タックスコンサルティング

グループ内の株式譲渡は税務で損益繰延べ?100%支配関係の判定

グループ内の株式譲渡は税務で損益繰延べ?100%支配関係の判定

グループ内で子会社株式を売買したとき、譲渡法人で計算した利益または損失が、その期の課税所得に直ちに反映されない場合があります。判定の起点は、売り手と買い手の間に完全支配関係があるか、その株式が譲渡損益調整資産に当たるかです。

内国法人であるグループ会社同士が、第三の会社の株式を有償譲渡する通常型を中心に、通算法人株式の特則と自己株式取得を切り分けます。制度の適用は取引条件で変わるため、契約前と申告前に税理士等へ確認してください。

株式移転前にそろえる資料

  • 譲渡前後の資本関係図と株主名簿
  • 株式の税務簿価と時価算定書
  • 譲渡契約と価格決定の根拠
  • 将来の外部売却・離脱・清算予定
目次

グループ内譲渡でもまず通常の譲渡損益を計算する

グループ内譲渡でもまず通常の譲渡損益を計算する

価格と税務簿価の差を出した上で、繰延べ要件を判定します。

譲渡価額から株式の帳簿価額を差し引く

繰延べは譲渡損益を計算しない制度ではありません。 会計簿価と税務簿価の不一致を最初に解消します。

契約価格3億円、税務簿価1億円なら基礎となる譲渡益は2億円です。会計上の子会社株式残高と過去の申告調整を照合し、税務上の帳簿価額を復元します。

時価で売買する根拠を残す

マーケットアプローチ、修正純資産、将来収益力など、対象会社に合う評価方法を選びます。取締役会資料に評価日、前提、算定幅、最終価格の理由を残します。

関係会社間の価格は、損益繰延べとは別に合理性が求められます。 繰延べ要件を満たしても、不自然な価格設定の問題は残ります。

完全支配関係がある内国法人間の譲渡損益調整資産の譲渡損益は、一定の方法で繰り延べられます。

出典:国税庁 グループ法人税制FAQ問46

完全支配関係には、一の者による完全支配関係のある法人相互の関係も含まれます。

出典:国税庁 グループ法人税制FAQ問3

100%の完全支配関係を譲渡日の資本関係図で判定する

100%の完全支配関係を譲渡日の資本関係図で判定する

同じグループと呼ばれていても、100%未満ならこの繰延べは使えません。

直接保有と間接保有を合わせる

株主名簿、組織図、投資勘定明細を照合し、名義株、従業員持株、新株予約権などを確認します。

完全支配関係には、一の者が発行済株式等の全部を保有する関係と、その者による完全支配関係のある法人相互の関係が含まれます。 譲渡日に100%であることを資料で立証します。

個人が頂点にいる場合も判定する

持株会社がなくても、同一個人とその特殊関係者が複数法人を完全支配する構造では対象となる場合があります。 「同じオーナー」だけでは足りず、特殊関係者と持株比率を積み上げます。

親族の保有を形式的に足すのではなく、法令上の特殊関係を確認します。海外法人をまたぐときは内国法人間取引といえるかも個別に判定します。

譲渡する子会社株式が譲渡損益調整資産か確認する

譲渡する子会社株式が譲渡損益調整資産か確認する

譲渡対象が「有価証券」に含まれることと、除外規定の有無を順に確認します。

帳簿価額1,000万円基準の例外に注意する

通常は税務簿価1,000万円未満の資産が除外されますが、一定のグループ株式には別の取扱いがあります。株式の種類と帳簿価額だけで機械的に除外しません。

譲渡損益調整資産は固定資産、土地等、有価証券、金銭債権、繰延資産などが中心です。 金額基準だけでなく、対象株式の法令上の区分を確認します。

売買目的有価証券などの除外を切り分ける

勘定科目の名称ではなく、取得目的、管理部署、過去の売買実績から区分します。社内の有価証券管理規程と仕訳も整合させます。ただし、通算グループ内で別の通算法人の株式を譲渡する一定の場合は、繰延べ後の戻入れを行わず、譲渡損益を計上しない特則を別途判定します。

短期売買を業務とする部門で反復継続的に売買する株式と、長期保有する子会社株式は一様ではありません。 株式という名称だけで一律に繰延べ対象とは判定しません。

譲渡損益調整資産の判定や繰延べ対象となる取引の取扱いが示されています。

出典:国税庁 法人税基本通達12の4の2

譲受法人で譲渡、償却、評価換え等の事由が生じた場合の繰延べ損益の戻入れが規定されています。

出典:国税庁 法人税基本通達12の4の3

譲渡益と譲渡損は申告調整で繰り延べる

譲渡益と譲渡損は申告調整で繰り延べる

譲渡法人は会計上の損益を消し込み、税務上の未実現額を管理します。

利益は減算、損失は加算の方向で調整する

会計上の譲渡益は、繰延べ要件を満たすと当期所得から減算します。 譲渡損益を必ず計算し、同額の申告調整と紐づけます。

譲渡損の場合は損金算入をいったん打ち消す方向で加算します。税額が永久に消えるのではなく、将来の戻入れ事由まで時期が移るだけです。

買い手の株式取得価額は契約対価を基礎にする

買い手は契約対価と直接付随費用を基に取得価額を管理します。売り手の繰延べ額は別途通知し、両社の台帳が一つの取引に紐づくようにします。

売り手の損益を繰り延べても、買い手の取得価額が売り手の旧簿価に自動的に置き換わるのではありません。 売り手の繰延べ額と、買い手の取得価額は別台帳で管理します。

買い手が外部売却すると繰延べ損益を戻し入れる

買い手が外部売却すると繰延べ損益を戻し入れる

第三者会社株式の外部売却では通常の戻入れを確認し、通算法人株式の特則と分けます。

外部への譲渡日を売り手に通知する

二段階の取引が事業年度をまたぐときは、買い手から売り手への通知フローを決めます。契約日、引渡日、譲渡株数、対価を共通フォームで管理します。

買い手が対象株式をグループ外へ譲渡すると、元の譲渡法人は繰り延べた損益を原則として戻し入れます。 外部売却は買い手の税務だけでなく、元の売り手の申告も動かします。

清算や組織再編も戻入れ事由を確認する

対象株式が消滅する、譲受法人の完全支配関係が解消されるなどの局面では、個別の戻入れ規定を確認します。 繰延べ台帳は対象株式が消滅するまで引き継ぎます。

株式台帳に繰延べ額、事由、対象数量、戻入れ年度の欄を設けます。組織再編前に未解消残高を抽出し、処理漏れを防ぎます。

一定の完全支配関係下の自己株式取得では、通常の株式譲渡と異なる損益計算が行われます。

出典:国税庁 自己株式の取得に係る質疑応答

グループ内取引の譲渡損益、受取配当、寄附金等は法人税法上それぞれの要件で判定されます。

出典:e-Gov 法人税法

発行法人へ売る自己株式取得は別ルールで判定する

発行法人へ売る自己株式取得は別ルールで判定する

譲受法人が対象株式の発行法人自身なら、通常の関係会社間売買と分けます。

みなし配当と株式譲渡対価を分ける

発行法人の資本金等の額の対応額、交付金銭、保有比率を確認します。通常の譲渡損益調整の計算式をそのまま当てはめません。

法人株主が発行法人へ株式を譲渡する場合、対価の一部がみなし配当とされることがあります。 買い手が発行法人か否かを契約書の当事者で切り分けます。

自己株式の取得では譲渡損益を認識しない取扱いを確認する

これは「いったん認識して将来戻す」繰延べと同じではありません。みなし配当、受取配当等の益金不算入、株式簿価の調整を一組で判定します。

一定の完全支配関係下で発行法人が自己株式を取得する場合は、譲渡損益を認識しない取扱いがあります。 自己株式取得を「別のグループ会社への譲渡」と同じ仕訳で処理しません。

譲渡価格と資金移動の合理性を契約前に固める

譲渡価格と資金移動の合理性を契約前に固める

繰延べは現金決済や株価算定を不要にする制度ではありません。

不当に高い価格や低い価格の受贈益・寄附金リスクを見る

グループ内でも取引価格が時価から著しく外れれば、価格差の税務が別途問題になります。 繰延べと価格差の税務は別論点として検討します。

資金繰り目的の売買なら、売り手の余剰資金、買い手の調達条件、配当や増減資との比較も取締役会資料に含めます。

株式譲渡契約と会社法上の決議をそろえる

契約書に対象株式、数量、価格、支払日、表明保証を明記します。名義書換、株券引渡し、代金決済の証憑を一つのフォルダで保存します。

譲渡制限株式なら承認機関を確認し、利益相反がある役員が関わるときは適切な決議を行います。 税務メモだけでなく、契約・決議・決済証憑を同じ取引番号でまとめます。

譲渡日から戻入れまでを両社の税務台帳で管理する

譲渡日から戻入れまでを両社の税務台帳で管理する

当期の申告だけでなく、数年後の外部売却を拾える体制が必要です。

売り手は繰延べ額と残高を別表に紐づける

毎期末に資本関係と対象株式の保有状況を照合します。申告データだけでなく、人が変わっても再計算できる資料を残します。

申告書の調整額は、株式銘柄、譲渡数量、繰延べ理由、取得法人、未実現残高がわかる明細と接続します。 未実現残高は申告書・総勘定元帳・株式台帳の三点で一致させます。

再編計画に戻入れ税額を反映する

将来の株式売却、清算、完全支配関係の解消が予定される場合は、その年度の所得と納税資金を先に試算します。 再編案は当期の税額ではなく、戻入れ後の累計税額で比較します。

外部売却時に元の譲渡益2億円が戻る前提なら、買い手の売却益と合わせて税負担を予測します。収益だけでなく、納付日まで資金繰りに織り込みます。

支配関係の判定に影響する株式の保有関係について、税務上の考え方が示されています。

出典:国税庁 連結納税基本通達1の2

譲渡制限株式の承認や利益相反取引など、株式移転に伴う会社法上の手続も確認が必要です。

出典:e-Gov 会社法

グループ内の株式譲渡と税務でよくある質問

グループ内の株式譲渡と税務でよくある質問

グループ内なら株式譲渡益に税金はかかりませんか?

非課税ではなく、一定の100%支配関係と資産要件を満たすと課税時期が繰り延べられます。

80%子会社同士の譲渡も対象ですか?

ここで扱う損益繰延べは完全支配関係が前提です。株主構成を譲渡日時点で判定します。

繰り延べた利益はいつ課税されますか?

第三者会社株式の通常型では、外部売却や完全支配関係の解消等の一定事由で戻入れます。通算法人株式の一定の譲渡は、戻入れを行わない特則があります。

発行会社に株式を売る場合も同じですか?

同じではありません。自己株式取得として、みなし配当や譲渡損益不認識の取扱いを別途確認します。

グループ内株式移転の繰延べ額を整理します

資本関係、株価、契約、将来の戻入れまで一枚の税務台帳にまとめます。個別の税務判断と申告は税理士が確認します。

グループ内再編を相談する

決算前でも間に合う即時償却ガイドの無料診断

目次