グローバルミニマム課税とは|7.5億ユーロ基準と3つのルール

海外に子会社を持っているが、グローバルミニマム課税が自社に関係するのか分からない。7.5億ユーロという基準を聞いても、日本円でいくらなのか、どの数字と比べるのかが判然としない。
対象は年間総収入金額が7.5億ユーロ以上の多国籍企業グループです。日本円でおよそ1,369億円にあたります。この規模に届かない会社は対象外です。届く場合、国ごとの実効税率が15%を下回る分について、IIR・UTPR・QDMTTの3つのルールで課税されます。
この記事でわかること
- 対象になる企業グループの規模
- 最低税率15%の意味
- IIR・UTPR・QDMTTの役割の違い
- 日本での適用開始時期
- 申告期限が1年3か月後であること
- 中小企業に関係するかどうか
対象は7.5億ユーロ以上のグループ

まず自社が対象かを判定します。ほとんどの会社はここで外れます。
年間総収入金額7.5億ユーロが基準
対象は、年間総収入金額が7.5億ユーロ以上の多国籍企業です。
財務省の資料では、日本円でおよそ1,369億円と示されています。為替によって円換算額は変動します。
単体の売上ではなくグループ全体の総収入金額で判定します。連結の数字を確認してください。
多国籍であることが前提
国内だけで事業を行っている会社は多国籍企業グループに該当しません。
海外に子会社や恒久的施設を持っていることが前提です。輸出しているだけの会社は対象になりません。
グループの構成を国別に整理すると、判定はすぐに終わります。
中小企業には基本的に関係しない
この規模に届く日本企業は限られており、中小企業が対象になることは通常ありません。
連結売上1,369億円という水準は、上場企業でも一部です。自社が該当しないことを確認できれば、それ以上の対応は不要です。
ただし、対象となる多国籍企業グループの一員である場合は、規模にかかわらず情報提供を求められることがあります。
| 判定項目 | 内容 |
|---|---|
| 年間総収入金額 | 7.5億ユーロ以上(およそ1,369億円) |
| 判定の単位 | グループ全体の総収入金額 |
| 企業の形態 | 多国籍企業グループであること |
| 最低税率 | 15% |
ただし、対象となる多国籍企業グループの一員である場合は、規模にかかわらず情報提供を求められることがあります。
国ごとに実効税率15%を確保する

仕組み自体は単純です。足りない分を埋めるという発想です。
国別に実効税率を計算する
グループ全体ではなく、所在地国ごとに実効税率を算定します。
ある国で15%を下回っていれば、その国について上乗せの税額が生じます。他の国で高い税率を払っていても相殺されません。
実効税率は法定税率ではなく、実際に負担した税額を基礎に計算します。優遇税制を使っている国では低く出ます。
15%に足りない分を上乗せする
軽課税国での実効税率が10%なら、差の5%分が上乗せの対象になります。
一定の適用除外を除いた所得が計算の基礎です。実体のある事業活動に対応する部分は控除される仕組みがあります。
税率の低い国に利益を移す動機を薄めることが制度の目的です。
国税と地方税を合わせて見る
最低税率15%は、法人所得に対する国税と地方税を合わせた税率です。
国税だけで判定するわけではありません。地方税の負担も含めて実効税率を算定します。
日本の法人実効税率は15%を大きく上回るため、日本に所在する会社について上乗せが生じる場面は限られます。
判定は国ごとです。グループ全体で平均すれば15%を超えていても、特定の国が下回っていればその国について上乗せが生じます。
IIRは親会社に課税する

3つのルールのうち、最初に導入された中心的な仕組みです。
軽課税国の子会社の分を親会社が納める
グループ内の子会社が軽課税国にある場合に、親会社に課税する仕組みです。
所得合算ルールと呼ばれます。子会社の所在地国で15%に足りない分を、親会社の所在地国が徴収します。
日本に親会社がある多国籍企業グループなら、日本で申告と納付をすることになります。
令和5年度改正で法制化された
日本では令和5年度税制改正で各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税が創設されました。
3つのルールのうち最も早く導入され、すでに適用が始まっています。対象となる企業はすでに実務に入っています。
同時に、特定基準法人税額に対する地方法人税の創設と情報申告制度の創設も行われました。
情報申告制度もセットで入った
課税だけでなく、グループの情報を申告する制度も併せて創設されています。
各国の税務当局が情報を共有するための仕組みです。上乗せの税額が生じない場合でも、情報の提出が必要になることがあります。
対象グループの一員であれば、自社に納税が生じなくても関与を求められます。
対象グループの一員であれば、自社に納税が生じなくても関与を求められます。
UTPRとQDMTTは令和8年4月から

残る2つのルールが動き出します。ここが直近の変更点です。
UTPRはIIRが働かない場面を埋める
軽課税所得ルールと呼ばれ、所得合算ルールが機能しない場面で補完し、自国内の子会社に課税する仕組みです。
親会社の所在地国がIIRを導入していない場合などに働きます。日本にある子会社が納税義務を負う形です。
外国の親会社を持つ日本子会社にとっては、こちらのほうが関係します。
QDMTTは自国で先に取る
国内ミニマム課税と呼ばれ、国内会社について他国のルールに優先し、実効税率が15%に至るまで課税します。
自国の税収を他国に取られないための仕組みです。日本で先に取っておけば、他国のIIRやUTPRは働きません。
日本の実効税率は15%を上回るため、実際に課税が生じる場面は限られると考えられます。
適用は令和8年4月1日以後の対象会計年度
この2つは、令和8年4月1日以後に開始する対象会計年度から適用されます。
令和7年度税制改正で法制化され、適用は1年遅れて始まります。3月決算の会社なら令和8年4月開始の期からです。
これで制度の創設という観点からは一応の区切りがついた、と財務省は整理しています。
| ルール | 誰に課税するか | 日本での適用 |
|---|---|---|
| IIR(所得合算ルール) | 親会社 | 令和5年度改正で導入済み |
| UTPR(軽課税所得ルール) | 自国内の子会社 | 令和8年4月1日以後開始の対象会計年度 |
| QDMTT(国内ミニマム課税) | 国内会社(他国に優先) | 令和8年4月1日以後開始の対象会計年度 |
これで制度の創設という観点からは一応の区切りがついた、と財務省は整理しています。
申告期限は1年3か月後

通常の法人税とは期限が違います。準備の時間は長めに取られています。
対象会計年度の終了から1年3か月
申告期限は、対象会計年度の終了から1年3か月後です。
法人税の申告期限が原則2か月であることと比べると、かなり長く設定されています。
各国の税額を集計して実効税率を計算する必要があるためです。それだけ作業が重いということでもあります。
初回だけ1年6か月後
最初の申告に限り、対象会計年度の終了から1年6か月後とされています。
制度が始まったばかりで実務が固まっていないことへの配慮です。3か月分の猶予が上乗せされています。
初回で体制を作れるかどうかが、その後の負担を左右します。
情報申告と納税申告は別
税額が生じない場合でも、情報申告が必要になることがあります。
グループの構成、各国の所得と税額を報告する制度です。納税の有無とは別に義務が発生します。
国税庁が様式と別表を公表しています。早めに確認して、必要なデータを収集できる体制を整えてください。
国税庁が様式と別表を公表しています。早めに確認して、必要なデータを収集できる体制を整えてください。
納税額が生じなくても情報申告の義務が残る場合があります。対象グループの一員であれば、まず申告義務の有無を確認してください。
実務で何が変わるか

対象になる会社では、集める数字の種類が増えます。
国別のデータを揃える
実効税率を国ごとに計算するため、所在地国別の所得と税額を集計する必要があります。
連結決算のためのデータとは切り口が違います。国別報告書の作成経験があれば、その延長で考えられます。
現地の税制で認められた優遇や繰越欠損の状況も反映します。子会社任せにできない部分です。
軽課税国への進出判断が変わる
税率の低い国に拠点を置いても、15%までは結局課税されることになります。
税率だけを理由にした立地選択の意味が薄れます。人件費や市場へのアクセスなど、事業上の理由で判断することになります。
既存の拠点についても、税負担の見通しを立て直す必要があります。
グループ内の情報連携が要る
各国の子会社から決算後すぐにデータを吸い上げる仕組みが必要になります。
申告期限は1年3か月後ですが、集計と検証に時間がかかります。決算のスケジュール自体を見直すことになります。
会計システムと税務のデータをどうつなぐかが実務上の課題になります。
誤解しやすいところ

報道で名前を聞いた人が取り違えやすい点を挙げます。
日本の法人税率が15%になるわけではない
これは国際的な最低税率を確保する制度で、日本の法人税率を変える話ではありません。
中小法人の年800万円以下の所得に対する15%という軽減税率とは別のものです。名前が似ているだけです。
日本の法人実効税率は15%を大きく上回っています。国内で完結している会社には影響しません。
すべての海外進出企業が対象ではない
海外に子会社があっても、グループの年間総収入金額が7.5億ユーロに届かなければ対象外です。
この規模に届く日本企業は限られています。まず数字で判定してください。
対象でないと分かれば、それ以上の対応は不要です。時間をかける前に確認する価値があります。
グループ全体の平均では判定しない
実効税率は所在地国ごとに計算します。
高税率の国と低税率の国を平均して15%を超えていても、低い国について上乗せが生じます。
全体の税負担率だけを見て安心しないでください。国別の数字が必要です。
中小法人の軽減税率15%とグローバルミニマム課税の最低税率15%は、まったく別の制度です。数字が同じなだけで混同しないでください。
対象になる会社の準備

UTPRとQDMTTが始まる令和8年4月に向けて、やることは決まっています。
様式と別表を確認する
国税庁がグローバル・ミニマム課税に関する様式と別表を公表しています。
何を記載する必要があるかが分かれば、集めるべきデータが逆算できます。まずここから始めてください。
情報申告の様式も含まれています。納税がなくても提出が要る場合に備えられます。
子会社からのデータ収集を仕組みにする
決算後に各国から所得と税額のデータを定型で集める流れを作ります。
都度依頼する形では期限に間に合いません。フォーマットと提出期日を決めて周知してください。
現地の会計基準と日本の基準の差異をどう調整するかも、先に決めておく必要があります。
外部の専門家と組む
国際課税の実務は複雑で、社内だけで完結させるのは現実的でない場面が多くなります。
初回の申告は特に負担が大きくなります。1年6か月の猶予があるうちに体制を作ってください。
顧問税理士が国際課税に対応しているかを確認し、必要なら専門の事務所を並行して使うことになります。
顧問税理士が国際課税に対応しているかを確認し、必要なら専門の事務所を並行して使うことになります。
グローバルミニマム課税に関するよくある質問

実務へ落とし込むときに、相談として多く寄せられる論点をまとめます。
自社は対象になりますか?
グループの年間総収入金額が7.5億ユーロ以上かで判定します。
年間総収入金額が7.5億ユーロ以上の多国籍企業グループが対象です。日本円でおよそ1,369億円にあたります。単体の売上ではなくグループ全体の総収入金額で判定し、海外に子会社などを持っていることが前提です。この規模に届かなければ対象外です。
日本の法人税率が15%になるのですか?
日本の法人税率を変える制度ではありません。
違います。これは国際的な最低税率を確保する制度で、日本の法人税率を変えるものではありません。中小法人の年800万円以下の所得に対する15%の軽減税率とも別の制度です。名前と数字が似ているだけです。
IIRとUTPRとQDMTTはどう違いますか?
課税する相手が親会社・子会社・国内会社と分かれます。
IIRは軽課税国の子会社の分を親会社に課税する仕組み、UTPRはIIRが機能しない場面で自国内の子会社に課税する仕組み、QDMTTは国内会社について他国のルールに優先して自国で課税する仕組みです。役割が補完し合う関係になっています。
UTPRとQDMTTはいつから適用されますか?
令和8年4月1日以後に開始する対象会計年度からです。
令和8年4月1日以後に開始する対象会計年度からです。令和7年度税制改正で法制化され、適用は1年遅れて始まります。IIRは令和5年度改正ですでに適用が開始されています。
申告期限はいつですか?
対象会計年度の終了から1年3か月後です。
対象会計年度の終了から1年3か月後です。初回のみ1年6か月後とされています。法人税の申告期限が原則2か月であることと比べるとかなり長く、各国の税額を集計して実効税率を計算する作業量を反映しています。
税額が出なければ何もしなくていいですか?
納税がなくても情報申告が必要な場合があります。
情報申告が必要になる場合があります。グループの構成や各国の所得と税額を報告する制度で、納税の有無とは別に義務が生じます。対象グループの一員であれば、まず申告義務の有無を確認してください。



