今から間に合うものが何なのか分からず、慌てて設備を買ってよいのかも判断できない。

残り日数で打てる手は変わります。現金が出ないものは期末日まで打てます。決算賞与は期末までに全員へ通知すれば間に合います。設備投資は事業に使い始めるところまでが期限です。経営強化税制のように事前の認定が要るものは、いまからでは間に合いません。

この記事でわかること

  • 残り日数でできることがどう変わるか
  • 現金を使わずに打てる手
  • 決算賞与を間に合わせる3つの要件
  • 設備投資が間に合う条件
  • いまからでは間に合わないもの
  • 決算日を過ぎてからできること

残り日数で何が打てるか確認しませんか

決算月と利益の見込みが分かれば、間に合う手を具体的に絞り込めます。

無料相談フォームへ

目次

残り日数で打てる手は変わる

決算までの残り日数別に打てる節税策を仕分けた図

まず自分がどの段階にいるかを確認します。ここを間違えると空振りします。

現金が出ないものは期末日まで打てる

帳簿の見直しでできるものは、決算日当日まで打てます

未払費用の計上、不要になった資産の除却、回収不能な債権の処理。どれも現金は出ません。

手をつける順番はここが最初です。現金を使う対策を検討するのは、これを終えてからにしてください。

決算賞与は期末までの通知が期限

使用人賞与は、期末日までに各人別に通知していれば未払でも損金にできます。

支払いは翌日から1か月以内で構いません。通知が期末に間に合えば、資金の手当ては期をまたげます。

ただし要件が3つあり、ひとつでも欠けると翌期の損金になります。詳しくは後述します。

設備投資は使い始めるまでが期限

設備は買っただけでは足りず、事業に使い始めた日で判定します

納品が期末ぎりぎりでも、設置して稼働させていなければその期の損金になりません。輸送と据付の日程を逆算してください。

経営強化税制のように事前の認定が必要な制度は、この段階からでは間に合いません。

残り日数 打てる手
1か月以上 設備投資、決算賞与、短期前払費用、すべて可能
2週間程度 決算賞与の通知、現金が出ない対策
1週間以内 未払費用の計上、除却、貸倒損失
決算日以後 帳簿の締めと申告の精度を上げる

現金を使わずにできること

現金を使わずに損金を計上できる決算前の対策を示した図

最優先はここです。資金繰りを痛めずに課税所得を下げられます。

未払費用を計上する

期末までに債務が確定している費用は、支払いが翌期でも当期の損金です。

社会保険料の会社負担分、未払の給与、決算日までに提供を受けた外注費や広告費が該当します。

請求書が届いていなくても、役務の提供が終わっていて金額が算定できるなら計上できます。取引先に締め日の確認をしてください。

使わない固定資産を除却する

物理的に廃棄していなくても、使用を廃止し今後通常の方法により事業の用に供する可能性がないと認められる固定資産は除却損にできます。

帳簿価額から処分見込価額を控除した金額を損金にします。有姿除却と呼ばれる扱いです。

使わなくなった機械やソフトウェアが帳簿に残っていないか、固定資産台帳を洗ってください。稼働停止の記録と写真を残します。

回収できない債権を落とす

取引先の状況によっては、貸倒損失として損金にできる場合があります。

法律上の手続きで切り捨てられた金額、回収不能が明らかになった場合、一定期間取引がない売掛債権など、要件は場合ごとに分かれます。

根拠となる資料が必要です。督促の記録や相手方の状況が分かるものを揃えてから判断してください。

根拠となる資料が必要です。督促の記録や相手方の状況が分かるものを揃えてから判断してください。

出典: 国税庁 法人税基本通達 第1款 除却損失等の損金算入

押さえておきたい点

現金が出ない対策は、実行しても資金繰りが悪化しません。設備投資を検討する前に、まずここを洗い切ってください。

決算賞与は3つの要件で決まる

決算賞与を未払でも損金にするための3つの要件を示した図

期末に間に合わせやすい手ですが、要件が厳格です。ひとつ欠けると翌期送りになります。

全員に各人別の金額を通知する

その支給額を、各人別に、かつ同時期に支給を受けるすべての使用人に対して通知していることが必要です。

一部の人だけに伝えた、総額だけ決めて個別の金額は後で、という形では要件を満たしません。

通知した事実を残してください。書面で交付して受領印をもらうのが確実です。メールでも記録は残ります。

翌日から1か月以内に支払う

通知した金額を、通知をした日の属する事業年度終了の日の翌日から1か月以内に支払っていることが必要です。

3月決算なら4月末までです。資金の目処が立たないなら、無理に通知しないほうが安全です。

支給日に在籍していることを条件にすると、要件を満たさないと判断されることがあります。支給条件の書き方に注意してください。

当期に損金経理する

その支給額につき通知をした日の属する事業年度において損金経理していることが必要です。

未払賞与として費用に計上します。帳簿に載せていなければ、通知も支払いも要件を満たしていても損金になりません。

決算整理仕訳のときに漏れやすい項目です。通知した金額と一致しているかを確認してください。

決算整理仕訳のときに漏れやすい項目です。通知した金額と一致しているかを確認してください。

出典: 国税庁 タックスアンサー No.5350 使用人賞与の損金算入時期

押さえておきたい点

3つの要件はすべて満たす必要があります。ひとつでも欠けると、実際に支払った翌期の損金になります。

短期前払費用は継続が条件

短期前払費用として当期の損金にできる要件を示した図

年払いにまとめて当期の損金にする手です。使えるものと使えないものがあります。

支払った日から1年以内の役務

対象になるのは、支払った日から1年以内に提供を受ける役務に係るものです。

家賃、保険料、会費、保守料などが典型です。期末に翌年1年分をまとめて払えば、その全額を当期の損金にできます。

1年を超える期間の前払いは対象外です。2年分をまとめて払っても、当期の損金になるのは対応する部分だけです。

継続して同じ処理をする

その支払った額に相当する金額を継続してその支払った日の属する事業年度の損金の額に算入していることが要件です。

今年だけ年払いにして来年は月払いに戻す、という使い方はできません。利益が出た年だけ使うことを想定した制度ではないためです。

初めて採用する年は認められますが、その後も同じ処理を続ける必要があります。翌期以降の資金繰りも見て決めてください。

収益と対応するものは対象外

借入金を運用して利息を得ているような、収益の計上と対応させる必要があるものは除かれます。

支払利子がその典型です。1年以内であっても短期前払費用としての損金算入は認められません。

売上と直接ひも付く仕入や外注も、この考え方で判断されます。費用の性格を確認してください。

売上と直接ひも付く仕入や外注も、この考え方で判断されます。費用の性格を確認してください。

出典: 国税庁 タックスアンサー No.5380 短期前払費用として損金算入ができるものの範囲

押さえておきたい点

初年度は12か月分が上乗せで損金になりますが、翌年以降は毎年12か月分に戻ります。効果があるのは導入した年だけです。

自社の場合はどうなるか確認しませんか

決算期と利益の見込みが分かれば、使える制度と実行時期を具体的に整理できます。

自社のケースを相談する

設備投資は使い始めるまでが期限

決算前の設備投資が損金になる条件と事業供用日を示した図

いちばん金額の大きい対策ですが、期限の考え方を間違えると空振りします。

納品ではなく事業供用日で判定する

設備を損金にできるのは、取得して事業の用に供した日を含む事業年度です。

期末に発注して代金を払っても、箱に入ったまま決算日を越えたなら当期の損金にはなりません。

納品、設置、試運転、稼働開始。この日程を決算日から逆算してください。年度末は工事業者も混みます。

40万円未満なら特例で全額

青色申告の中小事業者なら、取得価額40万円未満の資産を年300万円まで全額を損金にできます。

令和8年4月1日以後に取得するものから、基準が30万円未満から40万円未満に引き上げられました。

パソコンや業務用の機器はこの枠に収まることが多くなっています。決算前の駆け込みで使いやすい制度です。

認定が要る制度は間に合わない

中小企業経営強化税制のように事前に計画の認定を受ける必要がある制度は、決算間際からでは使えません。

認定には申請から一定の期間がかかります。設備を取得する前に手続きを終えている必要があります。

来期以降に大きな設備投資を予定しているなら、いまから逆算して準備してください。決算対策としては次の期の話になります。

設備の金額 使える方法 期限
10万円未満 全額を損金 事業に使い始めた日
10万円以上20万円未満 一括償却資産(3年均等) 事業に使い始めた日
40万円未満 少額減価償却資産の特例 事業に使い始めた日
40万円以上 通常の減価償却 事業に使い始めた日
経営強化税制の対象設備 即時償却または税額控除 取得前に計画の認定

来期以降に大きな設備投資を予定しているなら、いまから逆算して準備してください。決算対策としては次の期の話になります。

出典: 国税庁 タックスアンサー No.2100 減価償却のあらまし

いまからでは間に合わないもの

決算間際からでは間に合わない節税策を示した図

先に切り分けておくと、無駄な検討をせずに済みます。

事前の認定や届出が要る制度

経営強化税制のほか、適用を受ける前に申請や届出が必要な制度は使えません。

中小企業経営強化税制は経営力向上計画の認定が前提です。青色申告の承認申請も、適用したい事業年度の開始日の前日までが期限です。

これらは来期の話として計画に入れてください。決算間際に発見しても取り返せません。

役員報酬の変更

定期同額給与は事業年度開始から3か月以内に決めた金額を動かさないことが前提です。

期末に役員報酬を増やしても、増えた部分は損金になりません。利益調整の手段として使えないということです。

役員賞与も原則として損金になりません。事前確定届出給与は、あらかじめ届出をしている場合に限られます。

共済への加入

経営セーフティ共済などは加入の手続きと引き落としに時間がかかります

申込みから掛金の払込みまでのリードタイムがあり、決算月に思い立っても当期に間に合わないことがあります。

前納制度を使えばまとめて損金にできますが、それも手続きの締切に間に合うことが前提です。

押さえておきたい点

間に合わないものを無理に押し込もうとすると、要件を満たさないまま計上して否認されます。切り分けて来期の計画に回してください。

打てる手ごとに減る税額

決算前の各対策で減る税額と出ていく現金を比べた図

金額と現金の出入りを並べると、優先順位がはっきりします。

現金が出ない対策は丸ごと得

未払費用を100万円計上すれば、実効税率30%として約30万円の税負担が減ります

現金の流出はありません。同じ30万円の効果でも、設備を買う場合とは意味がまったく違います。

有姿除却で簿価200万円を落とせば約60万円です。台帳を洗うだけで生まれる効果としては大きくなります。

設備投資は現金のほうが多く出る

300万円の設備を即時償却しても、減る税金は約90万円で、出ていく現金は300万円です。

差引で210万円のキャッシュが減ります。必要な設備を前倒しで買う判断ならよいのですが、税金のためだけに買うのは逆効果です。

翌期以降の減価償却費がなくなる点も忘れないでください。総額の税負担は変わりません。

決算賞与は資金の手当てを翌期にできる

期末に通知して翌月に払えば、損金は当期、支出は翌期になります。

500万円の決算賞与なら約150万円の税負担が減り、資金が出るのは翌期です。資金繰りの観点では扱いやすい手です。

ただし社会保険料の会社負担分も増えます。総額で見るとおおむね15%程度の上乗せを見込んでください。

対策 損金の額 減る税額の目安 出ていく現金
未払費用の計上 100万円 約30万円 0円
有姿除却 200万円 約60万円 0円
決算賞与 500万円 約150万円 翌期に500万円
設備投資(即時償却) 300万円 約90万円 300万円
この記事の試算の前提

法人税と地方法人税、法人住民税、法人事業税を含む実効税率をおおむね30%として計算した概算です。資本金の額や所得の水準、自治体によって実際の税率は変わります。

残り1か月でやる順番

決算まで残り1か月で節税策を実行する順番を示した図

順序が決まっています。上から順に潰してください。

まず着地の利益を出す

何をするかの前に、決算日時点の利益がいくらになるかを試算します。

月次が締まっているところまでの数字に、残りの月の見込みを乗せます。ここが甘いと対策が過剰になります。

納税額の概算も出してください。資金として用意できるかが、そのあとの判断を左右します。

現金が出ないものを洗い切る

固定資産台帳と売掛金の残高を見て、除却できる資産と落とせる債権を拾います。

同時に、期末までに債務が確定している未払費用を集めます。ここまでは資金繰りに影響しません。

この段階で着地を再計算します。まだ利益が大きいなら、次へ進みます。

そのうえで現金を使う対策を選ぶ

決算賞与、短期前払費用、設備投資。資金繰りに耐えられる範囲で選びます

決算賞与は支出が翌期なので、資金の余裕が薄いときはこちらが先です。設備投資は必要性があるものに限ってください。

実行したら、要件を満たす証拠を残します。通知書、稟議、納品と設置の記録。あとから作れません。

1着地の利益と納税額を試算
2固定資産台帳と債権を洗う
3未払費用を集める
4着地を再計算
5現金を使う対策を選ぶ

疑問点をそのままお持ちください

適用できるかどうかの判定だけでもご利用いただけます。費用はかかりません。

無料相談を申し込む

決算前の節税に関するよくある質問

決算前の節税に関するよくある質問をまとめた図

実務へ落とし込むときに、相談として多く寄せられる論点をまとめます。

決算まで1週間ですが何かできますか?

現金を使わない対策なら決算日当日まで打てます

現金を使わない対策なら決算日当日まで打てます。期末までに債務が確定している未払費用の計上、使わなくなった固定資産の有姿除却、回収不能な債権の貸倒処理です。固定資産台帳と売掛金の残高を洗ってください。

決算賞与は期末までに払わないとだめですか?

支払いは翌日から1か月以内で構いません。

支払いは期末までである必要はありません。期末日までに各人別の金額を全員へ通知し、通知した日の属する事業年度終了の日の翌日から1か月以内に支払い、当期に損金経理していれば損金になります。3月決算なら支払いは4月末までです。

期末に設備を買えば損金になりますか?

買うだけでなく事業に使い始めることが必要です。

買っただけでは足りません。取得して事業の用に供した日を含む事業年度の損金になります。納品されても設置して稼働させていなければ対象外です。年度末は工事業者も混むため、納品と据付の日程を逆算してください。

いまから経営強化税制は使えますか?

事前の認定が必要なので決算間際からでは間に合いません

使えません。中小企業経営強化税制は経営力向上計画の認定を受けたうえで設備を取得することが前提で、認定には申請から一定の期間がかかります。来期以降の設備投資を予定しているなら、いまから逆算して準備してください。

役員報酬を上げて利益を減らせますか?

期末の増額は損金になりません

できません。定期同額給与は事業年度開始から3か月以内に決めた金額を支給し続けることが前提で、期末に増やしても増えた部分は損金になりません。役員賞与も原則として損金にならず、事前確定届出給与は届出をしている場合に限られます。

短期前払費用は毎年使えますか?

効果があるのは導入した年だけです。

継続して同じ処理をすることが要件なので、翌年以降も同じ方法で処理する必要があります。ただし損金が上乗せになるのは導入した年だけで、翌年以降は毎年12か月分に戻ります。利益が出た年だけ使うという想定の制度ではありません。


決算前でも間に合う即時償却ガイドの無料診断

目次