即時償却 よくある質問|要件・手続き・出口の疑問に回答【2026年】

即時償却は、制度の名前は知られていても、実際に使おうとすると細かい疑問が次々に出てきます。「普通償却と何が違うのか」「うちの設備は対象なのか」「いつまでに何をすればいいのか」。ひとつずつ調べていくと情報が分散していて、全体像がつかめないまま時間だけが過ぎていきます。
即時償却は、中小企業経営強化法の認定を受けた経営力向上計画に基づいて対象設備を取得した場合に、取得価額の全額をその事業年度の損金にできる制度です。税額が消えるのではなく将来の減価償却費を前倒しする仕組みであり、証明書の取得と計画認定を設備の取得前に終わらせる必要があります。
この記事でわかること
- 制度の基本についてのよくある質問
- 対象になる会社と設備についての質問
- 類型の選び方についての質問
- 手続きと期限についての質問
- 確定申告についての質問
制度の基本についてのよくある質問

まず制度の位置づけに関する疑問です。ここを取り違えると、以降の判断がすべてずれます。
| 用語 | 内容 | 損金の総額 |
|---|---|---|
| 普通償却 | 耐用年数にわたって毎期規則的に償却する | 取得価額と同じ |
| 特別償却 | 普通償却に上乗せして一定額を償却する | 取得価額と同じ |
| 即時償却 | 取得価額の全額を初年度に償却する | 取得価額と同じ |
| 税額控除 | 償却とは別に税額から直接差し引く | 取得価額+控除額のぶん有利 |
即時償却と普通償却で損金の総額は変わらない
どちらも最終的に損金にできる金額は取得価額と同じで、 違うのは損金を計上する時期だけです 。即時償却は特別償却の一種で、償却限度額が取得価額の100%になったものと考えると分かりやすくなります。
したがって利益が毎期同じように出ている会社では、10年間の合計税額は普通償却と変わりません。即時償却の価値は納税時期を後ろへずらせる点にあります。
税金が消えるわけではない
初年度の課税所得は大きく下がりますが、 翌期以降はその設備から生じる減価償却費がゼロになります 。繰り延べた課税は、翌期以降の税負担として戻ってきます。
「節税」という言葉で説明されることが多い制度ですが、正確には課税の繰り延べです。将来の利益見込みまで含めて判断してください。
即時償却と税額控除は選択適用になる
同じ設備について両方は使えず、 いったん選択して確定申告書を提出すると変更できません 。当期の資金繰りを優先するなら即時償却、合計の税負担を抑えたいなら税額控除が向きます。
税額控除は取得価額の10%(資本金の額等が3,000万円超の法人は7%)ですが、その年の法人税額の20%という上限があります。
税額控除は取得価額の10%(資本金の額等が3,000万円超の法人は7%)ですが、その年の法人税額の20%という上限があります。
出典: 中小企業庁|中小企業経営強化税制
対象になる会社と設備についての質問

「うちは使えるのか」「この設備は対象か」という判定の疑問です。
| 設備の種類 | 取得価額の下限 |
|---|---|
| 機械装置 | 160万円以上 |
| 測定工具・検査工具 | 30万円以上(令和8年度改正で40万円以上) |
| 器具備品 | 30万円以上(令和8年度改正で40万円以上) |
| 建物附属設備 | 60万円以上 |
| ソフトウェア | 70万円以上 |
青色申告書を提出する中小企業者等であることが前提
資本金の額や従業員数などの基準を満たす必要があり、 白色申告の法人はそもそも適用を受けられません 。資本金1億円以下でも、大規模法人に一定割合以上出資されている場合は対象から外れることがあります。
自社が中小企業者等に当たるかは、資本金だけでなく株主構成と従業員数まで確認してください。グループ会社がある場合は特に注意が必要です。
中古設備と貸付用資産は対象にならない
この制度は新品であることが前提のため、 中古で取得した設備は金額基準を満たしても対象外です 。また、主要な事業として行われるものを除き、貸付けの用に供する資産も対象から除かれています。
コインランドリー業や暗号資産のマイニング業について、それが主要な事業でない場合に用いる設備も除外されています。
判定は資産計上する1件ごとの取得価額で行う
複数台をまとめて購入しても、 1台あたりの金額が基準を下回れば対象になりません 。見積書の合計金額ではなく、資産として計上する単位で判定します。
据付費や運搬費などの付随費用を取得価額に含めるかどうかで基準線をまたぐこともあります。取得価額の考え方は事前に確認してください。
類型の選び方についての質問

どの類型で進めるかによって、必要な書類と期間が変わります。
現在の類型はA・B・D・Eの4つ
デジタル化設備を対象としていたC類型は2025年4月1日をもって廃止されており、 A類型・B類型の2つだけという古い解説は現在の制度と一致しません 。経営資源集約化設備のD類型、経営規模拡大設備のE類型が加わっています。
ソフトウェアやIT関連設備を検討している場合は、A類型の対象になるか、B類型の投資計画で要件を満たせるかを確認することになります。
まずA類型で取れるかを確認する
A類型は設備メーカー経由で工業会等の証明書を取得する流れで、 B・D・E類型より手続きが早く進むのが通常です 。B類型以降は税理士または公認会計士の事前確認を経て経済産業局へ申請します。
商談の初期段階でメーカーに証明書の取得可否を確認し、取れないときにB類型を検討する順序が実務的です。
E類型は少額減価償却資産の特例と併用できない
経営規模拡大設備のE類型を使う場合、 その投資計画の期間中は少額減価償却資産の特例を適用できません 。40万円未満の資産を多く購入する予定がある会社は、どちらを優先するか先に決める必要があります。
少額減価償却資産の特例には年間合計300万円という上限があります。台数と金額から、どちらが有利かを比較してください。
手続きと期限についての質問

最も間違いが起きやすいのが順序です。
設備を買ってからでは原則として間に合わない
工業会等の証明書または経済産業大臣の確認書は、 設備を取得する前に申請しなければなりません 。認定を受けてから設備を取得するのが基本の順序です。
ただし例外として、設備の取得日から60日以内に経営力向上計画が受理され、かつ事業供用年度内に認定を受けられる場合には適用が認められる取扱いがあります。あくまで例外であり、令和7年度税制改正の拡充枠についてはこの例外措置は適用されないとされています。
納期の長い設備ほど、証明書の取得と計画認定にかかる期間を逆算した発注計画が必要になります。決算の3〜6か月前から動くのが現実的です。
適用期限は2027年3月31日までとされている
制度の適用期限は2026年度末までであり、 延長が確定していない段階で期限後の適用を前提に計画を立てるのは避けてください 。過去に延長が繰り返されてきた制度ではありますが、延長は確定事項ではありません。
設備投資の時期を検討している会社は、期限までに事業供用まで終えられるかを起点に逆算してください。
事業供用日が決算日を過ぎると翌期扱いになる
即時償却できるのは取得しただけでなく事業の用に供した事業年度であり、 決算日までに設置・稼働していなければ当期の損金にはできません 。納品済みでも据付や試運転が終わっていない状態は、事業供用として認められない可能性があります。
期末ぎりぎりの設備投資では、工事日程と検収日を契約前に確認してください。ここを落とすと効果がまるごと翌期送りになります。
確定申告についての質問

適用の最後の関門が申告書の作成です。書類の添付漏れは致命的になります。
明細書を添付しないと適用を受けられない
特別償却の適用を受けるには確定申告書に所定の明細書を添付する必要があり、 添付が漏れると制度そのものが使えません 。経理処理として損金経理していれば足りる、という制度ではありません。
経営力向上計画の認定書の写しも添付書類になります。計画の申請書と認定書は、申告時まで確実に保管しておいてください。
損金経理か剰余金の処分による積立てが必要
特別償却は、 償却費として損金経理するか、剰余金の処分により特別償却準備金として積み立てる方法で処理します 。会計上どう処理するかを、決算作業の前に顧問税理士と決めておく必要があります。
準備金方式を選ぶと、会計上の利益を落とさずに税務上の損金だけを計上できます。金融機関への決算書の見え方を考慮する場合に検討されます。
申告後に即時償却と税額控除を入れ替えることはできない
選択適用であるため、 確定申告書を提出したあとで有利なほうへ変更することはできません 。決算の着地が見えた段階で、どちらを選ぶかを決めてください。
翌期以降の利益見込みまで置いたうえで比較する必要があります。単年度の税額だけを見て決めると、後から不利になることがあります。
売却・除却・赤字のときの質問

導入後に発生する論点です。加入前に想定しておくべき部分でもあります。
売却すると売却額のほぼ全額が利益になる
即時償却をすると帳簿価額がほぼゼロになるため、 途中で売却したときは売却額のほぼ全額が利益として課税されます 。繰り延べた課税が出口で表に出る形です。
短期間で入れ替える設備や中古市場で値がつきやすい設備ほど影響が大きくなります。保有期間と売却見込みまで含めて判断してください。
赤字の年に使っても当期の税額は変わらない
課税所得がなければ差し引く対象がないため、 赤字の事業年度に即時償却をしても当期の納税額は減りません 。生じた欠損金は青色申告法人であれば翌期以降へ繰り越せますが、将来の黒字が前提です。
利益の着地見込みが固まらないうちに設備を発注すると、想定と逆の結果になります。着地予測を先に行ってください。
除却する場合は証憑を残す
設備を廃棄して除却損を計上する場合、 廃棄した事実を示す資料がなければ税務調査で否認される可能性があります 。廃棄証明書、写真、稟議書などをセットで保管してください。
即時償却をした設備は帳簿価額がほぼゼロのため除却損自体は小さくなりますが、資産台帳から落とす処理そのものは必要です。
リスクと税務調査についての質問

制度の要件を満たしていることと、税務上安全であることは別の問題です。
事業上の必要性を説明できることが前提になる
節税だけを目的として実態のない設備を計上した場合、 損金算入が否認され追徴課税となる可能性があります 。設備が事業でどう使われているかを、稼働記録や写真で示せる状態にしておく必要があります。
制度の要件を満たしていても、事業上の必要性を説明できなければ安全とはいえません。両方そろって初めて成立します。
計画の記載と実際の設備が一致している必要がある
経営力向上計画に記載した設備と実際に取得した設備が異なる場合、 認定の内容と食い違うため適用が認められないことがあります 。型式変更や仕様変更があった場合は、計画の変更認定が必要かを確認してください。
メーカー都合で後継機種に変わることは実務上よくあります。契約前後の変更は、必ず計画との整合を確認してください。
利益を消しすぎると資金調達に影響する
金融機関は決算書の利益と自己資本を見て融資を判断するため、 即時償却で赤字すれすれにした決算は借入の条件を悪化させることがあります 。設備投資の資金を借入で賄う会社ほど、この影響は無視できません。
会計上の利益を落とさずに税務上の損金だけを計上したい場合は、剰余金の処分による特別償却準備金の積立てを検討する余地があります。
年度改正についての質問

改正で判断が変わる部分を確認します。
工具・器具備品の金額基準が40万円以上になる
令和8年度改正により、この制度の工具および器具備品について、 取得価額要件が30万円以上から40万円以上へ引き上げられます 。同時に少額減価償却資産の特例が40万円未満へ拡充されるため、40万円が制度の切り替え点になります。
30万円台の器具備品は、改正後は経営強化税制ではなく少額減価償却資産の特例で処理することになります。手続きの負担は大きく変わります。
防衛特別法人税も即時償却に連動する
2026年4月1日以後に開始する事業年度から防衛特別法人税が課されますが、 課税標準が基準法人税額であるため即時償却で法人税額が下がれば連動して小さくなります 。基準法人税額から年500万円の基礎控除額を差し引いた残額に4%が課されます。
税額が0円になる場合でも、対象となる法人は確定申告書を提出する必要があります。納付の有無と申告義務は別に判断されます。
即時償却 よくある質問に関するよくある質問

実務へ落とし込むときに、相談として多く寄せられる論点をまとめます。
即時償却と普通償却は何が違いますか?
損金にできる総額は同じで、 違うのは損金を計上する時期だけです 。
損金にできる総額は同じで、違うのは計上する時期です。普通償却は耐用年数にわたって分けて償却し、即時償却は取得価額の全額を初年度に償却します。即時償却は税金が消える制度ではなく、課税を将来へ繰り延べる仕組みです。
中古の設備でも即時償却できますか?
新品であることが前提のため、 中古で取得した設備は対象になりません 。
できません。この制度は新品であることが前提です。中古資産で減価償却を前倒ししたい場合は、中古資産の耐用年数の見積りによる方法など、別の枠組みで検討することになります。
設備を取得してから経営力向上計画を申請できますか?
証明書・確認書は設備の取得前に申請する必要があり、 先に発注すると適用を受けられない可能性があります 。
原則としてできません。工業会等の証明書または経済産業大臣の確認書は設備の取得前に申請する必要があり、計画の認定を受けてから設備を取得するのが基本の順序です。発注前に手続きを始めてください。
申告書への添付を忘れるとどうなりますか?
明細書の添付は適用の要件であり、 添付が漏れると制度そのものが使えません 。
適用を受けられません。特別償却の適用には確定申告書への所定の明細書の添付が要件とされており、経理処理として損金経理していただけでは認められません。認定書の写しなども含め、必要書類を確認してください。
即時償却した設備を数年で売却しても問題ありませんか?
売却自体は可能ですが、 売却額のほぼ全額が課税対象の利益になります 。
制度上の問題はありませんが、帳簿価額がほぼゼロのため売却額のほぼ全額が利益として課税されます。繰り延べた課税が売却時に表に出る形です。短期間で入れ替える前提の設備では、税額控除のほうが有利になることもあります。
年度改正で即時償却は何が変わりますか?
工具・器具備品の取得価額要件が引き上げられ、 40万円を境に使う制度が分かれます 。
工具および器具備品の取得価額要件が30万円以上から40万円以上へ引き上げられます。同時に少額減価償却資産の特例が40万円未満へ拡充されるため、40万円を境に使う制度が分かれる形になります。適用期限は2027年3月31日までとされています。
契約や支出の前に論点を確認しておけば、選べる打ち手が広がります。
出典: 中小企業庁|中小企業経営強化税制 / 国税庁|税について調べる / e-Gov法令検索



