子会社株式の評価損は損金になる?税務要件と回復可能性の判断

子会社の赤字が続いても、会計上の減損処理をそのまま法人税上の損金にできるわけではありません。株式の価値が著しく低下し、近い将来の回復が見込まれず、決算で評価損を計上したことを事実と資料で説明する必要があります。
法人が保有する非上場の子会社株式について、売却や清算前に評価損を計上する場面を扱います。制度の適用は取引条件で変わるため、契約前と申告前に税理士等へ確認してください。
- 子会社の直近試算表と事業計画
- 株式の税務簿価と実価算定
- 回復計画・支援計画と社内決裁
- 評価損の会計仕訳と申告調整表
会計で評価損を計上しても税務で自動的に損金にはならない

決算仕訳と法人税申告は、それぞれの判定基準で分けます。
会計は回復可能性を反映して帳簿価額を切り下げる
子会社の純資産悪化や事業計画の失調があれば、会計基準に従い投資価値の切下げを検討します。 会計上の評価損額と税務上の損金算入額を別欄で管理します。
直近月次、予算差異、資金繰り、減損前後の価額を取締役会資料に紐づけます。処理の先送りと恣意的な切下げの両方を防ぎます。
税務は事実、価値低下、回復性、損失経理を確認する
単なる赤字、株価の一時的な下落、将来損失の引当てでは足りません。事業年度末の実価と帳簿価額の差額を、当期に損失として経理した範囲で判定します。
税務上は資産の評価替えを例外的に認める制度です。 「将来売れば損が出る」だけで、当期の評価損は決まりません。
有価証券の価値が著しく低下したなどの法定事実があり、損失経理した一定額が損金算入の対象です。
子会社株式等の会計上の評価と税効果に関する考え方が整理されています。
税務上の評価損は法定の事実から判定する

価値低下の原因を、取引所価格、発行法人の資産状態、法的整理等に分けます。
非上場子会社は資産状態の著しい悪化を見る
累積損失、債務超過、主力契約の終了、許認可喪失、事業閉鎖など、価値を直接低下させた事実を日付順に整理します。
非上場株式では市場価格がないため、発行法人の資産状態が著しく悪化したかを確認します。 価値低下の原因と発生日を決算日の事実として特定します。
解散や更生手続中は残余価値を個別に積み上げる
解散決議があっても、債務弁済後に親会社へ分配される資産が残れば、株式価値がゼロとは限りません。 解散決議だけで子会社株式の実価をゼロとしません。
現預金、売掛金の回収見込み、土地の処分価額、未払税金、従業員退職金、清算費用を反映し、親会社の受取見込額を計算します。
実価は決算日現在の資産・負債等を基礎に算定する

帳簿純資産を実態価値へ修正し、具体的な事業計画は価額そのものではなく回復可能性の判断材料として分けて検討します。
土地・有価証券・債権を実態価値へ修正する
含み益のある資産を除外して純資産を過小にしたり、簿外債務を看過したりしないよう、資産負債ごとに根拠を残します。
不動産は鑑定や取引事例、有価証券は市場価格、債権は回収可能性に基づき修正します。 実価算定表に修正前残高、修正額、根拠資料を並べます。
事業継続中なら将来収益力も切り捨てない
売上、売上総利益、固定費、設備投資、運転資金の前提を、過去実績と業界環境で検証します。計画の数字を作った担当者と承認者も記録します。
一時的な債務超過でも、受注残高、独自技術、固定顧客、支援契約により改善が具体的なら、収益価値を検討します。 純資産がマイナスでも、具体的な収益力があれば株価はゼロとは限りません。
具体的な業績回復計画とその実現可能性は、株式価値の回復見込みを判断する重要な事実になり得ます。
資産の評価損は法人税法上の要件に基づき、各事業年度の損金算入額を判定します。
出典:e-Gov 法人税法
評価損の金額は税務簿価と実価の差額を上限にする

価値低下の幅だけでなく、損金算入する対象株数と帳簿価額を固定します。
一株当たりの実価と保有株数で再計算する
税務簿価5億円、決算日の実価1.5億円なら、差額3.5億円が評価損検討の上限です。 評価損は帳簿価額を下回る実価までの差額に限定します。
ただし、著しい低下と回復可能性の要件を満たさなければ差額は損金になりません。上限額と要件判定を同じ表で分けます。
決算で損失経理した金額を申告書と照合する
後日の申告書上だけで追加するのではなく、株主総会または取締役会で承認された決算書と、申告調整が一致するようにします。
当期の損金とするには、原則として決算で評価損を費用または損失として計上します。 決算仕訳、株式台帳、別表の損金算入額を一致させます。
回復可能性は抽象的な支援意思ではなく実行計画で判定する

「親会社が支援する」という一文では、回復可能性の有無は説明できません。
資金、人員、受注、期限が確定した計画を検証する
金融機関の合意、顧客の発注書、取締役会の承認など、第三者が確認できる証拠があるかを確かめます。
増資額、借入限度、経営者派遣、拠点閉鎖、新規受注などの施策を、実行責任者と日付付きで検証します。 数値目標と実行済みの証拠がある再建計画は、回復判定に影響します。
過去の計画未達を反映して予測の確度を下げる
毎期予算が大幅に未達であるのに、同じ前提の計画を繰り返すと信頼性が下がります。 将来計画は楽観値ではなく、過去の予実差で補正します。
過去3年の予実差、未達理由、前提の変更点を表にします。回復を否定する場合にも、自社に都合の悪い材料を含めて説明します。
子会社支援の損金性は、支援の合理性、支援額、管理責任などを総合的に検討します。
清算中の完全子会社株式等には、二重の損失認識を調整するための特別な損金制限があります。
再建支援を行うなら寄附金認定と評価損を別々に検討する

子会社を救済する支援費用の損金性と、子会社株式の評価損は別の論点です。
支援の経済合理性を親会社側の損失回避から説明する
危機の程度、支援額、他株主の負担、経営責任、再発防止策を示します。株式評価損の根拠ファイルとは分けて保存します。
債権放棄や無利息貸付けは、関係会社への単なる利益供与ではなく、倒産によるより大きな損失を防ぐためかを検討します。 支援費用の経済合理性と株価の回復可能性は、別々の結論を出します。
追加支援は株価を回復させる事実になり得る
反対に、延命資金の供給だけで事業競争力が戻らないなら、追加支援の事実だけで回復可能性があるとは限りません。
評価損の直後に大規模増資や受注保証を予定していれば、決算日に本当に回復が見込まれなかったかが問われます。 評価日後の増資・融資・受注保証は、決算日に可視化されていたかを確認します。
100%子会社の清算を前提とした評価損は特則を確認する

残余財産確定時の欠損金引継ぎと株式損失の不認識による二重控除を防ぐ仕組みを見ます。
解散が予定される完全子会社株式は通常の評価損と分ける
完全支配関係のある子会社が解散し、残余財産が確定する場面では、子会社株式の損失に特別な制限がかかります。 清算方針が固まった100%子会社は、通常の税務評価損だけで結論を出しません。
清算開始前に評価損を計上する場合も、将来の欠損金引継ぎと組み合わせた制限の対象かを確認します。
清算しない子会社との境界日を社内決定で特定する
事業年度末時点で取締役会がどの方針を決定し、従業員・取引先・金融機関へどのように通知したかを記録します。
口頭で清算を検討した日、事業を停止した日、解散決議日は同じではありません。 評価損の決算日と解散方針の決定日を、取締役会議事録で照合します。
税務調査で再現できる一冊の判定ファイルを作る

数年後にも決算日の情報だけで同じ結論へたどれるようにします。
事実認定・価格評価・回復判定・仕訳を四つの章に分ける
各結論の横に証憑名、作成日、作成者、承認者を書きます。後日入手した資料は、決算日当時に存在した事実を示すかを明記します。
第一章に悪化の事実、第二章に実価算定、第三章に回復可能性、第四章に決算仕訳と申告調整を収録します。 結論ごとに決算日現在の証拠を紐づけ、後知恵と分けます。
忌避した資料と不利な事実も残す
評価結果に反する受注情報や資産の含み益を除外すると、判定全体の信頼性が下がります。 自社に有利な資料だけでなく、回復を示す反対資料への検討も保存します。
反対資料を収集した上で、なぜ結論を変えないのか、または評価額を修正したのかを記録します。判定者と承認者を分けると客観性も高まります。
有価証券の価額が著しく低下した場合の判定と実価算定に関する取扱いが示されています。
出典:国税庁 法人税基本通達
有価証券の評価損と申告調整は、決算書と法人税申告書の明細を整合させて管理します。
子会社株式の評価損と損金でよくある質問

子会社が債務超過なら株式評価損は必ず損金ですか?
必ずではありません。含み益、収益力、回復計画を含む実価と回復可能性を判定します。
会計監査で減損したら税務でも認められますか?
会計上の判定は重要な資料ですが、税務上の法定要件は別途確認します。
実価は純資産価額だけで算定できますか?
帳簿純資産を含み損益や簿外債務で修正して実価を計算します。将来の事業計画は、その価値が回復する見込みの判断材料として別に検討します。
100%子会社を清算する前に評価損を計上できますか?
清算時の欠損金引継ぎと株式損失の特則が関係するため、通常の評価損と分けて判定します。

