M&A前に不動産を切り離す方法と税金|売却・会社分割・賃貸を比較

事業会社の不動産をM&A対象から外す方法には、オーナー等への売却、100%子会社への移転、会社分割、売却後の賃貸があります。法人税だけでなく、消費税、登録免許税、不動産取得税、将来の戻入れまで比べる必要があります。
本記事は、M&A 売却前 不動産 切り離し 税金を検討する個人オーナーの実務を中心に扱います。 制度の適用は取引条件で変わるため、契約前と申告前に税理士等へ確認してください。
- 不動産の簿価・時価・担保状況
- 賃貸借・使用関係と事業上の必要性
- 株主・グループ会社の資本関係
- 売却・会社分割・現物配当等の比較案
不動産を外す目的を買主と共有する

最初に「切り離す理由と実行期限を確認する」を確認します。
切り離す理由と実行期限を確認する
最初に「切り離す理由と実行期限を確認する」を確認します。 M&A実行日から逆算し、登記・金融機関同意・許認可の所要期間を置きます。
買主が不動産を不要とする理由が価格、環境リスク、借入制約のどれかで最適策は変わります。
買主が外したい理由を文書化する
確認項目は「買主が外したい理由を文書化する」です。 理由が曖昧なまま不動産全体を移さないでください。
環境リスク、遊休資産、担保制約など理由を特定し、必要な切り離し範囲を決めます。
完全支配関係法人間の一定資産の譲渡損益は繰り延べられますが、将来の売却や支配関係解消等で戻し入れます。
譲渡損益調整額の原価は譲渡直前の帳簿価額で、譲渡手数料などの付随費用は含めません。
オーナーへの時価売却を試算する

最初に「オーナー等への売却は時価で計算する」を確認します。
オーナー等への売却は時価で計算する
最初に「オーナー等への売却は時価で計算する」を確認します。 関連当事者への低額譲渡を避けるため、土地建物の配分と時価根拠を残します。
会社が不動産を売れば、譲渡価額と税務簿価との差額が法人の譲渡損益になります。
時価と簿価の差を法人税へ反映する
確認項目は「時価と簿価の差を法人税へ反映する」です。 関連者間価格は鑑定等で説明できる水準にします。
土地・建物別の時価、税務簿価、譲渡費用から法人の譲渡損益を計算します。
100%グループ内移転の繰延べを確認する

最初に「100%子会社移転は戻入れまで見る」を確認します。
100%子会社移転は戻入れまで見る
最初に「100%子会社移転は戻入れまで見る」を確認します。 ただしM&Aで完全支配関係がなくなる場合や、その後の売却・償却等で戻入れが生じるため、出口日まで試算します。
完全支配関係法人間の一定資産は譲渡損益を繰り延べられます。
M&A時の戻入れ日を先に置く
確認項目は「M&A時の戻入れ日を先に置く」です。 移転時だけを見て恒久的な非課税と説明しないでください。
100%子会社へ移しても、株式売却で完全支配関係が切れるなら未戻入額を確認します。
会社分割の適格要件は、当事者間の支配関係など取引の型に応じて異なります。
非適格組織再編では、移転資産を時価で譲渡したものとして譲渡損益を認識することがあります。
出典:e-Gov 法人税法
適格会社分割の要件を判定する

最初に「会社分割は適格要件を個別判定する」を確認します。
会社分割は適格要件を個別判定する
最初に「会社分割は適格要件を個別判定する」を確認します。 不動産だけを移す計画が事業単位の要件を満たすか確認します。
適格分割なら一定の資産負債を簿価で引き継げますが、支配関係、事業継続、従業者など取引型に応じた要件があります。
移す資産負債と事業を特定する
確認項目は「移す資産負債と事業を特定する」です。 不動産一件の移転を自動的に適格分割としないでください。
分割計画書で不動産、借入、契約、従業者を特定し、適格要件を取引型ごとに判定します。
土地と建物の消費税を分ける

最初に「土地と建物の税区分を分ける」を確認します。
土地と建物の税区分を分ける
最初に「土地と建物の税区分を分ける」を確認します。 契約総額を合理的に配分し、課税売上割合への影響も計算します。
土地の譲渡は消費税の非課税取引ですが、建物等は課税取引となり得ます。
売買代金を土地と建物へ配分する
確認項目は「売買代金を土地と建物へ配分する」です。 契約総額だけでは消費税申告を作れません。
鑑定や固定資産税評価額など合理的な基準で配分し、建物部分の消費税を計算します。
土地の譲渡は消費税の非課税取引ですが、建物等の譲渡は課税取引となり得ます。
不動産譲渡契約書には記載金額に応じた印紙税が生じます。
登記税・取得税・金融費用を加える

最初に「法人税以外の移転費用を加える」を確認します。
法人税以外の移転費用を加える
最初に「法人税以外の移転費用を加える」を確認します。 借入金の繰上返済手数料や担保抹消・再設定費用も比較表へ入れます。
所有権移転では登録免許税、不動産取得税、印紙税、鑑定・登記費用が発生します。
移転税を初期費用へ足す
確認項目は「移転税を初期費用へ足す」です。 法人税の繰延効果だけで案を選ばないでください。
登録免許税、不動産取得税、印紙税、鑑定・司法書士費用、担保費用を方法別に集計します。
売却後の賃貸条件を第三者水準にする

最初に「賃貸借を買主が継続できる条件にする」を確認します。
賃貸借を買主が継続できる条件にする
最初に「賃貸借を買主が継続できる条件にする」を確認します。 M&A後も事業に不可欠なら、買主の長期利用権を確保します。
切り離した不動産を事業会社へ貸す場合、賃料、期間、修繕、原状回復、解除条件を第三者水準で設定します。
賃貸借をM&A後も存続させる
確認項目は「賃貸借をM&A後も存続させる」です。 短期解約できる契約では事業継続性を損ないます。
賃料、契約期間、中途解約、修繕、原状回復を買主と合意します。
M&A実行時の支配関係解消を織り込む

最初に「実行順序で課税結果が変わる」を確認します。
実行順序で課税結果が変わる
最初に「実行順序で課税結果が変わる」を確認します。 各工程の時価、資金、支配関係を日付入りで図示します。
不動産移転後に株式を売る順序と、株式売却後に買主から不動産を取得する順序では当事者と税負担が異なります。
工程ごとの当事者を図示する
確認項目は「工程ごとの当事者を図示する」です。 順序を変える場合は税額と許認可を再判定します。
不動産移転、借入返済、賃貸開始、株式譲渡を日付順に並べます。 比較表には、法人税等、消費税、登録免許税、不動産取得税、印紙税、登記・鑑定・融資費用を方法別に並べます。加えて、完全支配関係が切れる日の戻入れ、賃料収入、将来売却時の税額まで置きます。M&A実行日に間に合うかも含め、税額と工程を同時に評価します。担保権者の同意期限と登記予定日も工程表へ記載します。十分な余裕日も確保します。
所有権移転登記には原因や不動産価額に応じた登録免許税がかかります。
出典:法務局 登録免許税
一部譲渡や滅失などが生じた場合は、合理的な方法で繰延額を戻し入れます。
M&A前に不動産を切り離す方法と税金でよくある質問

100%子会社へ移せば非課税ですか?
一定の譲渡損益は繰延べられても、支配関係解消や売却等で戻入れます。
土地と建物で消費税は同じですか?
土地譲渡は非課税ですが、建物等は課税取引となり得ます。
会社分割なら必ず簿価移転ですか?
いいえ。支配関係や事業継続など適格要件を個別に満たす必要があります。
売却後に会社へ貸せますか?
可能です。賃料、期間、修繕、解除条件を第三者水準で定めます。
M&A前の税額と手取りを一つの表に整理します
取引の型、課税時期、取得費、入金と納税時期を確認し、実行前に比較します。 個別の税務判断と申告は税理士が確認します。

