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インボイスの2029年問題は消えたのか|7・5・3割控除への変更

インボイスの2029年問題が令和8年度改正で2031年へ後ろ倒しになったことをまとめた図

免税事業者との取引をいつまで続けられるのか判断がつかない。2029年に控除がゼロになると聞いて取引先の整理を考えていたが、制度が変わったという話も出てきて、どちらが正しいのか分からない。

2029年9月末で控除がゼロになる予定は変わりました。令和8年度改正で適用期限が2年延長され、終わりは2031年9月末になります。ただし控除割合は80%から70%へ下がり、その後も50%、30%と刻まれます。先送りではあっても、負担が増える方向は変わっていません。

この記事でわかること

  • 2029年問題と呼ばれていたものの正体
  • 改正で期限が2031年9月末へ延びたこと
  • 7・5・3割へ刻み直された控除割合
  • 新しく入った1億円の上限
  • 取引先とどう向き合うか
  • 自分が免税事業者の場合の判断

免税事業者との取引をどう扱うか整理しませんか

取引先の構成と仕入れの規模が分かれば、影響額と対応の順序を具体化できます。

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目次

2029年問題とは何だったか

インボイスの2029年問題と呼ばれていた経過措置の終了を示した図

まず何が問題とされていたのかを押さえます。呼び名だけが独り歩きしている面があります。

免税事業者から仕入れても控除できなくなる

適格請求書等保存方式では、インボイス発行事業者以外の者からの課税仕入れは仕入税額控除の対象になりません

消費者、免税事業者、登録を受けていない課税事業者からの仕入れが該当します。原則どおりなら1円も控除できません。

急に全額が控除できなくなると影響が大きいため、一定割合を控除できる経過措置が設けられていました。

改正前は2029年9月末で終わる予定だった

経過措置は令和5年10月から3年間は80%、その後3年間は50%、令和11年10月からは0%という設計でした。

令和11年は2029年です。この年の10月から控除が完全になくなるため、2029年問題と呼ばれていました。

免税事業者との取引を続けている事業者にとって、そこが実質的な取引見直しの期限とみなされていました。

免税事業者側の問題でもあった

取引先から見れば、登録していない相手からの仕入れは負担が増えることになります。

値引きを求められたり、取引を見直されたりする懸念が語られてきました。小規模な事業者ほど影響を受けやすい構図です。

登録すれば売上規模にかかわらず消費税の申告と納付が必要になります。どちらを選んでも負担が生じる状況でした。

期間(改正前の設計) 控除できた割合
令和5年10月1日から令和8年9月30日 80%
令和8年10月1日から令和11年9月30日 50%
令和11年10月1日以後 0%

登録すれば売上規模にかかわらず消費税の申告と納付が必要になります。どちらを選んでも負担が生じる状況でした。

出典: 国税庁「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A」

期限は2031年9月末へ延びた

経過措置の適用期限が2年延長され2031年9月末になったことを示した図

令和8年度改正でここが動きました。2029年という区切りはなくなっています。

適用期限が2年延長された

免税事業者などからの課税仕入れに係る経過措置について、適用期限が2年間延長されました。

終わりは令和13年9月30日、つまり2031年9月末です。改正前の令和11年9月30日から2年後ろへ動きました。

令和13年10月1日以後の課税仕入れについては控除できません。ここが新しい期限です。

控除できる期間は8年になった

制度開始から数えると、令和5年10月から令和13年9月まで8年間の移行期間になります。

当初の設計では6年間でした。2年の猶予が加わったことで、取引先の切り替えや自社の体制整備に使える時間が増えています。

ただし延長は今回で3度目という制度ではありません。次も延びるという前提で計画を立てるのは避けてください。

2029年に何かが起きるわけではない

改正後は令和11年つまり2029年に控除割合が変わる区切りはありません

新しい刻みでは令和10年10月と令和12年10月が変わり目です。2029年を基準にした社内の計画があるなら、組み直す必要があります。

古い情報のまま取引先の整理を進めると、必要のない判断を前倒しすることになります。

古い情報のまま取引先の整理を進めると、必要のない判断を前倒しすることになります。

出典: 国税庁「インボイス制度に関する令和8年度税制改正について」

7・5・3割へ刻み直された

経過措置の控除可能割合が70パーセント50パーセント30パーセントへ見直されたことを示した図

延びたぶん、割合は下がりました。実務では期限より割合のほうが効いてきます。

2026年10月から70%になる

令和8年10月1日から令和10年9月30日までは、控除できるのは70%です。

それまでの80%から10ポイント下がります。改正前の設計では同じ時点で50%まで下がる予定だったので、当面は改正後のほうが有利です。

10月をまたぐ課税仕入れは、いつの取引かで割合が変わります。請求書の日付で判定してください。

2028年10月から50%、2030年10月から30%

その後は令和10年10月から50%、令和12年10月から30%と2年ごとに下がります。

改正前は50%の期間が3年続く設計でした。改正後は70%が2年、50%が2年、30%が1年という刻みになります。

令和13年10月1日以後は0%です。8年かけて段階的に下げていく形に組み直されています。

影響額は仕入れの規模で決まる

免税事業者からの仕入れが年1,000万円あるなら、80%から70%への変更で年10万円ほど負担が増える計算になります。

税抜1,000万円に対する消費税額100万円のうち、控除できる額が80万円から70万円へ減るためです。

50%になれば50万円、30%なら30万円です。自社の仕入れ構成に当てはめて金額を出しておくと、判断がぶれません。

期間 改正前 改正後
令和8年10月1日から令和10年9月30日 50% 70%
令和10年10月1日から令和11年9月30日 50% 50%
令和11年10月1日から令和12年9月30日 0% 50%
令和12年10月1日から令和13年9月30日 0% 30%
令和13年10月1日以後 0% 0%
この記事の試算の前提

税抜金額に標準税率10%を乗じた消費税額を基礎とした概算です。軽減税率の対象が混ざる場合や、返品や値引きがある場合は金額が変わります。

1億円の上限が新しく入った

経過措置の控除限度額が10億円から1億円に引き下げられたことを示した図

延長と引き換えに絞られた部分です。規模の大きい事業者は確認が必要になります。

一の相手からの仕入れが年1億円を超える部分は対象外

一の適格請求書発行事業者以外の者からの課税仕入れの合計額がその年またはその事業年度で1億円を超える場合、超えた部分は経過措置の対象外になります。

改正前は10億円でした。10分の1に引き下げられています。

判定は相手ごとです。複数の免税事業者から仕入れている場合、それぞれで1億円を判定します。

令和8年10月1日以後開始の課税期間から

この見直しは令和8年10月1日以後に開始する課税期間から適用されます。

控除割合の変更が令和8年10月1日の取引から適用されるのとは、判定の起点が違います。混同しないでください。

3月決算の法人なら令和9年4月1日開始の事業年度から、個人事業者なら令和9年分からになります。

個人事業主が該当することはまれ

一つの免税事業者から年1億円を超えて仕入れる場面は限られます

建設業の外注費や、特定の仕入先に依存している事業では起こりえます。心当たりがあるなら年間の取引額を集計してください。

該当しないなら、この改正で気にすべきなのは控除割合のほうだけです。

該当しないなら、この改正で気にすべきなのは控除割合のほうだけです。

出典: 国税庁「インボイス制度に関する令和8年度税制改正について」

押さえておきたい点

控除割合の変更は令和8年10月1日の取引から、控除限度額の見直しは令和8年10月1日以後に開始する課税期間からです。適用の起点が違います。

自社の場合はどうなるか確認しませんか

決算期と利益の見込みが分かれば、使える制度と実行時期を具体的に整理できます。

自社のケースを相談する

取引先とどう向き合うか

免税事業者である取引先との向き合い方を示した図

時間が2年増えました。急いで切る判断をしなくてよくなった分、丁寧に進められます。

値引きの要求には独占禁止法の論点がある

取引先が免税事業者だからといって、一方的に取引価格を引き下げると問題になることがあります。

公正取引委員会は、インボイス制度を理由とした取引条件の見直しについて考え方を示しています。優越的地位の濫用にあたる場合があります。

協議のうえで合意することが前提です。通告して終わりという進め方は避けてください。

影響額を先に出す

取引を見直す前に、その相手との年間取引額から控除できない金額を計算します。

年間100万円の仕入れなら消費税額は10万円、70%控除で控除できない額は3万円です。取引を切り替えるコストと比べてください。

金額が小さければ、そのまま取引を続けるほうが合理的な場合も多くあります。

登録の予定を確認する

相手が今後インボイス発行事業者になる予定があるかを聞いておきます。

登録すれば経過措置の話はなくなります。相手にとっても取引を維持できるかどうかの判断材料になります。

こちらの都合だけで進めず、相手の事情も含めて時間をかけて話す。2年の猶予はそのために使えます。

1相手ごとの年間取引額を集計
2控除できない金額を計算
3切り替えコストと比較
4登録の予定を確認
5協議のうえで条件を決める

自分が免税事業者の場合

免税事業者が登録するかどうかを判断する基準を示した図

登録するかどうかの判断も、2年の猶予で変わってきます。

取引先の顔ぶれで決まる

取引先が消費者や免税事業者ばかりなら、登録しなくても実害はありません

仕入税額控除を気にするのは課税事業者だけです。BtoCの事業なら、この問題自体が発生しません。

課税事業者との取引が中心なら、相手の負担が令和8年10月から3割分に増えます。ここが交渉の材料になります。

登録すると免税ではなくなる

インボイス発行事業者になると、課税売上高が1,000万円以下でも申告と納付が必要です。

基準期間の課税売上高による免除は受けられません。事務負担も増えます。

登録をやめることもできますが、届出の期限があり、すぐに免税へ戻れるとは限りません。

特例が使えるうちに登録する選択もある

個人事業者なら、令和9年分と令和10年分は3割特例が使えます

納める消費税を売上に係る消費税額の3割に抑えられます。仕入れの集計も不要です。

令和11年分以降に登録すると特例はなく、最初から原則計算か簡易課税になります。登録するなら時期を意識してください。

自分の状況 考え方
取引先が消費者中心 登録しなくても実害は小さい
取引先が課税事業者中心 相手の負担増を踏まえて協議
登録するなら 令和10年分までは3割特例が使える
令和11年分以降の登録 原則計算か簡易課税

令和11年分以降に登録すると特例はなく、最初から原則計算か簡易課税になります。登録するなら時期を意識してください。

出典: 国税庁 タックスアンサー No.6501 納税義務の免除

経理の実務で変えること

経過措置の割合変更に伴い経理実務で変更すべき点を示した図

割合が変わる日をまたぐので、設定と運用の両方に手を入れます。

会計ソフトの控除割合を切り替える

令和8年10月1日から経過措置の税区分を80%から70%へ切り替えます。

多くの会計ソフトには経過措置用の税区分があります。日付で自動判定するものと、手動で切り替えるものがあります。

9月と10月をまたぐ取引で区分を取り違えると、申告の金額がずれます。切り替えの前後は特に確認してください。

仕入先の登録状況を一覧にする

相手ごとにインボイス発行事業者かどうかを整理した一覧を作ります。

登録番号は国税庁の公表サイトで確認できます。取引を始めるときに確認して記録しておくのが確実です。

この一覧があると、1億円の上限に近い相手がいるかどうかもすぐ分かります。

帳簿への記載を忘れない

経過措置を使うには、経過措置の適用を受ける旨を帳簿に記載する必要があります。

請求書等の保存も要件です。相手がインボイス発行事業者でなくても、書類を捨ててよいわけではありません。

会計ソフトで経過措置の税区分を選べば自動で記載されるものが多くなっています。設定を確認してください。

1仕入先の登録状況を一覧化
2会計ソフトの税区分を確認
310月1日で割合を切り替え
4帳簿への記載を確認
5年間の取引額を集計

誤解しやすいところ

インボイスの経過措置で誤解しやすい点を示した図

古い情報が残っているぶん、判断を誤りやすい論点が出ています。

2029年で終わりという情報は古い

改正前の設計を前提にした記事や資料がまだ多く残っています

令和8年度改正の内容が反映されていないものを見て、2029年を期限だと思い込んでいるケースがあります。

国税庁のインボイス制度に関する令和8年度税制改正のページで最新の内容を確認してください。

2割特例と経過措置は別のもの

2割特例は売手側の話で、経過措置は買手側の話です。

2割特例は登録によって課税事業者になった人が納める税額を計算する特例で、令和8年9月30日までの課税期間で終わります。

経過措置は免税事業者などから仕入れた側が使うものです。名前が似ていますが、対象も期限も違います。

延長されても負担は増える

期限が延びたことで問題がなくなったわけではありません

令和8年10月からは80%が70%に下がります。同じ取引を続けているだけで、控除できる額は確実に減っていきます。

時間の猶予として使い、その間に取引の形を整えるという受け止め方が実務的です。

押さえておきたい点

延長は先送りであって撤回ではありません。控除割合は下がり続け、令和13年10月には0%になります。

疑問点をそのままお持ちください

適用できるかどうかの判定だけでもご利用いただけます。費用はかかりません。

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インボイスの経過措置に関するよくある質問

インボイスの経過措置に関するよくある質問をまとめた図

実務へ落とし込むときに、相談として多く寄せられる論点をまとめます。

2029年問題はなくなったのですか?

期限は延びましたが負担が増える方向は変わりません

2029年9月末で控除がゼロになるという設計はなくなりました。令和8年度改正で適用期限が2年延長され、終わりは令和13年つまり2031年9月末です。ただし控除割合は下がり続けるため、負担が増えること自体は変わりません。

控除できる割合はいつ変わりますか?

令和8年10月1日から70%に下がります

令和8年10月1日から70%、令和10年10月1日から50%、令和12年10月1日から30%です。令和13年10月1日以後は控除できません。改正前は令和8年10月から50%になる予定だったので、当面は改正後のほうが有利です。

1億円の上限とは何ですか?

一の相手から年1億円を超える部分は経過措置の対象外です。

一の免税事業者などからの課税仕入れの合計額が、その年またはその事業年度で1億円を超える場合、超えた部分は経過措置の対象外になります。改正前は10億円でした。令和8年10月1日以後に開始する課税期間から適用されます。

2割特例とは違うのですか?

2割特例は売手側、経過措置は買手側の話です。

別のものです。2割特例は登録によって課税事業者になった人が納める税額を計算する売手側の特例で、令和8年9月30日までの課税期間で終わります。経過措置は免税事業者などから仕入れた買手側が使うものです。

免税事業者との取引はやめるべきですか?

まず控除できない金額を計算してから判断します。

金額を出してから判断してください。年間100万円の仕入れなら消費税額は10万円で、70%控除なら控除できない額は3万円です。取引先を切り替えるコストと比べて小さいなら、続けるほうが合理的な場合もあります。

経過措置を使うのに手続きは必要ですか?

届出は不要ですが帳簿への記載が必要です。

届出は不要ですが、経過措置の適用を受ける旨を帳簿に記載する必要があります。請求書等の保存も要件です。会計ソフトで経過措置の税区分を選べば自動で記載されるものが多いので、設定を確認してください。


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