少額減価償却資産30万円未満の特例はいつまで?令和8年度改正で40万円拡充!税理士目線の完全ガイド

30万円未満の資産を取得した際に即時償却できる「少額減価償却資産の特例」は、 令和8年度税制改正で取得価額上限が40万円未満に引き上げ られる予定です。同時に適用期限も3年延長される一方、 従業員数要件が厳格化 され、一部の中小企業が対象外となる可能性があります。
本記事では、税理士目線で少額減価償却資産特例の実務ポイントを徹底解説。基本要件から令和8年度改正の影響、300万円上限の戦略的使い方、3つの処理方法の比較シミュレーション、別表添付の注意点までを網羅します。
この記事でわかること
- 少額減価償却資産の特例とは|基本の整理
- 令和8年度税制改正|30万円→40万円への拡充と条件厳格化
- 対象資産と対象者|どこまで認められる
- 年間300万円上限の正しい使い方|超過時の対応
- 3つの処理方法の比較|少額特例 vs 一括償却 vs 通常償却
少額減価償却資産の特例とは|基本の整理

制度の概要と即時償却のメリット
少額減価償却資産の特例(租税特別措置法第67条の5)は、 青色申告の中小企業者等が取得価額30万円未満の減価償却資産を取得した場合に、 合計300万円までを限度として全額を取得年度の損金に算入できる 制度です 。通常の減価償却のように耐用年数にわたって分割せず、その事業年度で一括経費処理が可能です。
3つの処理方法との違い
金額・計上時期・証憑を帳簿と一致させることが重要です
| 取得価額 | 選択可能な処理 | 特徴 |
|---|---|---|
| 10万円未満 | 消耗品費で即時損金 | 全額即時経費。届出不要 |
| 10万円~20万円未満 | 一括償却資産(3年均等) | 償却資産税対象外 |
| 20万円~30万円未満 | 少額特例(即時償却) | 青色申告+300万円上限 |
| 30万円以上 | 通常の減価償却 | 耐用年数にわたり分割 |
税理士が顧問先に伝えるべきポイント
少額特例は「使える会社」「使える資産」が決まっており、 適用を誤ると税務調査で否認される リスクがあります 。特に令和4年度改正で貸付用資産が除外され、令和8年度改正で要件が再び変わる予定のため、毎期の要件チェックが欠かせません。
令和8年度税制改正|30万円→40万円への拡充と条件厳格化

改正の3つのポイント
要件・証拠・資金繰りを一体で確認することが重要です
| 項目 | 現行(~令和8年3月31日) | 改正後(令和8年4月1日~令和10年度末) |
|---|---|---|
| 取得価額上限 | 30万円未満 | 40万円未満(10万円引上げ) |
| 年間上限 | 300万円 | 300万円(変更なし) |
| 適用期限 | 令和8年3月31日 | 令和11年3月31日まで延長 |
| 従業員数要件 | 500人以下 | 400人以下に厳格化(予定) |
| 貸付用資産 | 対象外(令和4年改正) | 対象外(変更なし) |
40万円未満への引上げが与える実務インパクト
30万円台後半の業務用PC・タブレット・ソフトウェア・ドローン・業務用冷蔵庫などが 新たに即時償却対象となります 。特に 高性能ノートPC(GPU搭載・35万円前後)や業務用SaaSライセンス を複数台導入するIT企業・士業・医療機関にとっては、節税メリットが大幅に拡大します。
従業員数要件の厳格化に注意
常時使用従業員数が400人超500人以下の中堅企業は、 改正後に少額特例の適用対象外 となる見込みです 。該当する顧問先には、令和8年3月期までに計画的な資産取得を進めるよう助言が必要です。
対象資産と対象者|どこまで認められる?

対象となる事業者
対象者・金額・期限を一次資料で確認することが重要です
- 青色申告の中小企業者(法人・個人事業主)
- 常時使用従業員500人以下(※改正後400人以下に厳格化予定)
- 資本金1億円以下(大規模法人の子会社を除く)
- 農業協同組合等(組合員500人以下)
対象となる資産の種類
機械装置、器具備品、工具、ソフトウェア、車両運搬具、建物附属設備など、 減価償却資産全般が対象 です 。新品・中古を問わず適用できます。
対象外資産(令和4年改正で追加された貸付用の除外)
令和4年度改正で、 貸付の用に供した資産は対象外 となりました 。節税目的で知人にドローンやコンテナを貸し付ける「節税スキーム」は封じられています。ただし、レンタカー事業者の車両のように「主要な事業として行う貸付」は引き続き対象です。
年間300万円上限の正しい使い方|超過時の対応

300万円上限の計算方法
年間300万円は 事業年度単位 で計算します 。決算期をまたいで資産を取得すれば、2期合計で最大600万円の即時償却が可能です。事業年度が12か月未満の場合は月割計算で上限が減額されます。
上限超過時の処理選択
金額・計上時期・証憑を帳簿と一致させることが重要です
| 状況 | 推奨処理 | 理由 |
|---|---|---|
| 300万円超過・赤字年度 | 通常減価償却 | 欠損金を増やさず繰越可能 |
| 300万円超過・黒字年度 | 一括償却資産(20万円未満分) | 償却資産税回避+分散効果 |
| 期末駆け込み取得 | 翌期への繰り延べ検討 | 月割計算の制約に注意 |
税理士の腕の見せ所|2期分散戦略
例えば決算月が3月の顧問先が600万円分の資産を購入する場合、 半分を3月末・半分を4月初旬に分割取得 すれば、 2期合計600万円を即時償却できます 。ただし令和8年4月1日をまたぐ取得は40万円未満対応となるため、改正前後のタイミング調整が重要です。
3つの処理方法の比較|少額特例 vs 一括償却 vs 通常償却

損金算入スピードの違い
名称ではなく要件と税務効果の違いで区分することが重要です
| 処理方法 | 損金算入ペース | 償却資産税 | 別表 |
|---|---|---|---|
| 少額特例(30万円未満) | 初年度100% | 課税対象 | 別表十六(七) |
| 一括償却資産(20万円未満) | 3年均等(33.3%×3) | 対象外 | 別表十六(八) |
| 通常の減価償却 | 耐用年数にわたり分割 | 課税対象 | 別表十六(一)or(二) |
償却資産税(固定資産税)の違い
少額特例を適用した資産は 償却資産税の課税対象 になります 。課税標準額合計150万円未満なら免税点以下で課税されませんが、それを超える場合は一括償却資産(20万円未満)の選択で償却資産税を回避するほうが総合的に有利になるケースもあります。
実務で多い失敗パターン
適用要件と出口時の課税を実行前に確認することが重要です
- 黒字年度に全件少額特例を適用し、赤字転落後に繰越欠損金が足りなくなる
- 償却資産税の申告漏れで追徴課税を受ける
- 税込経理で30万円ギリギリの資産が対象外になる(税抜29万円→税込31.9万円)
事業年度別シミュレーション|最も有利な選択

ケース別の最適解
要件・証拠・資金繰りを一体で確認することが重要です
| ケース | 年間利益 | 取得資産 | 推奨処理 | 節税効果 |
|---|---|---|---|---|
| A社(好業績) | 3,000万円 | 25万円×10台 | 少額特例 | 即時250万円損金→約75万円節税 |
| B社(赤字) | △500万円 | 15万円×12台 | 一括償却資産 | 3年分散で黒字期に平準化 |
| C社(黒字/固定資産税負担大) | 1,000万円 | 18万円×20台 | 一括償却資産 | 償却資産税対象外で有利 |
| D社(期末駆け込み) | 2,000万円 | 28万円×15台 | 少額特例+翌期分散 | 2期で最大600万円損金化 |
税額控除制度との比較検討
中小企業経営強化税制の税額控除(7%〜10%)と少額特例は 併用不可 ではないものの、 同一資産では選択適用です 。取得価額30万円前後の業務用ソフトウェアなら少額特例が有利、100万円以上の機械装置なら経営強化税制の即時償却や税額控除が有利です。
令和8年4月1日前後の取得戦略
改正後は40万円未満まで対象拡大するため、 35万円〜39万円の高額資産は改正後の取得がメリット大 。逆に、従業員数400人超の中堅企業は改正前に駆け込み取得すべきです。
手続きと申告書の添付|税理士が押さえるポイント

必要な手続き
要件・証拠・資金繰りを一体で確認することが重要です
- 青色申告の承認申請(取得年度開始前)
- 取得価額30万円未満の資産を取得・事業供用
- 固定資産台帳に計上(少額特例として区分)
- 仕訳:消耗品費または少額減価償却資産/現金預金
- 確定申告書に別表十六(七)を添付
- 市区町村へ償却資産税申告(1月末まで)
別表十六(七)の記載ポイント
要件・証拠・資金繰りを一体で確認することが重要です
- 資産の種類・名称・取得年月日・取得価額を明細記載
- 合計額が300万円以内であることを明示
- 貸付用でないことを確認(令和4年改正対応)
添付漏れ・要件不備のリカバリー
別表十六(七)の添付を失念した場合、 原則として特例は否認されます 。ただし 更正の請求(法定申告期限から5年以内) で救済される可能性があります。気づいた時点で速やかに税理士に相談してください。
税理士からよくある質問(FAQ)

中古資産も対象になる?
はい、対象です 。取得価額30万円未満であれば新品・中古を問いません。ただし中古資産は耐用年数が短縮されるため、通常減価償却を選ぶほうが翌期以降のキャッシュフロー的に有利なケースもあります。
リース資産は対象になる?
所有権移転外ファイナンスリースは対象外です 。オペレーティングリースはそもそも資産計上しないため該当しません。所有権移転ファイナンスリースで実質購入と認められる場合のみ対象となります。
つの資産を分割購入した場合は?
通常一体として機能する資産(例:PCセット、 応接セット)は一体で取得価額を判定します 。分割で取得しても、単独で機能しない部分は合算対象です。
ソフトウェア開発の外注費は?
受注制作ソフトウェアや自社利用ソフトウェアの開発費が 30万円未満なら対象となります 。複数のモジュールに分割して発注しても、一体のシステムとして判定される点に注意が必要です。
個人事業主でも使える?
はい、青色申告の個人事業主も対象です 。確定申告書Bに別表十六(七)に相当する明細書を添付します。e-Taxでも添付可能です。
消費税の簡易課税でも影響はある?
少額特例の30万円未満判定は 会社の経理方式(税抜・税込)に従います 。簡易課税は消費税計算方法であり、法人税の少額特例判定には直接影響しません。ただし税抜経理を選択するほうが、ギリギリの資産を対象化しやすくなります。
契約や支出の前に論点を確認しておけば、選べる打ち手が広がります。
出典: 国税庁|令和8年度 法人税関係法令の改正の概要 / 経済産業省|少額減価償却資産の特例を拡充しました / 財務省|令和8年度税制改正の大綱



