経営強化税制 認定申請の手順|書類・期間・注意点【2026年】

設備投資を決めて即時償却を使うと決めたあと、実際に何をどの順番で出せばよいのかで止まる会社は少なくありません。工業会、経済産業局、主務大臣と関係先が分かれており、しかも順序を間違えると制度そのものが使えなくなります。納期が決まっている設備ほど、この段取りが致命的になります。
順序は、類型の判定、工業会等の証明書または経済産業大臣の確認書の取得、経営力向上計画の申請と認定、設備の取得と事業供用、確定申告での明細添付です。証明書と確認書は設備の取得前に申請する必要があり、認定を受けてから設備を取得するのが原則です。決算の3〜6か月前から動き始めるのが現実的な線になります。
この記事でわかること
- 経営強化税制 認定申請の全体像
- 類型の判定と設備の確定
- 工業会等の証明書を取得する(A類型)
- 経済産業大臣の確認書を取得する(B・D・E類型)
- 経営力向上計画を申請し認定を受ける
経営強化税制 認定申請の全体像

登場する相手が複数いるため、まず役割を整理します。
| 段階 | 手続きの相手 | 得られるもの |
|---|---|---|
| 事前確認(A類型) | 設備メーカー経由で工業会等 | 工業会等による証明書 |
| 事前確認(B・D・E類型) | 税理士・公認会計士 → 経済産業局 | 経済産業大臣の確認書 |
| 計画の申請 | 事業分野の主務大臣 | 経営力向上計画の認定 |
| 設備の取得 | 設備メーカー・販売店 | 設備と証憑 |
| 確定申告 | 所轄の税務署 | 特別償却または税額控除の適用 |
順序を守れないと制度そのものが使えない
工業会等の証明書または経済産業大臣の確認書は、 設備を取得する前に申請しなければなりません 。そのうえで計画の認定を受け、認定後に設備を取得するのが原則の流れです。
設備を先に発注してしまうと、原則として適用を受けられません。商談の初期段階で類型の当たりを付けておくことが重要になります。
類型によって関与する専門家が変わる
A類型は設備メーカー経由で工業会等の証明書を取得しますが、 B・D・E類型は税理士または公認会計士の事前確認書が必要になります 。顧問税理士に早い段階で相談しておくと、B類型以降でも段取りがスムーズです。
現在の類型はA・B・D・Eの4つで、デジタル化設備のC類型は2025年4月1日をもって廃止されています。古い解説を前提に進めないよう注意してください。
適用期限から逆算して着手する
制度の適用期限は2027年3月31日までとされており、 この日までに設備の取得と事業供用まで終えている必要があります 。書類の準備期間を含めると、着手は決算の3〜6か月前が目安になります。
納期の長い設備、証明書の発行に時間がかかる設備ほど、前倒しの検討が必要です。期末の1か月前からでは、ほぼ間に合いません。
納期の長い設備、証明書の発行に時間がかかる設備ほど、前倒しの検討が必要です。期末の1か月前からでは、ほぼ間に合いません。
出典: 中小企業庁|中小企業経営強化税制
類型の判定と設備の確定

最初にどの類型で進めるかを決めます。ここで進め方と所要期間が決まります。
| 類型 | 要件の中心 | 事前確認の相手 |
|---|---|---|
| A類型 | 生産性が旧モデル比で年平均1%以上向上 | 工業会等(メーカー経由) |
| B類型 | 投資利益率が年平均7%以上 | 税理士・公認会計士 → 経済産業局 |
| D類型 | 経営資源集約化に資する設備 | 税理士・公認会計士 → 経済産業局 |
| E類型 | 経営規模拡大に係る投資計画 | 税理士・公認会計士 → 経済産業局 |
まずA類型で取れるかをメーカーに確認する
A類型は工業会等が要件充足を判定するため事業者側の作業が少なく、 証明書が取得できる設備であればA類型で進めるのが最短です 。商談の初期段階で「この型式で経営強化税制の証明書は取れますか」と確認してください。
実績のあるメーカーであれば、型式ごとに証明書の取得可否をすぐ回答してもらえることが多くなっています。取得までの期間も併せて確認しておくと計画が立てやすくなります。
金額基準を満たしているかを同時に確認する
類型の要件とは別に設備の種類ごとの取得価額の基準があり、 機械装置は160万円以上、建物附属設備は60万円以上、ソフトウェアは70万円以上です 。工具と器具備品は30万円以上で、令和8年度改正により40万円以上へ引き上げられます。
判定は資産として計上する1件ごとの取得価額で行います。見積書の合計金額ではない点に注意してください。
生産等設備を構成する新品であることが前提
対象は事業の用に供する生産等設備を構成する資産であり、 中古資産と、主要な事業として行われるものを除く貸付用資産は対象外です 。本社事務所のみで使用する設備や福利厚生施設も対象から外れます。
どの工程で使う設備なのかを説明できる状態にしておくと、計画の記載も申告時の説明もスムーズになります。
工業会等の証明書を取得する(A類型)

A類型の実務は、ほぼメーカーとのやり取りで進みます。
事業者から工業会へ直接申請するわけではない
証明書の発行を依頼する相手は設備メーカーで、 メーカーが工業会等へ申請し、工業会等が要件を確認して証明書を発行します 。事業者側で生産性向上率を計算する必要はありません。
メーカーによっては、あらかじめ型式ごとに証明書を取得済みのケースもあります。その場合は写しを受け取るだけで済み、期間が大幅に短縮されます。
発行までの期間はメーカーと工業会によって差がある
型式ごとに新たに申請が必要な場合、 証明書の発行までに数週間かかることもあります 。この期間を見込まずに納期を決めると、認定が設備の納入に間に合いません。
見積依頼と同時に証明書の取得可否と所要期間を確認しておくと、後の段取りが崩れません。
証明書は計画申請の添付書類になる
取得した証明書の写しを経営力向上計画に添付して申請するため、 証明書がそろわないと計画の申請自体を進められません 。計画書に記載する設備の型式は、証明書と完全に一致させる必要があります。
型式の表記ゆれで差し戻しになることがあります。証明書の記載どおりに転記してください。
経済産業大臣の確認書を取得する(B・D・E類型)

投資計画を作って専門家の確認を受ける、というのがこの類型の実務です。
投資計画を作成し税理士等の事前確認を受ける
事業者が投資計画を作成し、 その内容について税理士または公認会計士の事前確認書を取得する必要があります 。B類型なら投資利益率が年平均7%以上となる見込みであることが要件です。
営業利益と減価償却費の増加額を投資額で割って算定します。計画段階での見込みで判定するため、根拠となる数値の裏づけが求められます。
経済産業局へ提出し説明を行う
事前確認書を添えて本社所在地を管轄する経済産業局へ申請し、 確認申請書の説明はオンラインでも可能とする運用になっています 。提出先は本社所在地を管轄する経済産業局に一元化されています。
A類型より工程が多いぶん、確実に時間がかかります。B類型以降で進める場合は、余裕を持った日程を組んでください。
E類型は少額減価償却資産の特例と併用できない
経営規模拡大設備のE類型を使う場合、 その投資計画の期間中は少額減価償却資産の特例を適用できません 。40万円未満の資産を多く購入する予定がある会社は、事前にどちらを優先するか決める必要があります。
少額減価償却資産の特例には年間合計300万円という上限があります。台数と金額から、どちらが有利かを比較してください。
経営力向上計画を申請し認定を受ける

証明書または確認書がそろったら、計画本体の申請に進みます。
事業分野に応じた主務大臣へ申請する
経営力向上計画の申請先は事業分野ごとに定められており、 自社の事業分野に対応する主務大臣へ提出します 。事業分野と提出先の対応表は中小企業庁が公開しています。
複数の事業を営んでいる場合、どの事業分野で申請するかで提出先が変わります。迷う場合は事前に確認してください。
計画には設備と経営力向上の内容を記載する
取得する設備の内容に加えて、 人材育成やコスト管理など経営力を向上させる取組みを記載する必要があります 。証明書または確認書の写しを添付して申請します。
設備投資のためだけの形式的な書類ではなく、経営計画としての中身が求められます。ただし記載量は膨大ではなく、様式に沿って整理すれば作成できます。
認定までの期間を見込んで日程を組む
申請から認定までには一定の期間がかかるため、 設備の納期と認定のタイミングが逆転しないよう日程を管理してください 。認定を受けてから設備を取得するのが原則の順序です。
電子申請を利用できる場合は期間が短縮されることがあります。所要期間の目安は、申請先へ事前に確認しておくと安全です。
設備を取得し事業供用する

認定が下りたら設備を取得します。ここでも決算日との関係が重要になります。
事業供用日が決算日を過ぎると翌期扱いになる
即時償却できるのは取得しただけでなく事業の用に供した事業年度であり、 決算日までに設置・稼働していなければ当期の損金にはできません 。納品済みでも据付や試運転が終わっていない状態は、事業供用として認められない可能性があります。
工事日程と検収日を契約前に確認してください。ここを落とすと、準備してきた効果がまるごと翌期送りになります。
計画の記載と実際の設備が一致している必要がある
認定を受けた計画に記載した設備と実際に取得した設備が異なる場合、 認定の内容と食い違うため適用が認められないことがあります 。型式変更や仕様変更があった場合は、変更認定が必要かを確認してください。
メーカー都合で後継機種に変わることは実務上よくあります。契約前後の変更は、必ず計画との整合を確認してください。
証憑を一式そろえて保管する
認定書、証明書または確認書の写し、契約書、検収書、設置状況の写真をまとめて保管しておくと、 申告時と税務調査の両方でそのまま使えます 。取得価額の内訳が分かる資料も残しておいてください。
据付費や運搬費などの付随費用を取得価額に含めるかどうかで金額基準の判定が変わることがあります。内訳の分かる見積書と請求書を保管してください。
確定申告で適用を受ける

ここまで進めても、申告書の作成でつまずくと適用を受けられません。
明細書を添付しないと適用を受けられない
特別償却または税額控除の適用を受けるには確定申告書に所定の明細書を添付する必要があり、 添付が漏れると制度そのものが使えません 。経理処理として損金経理していただけでは認められません。
経営力向上計画の認定書の写しも添付書類になります。申告の直前ではなく、決算作業に入る前に必要書類を確認してください。
即時償却と税額控除のどちらかを選んで申告する
同じ設備について両方は使えず、 いったん選択して申告すると後から変更できません 。当期の資金繰りを優先するなら即時償却、合計の税負担を抑えたいなら税額控除が向きます。
税額控除は取得価額の10%(資本金の額等が3,000万円超の法人は7%)ですが、その年の法人税額の20%という上限があります。
よくある失敗と例外的な取扱い

実務で問い合わせが多い論点をまとめます。
設備を先に取得してしまった場合の例外がある
原則は認定後の取得ですが、 設備の取得日から60日以内に経営力向上計画が受理され、事業供用年度内に認定を受けられれば適用が認められる取扱いがあります 。ただしこれは例外であり、令和7年度税制改正の拡充枠についてはこの例外措置は適用されないとされています。
また、工業会等の証明書や経済産業大臣の確認書を設備の取得前に申請する必要がある点は変わりません。例外を前提に段取りを組むのは避けてください。
決算間際に着手して間に合わない
証明書の取得、計画の申請、認定という3段階を踏むため、 決算の1か月前から動き始めても通常は間に合いません 。設備の納期が長い場合はさらに前倒しが必要になります。
決算対策として使うなら、決算の3〜6か月前から着手するのが現実的です。来期の設備投資は、今期のうちに段取りを決めておくと確実です。
型式の表記ゆれで差し戻しになる
計画書に記載する設備の型式は証明書の記載と一致している必要があり、 表記が異なると差し戻しとなり日程が後ろへずれます 。証明書の記載どおりに転記するのが確実です。
差し戻しは日数のロスに直結します。設備の名称、型式、メーカー名は、原本を見ながら転記してください。
経営強化税制 認定申請に関するよくある質問

実務へ落とし込むときに、相談として多く寄せられる論点をまとめます。
認定申請から認定までどのくらいかかりますか?
3段階を踏むため全体で数週間から数か月かかり、 決算の3〜6か月前からの着手が現実的です 。
証明書または確認書の取得、計画の申請、認定という3段階を踏むため、全体では数週間から数か月を見込む必要があります。A類型でメーカーが証明書を取得済みであれば短縮できますが、B類型以降は投資計画の作成と経済産業局への説明が加わるため長くなります。
設備を買ってしまいましたが今から申請できますか?
取得日から60日以内の受理と事業供用年度内の認定という例外はありますが、 拡充枠には適用されず確実な方法ではありません 。
例外として、設備の取得日から60日以内に経営力向上計画が受理され、事業供用年度内に認定を受けられれば適用が認められる取扱いがあります。ただし令和7年度税制改正の拡充枠には適用されず、証明書や確認書を取得前に申請する必要がある点も変わりません。
A類型とB類型のどちらで申請すべきですか?
証明書が取得できるならA類型が短く、 取れない場合にB類型を検討する順序が実務的です 。
工業会等の証明書が取得できる設備であれば、事業者側の作業が少なく期間も短いA類型が実務的です。証明書が取れない場合や、投資計画全体で投資利益率の要件を満たせる場合にB類型を検討します。まずメーカーへの確認が出発点です。
計画の認定後に設備の型式が変わったらどうなりますか?
計画の記載と実際の設備が食い違うと適用できないことがあり、 変更認定が必要かを速やかに確認してください 。
認定を受けた計画の記載と実際に取得した設備が異なると、適用が認められないことがあります。メーカー都合で後継機種に変わる場合もあるため、変更が生じたら変更認定が必要かを速やかに確認してください。
申請は自社だけで進められますか?
A類型は自社対応も可能ですが、 B・D・E類型は税理士等の事前確認書が必要です 。
A類型は工業会等の判定に依存するため、メーカーとのやり取りが中心で自社対応も可能です。B・D・E類型は税理士または公認会計士の事前確認書が必要になるため、顧問税理士との連携が前提になります。
認定を受ければ必ず即時償却できますか?
認定は要件のひとつにすぎず、 事業供用と申告書への明細添付まで満たして初めて適用されます 。
認定は要件のひとつにすぎません。設備を事業年度内に取得して事業の用に供し、確定申告書に所定の明細書を添付して初めて適用されます。事業供用が決算日を過ぎた場合や添付が漏れた場合は適用を受けられません。
契約や支出の前に論点を確認しておけば、選べる打ち手が広がります。
出典: 中小企業庁|中小企業経営強化税制 / 国税庁|税について調べる / e-Gov法令検索

