令和8年度税制改正大綱|中小企業と個人事業主に効く改正

改正大綱は項目が多すぎて、自社に関係するところがどこか分からない。設備投資の制度が新しくできたと聞いたが、既存の経営強化税制とどう違うのかも整理できていない。
実務に効くのは4つです。設備投資では特定生産性向上設備等投資促進税制が新設され、即時償却か7%の税額控除を選べます。少額減価償却資産の枠は40万円未満に上がりました。個人側は基礎控除が62万円へ、消費税ではインボイスの2割特例が終わり3割特例に移ります。
この記事でわかること
- 新設された特定生産性向上設備等投資促進税制の中身
- 既存の経営強化税制との使い分け
- 少額減価償却資産が40万円未満になったこと
- 基礎控除と給与所得控除の引き上げ
- インボイスの2割特例終了と3割特例
- いつから適用されるか
実務に効くのは4つ

大綱は分量がありますが、中小企業と個人事業主に直接効くところは絞れます。
令和7年12月26日に閣議決定された
令和8年度税制改正の大綱は、令和7年12月26日に閣議決定されています。
大綱は方針であって、実際の適用は改正法の成立と施行日で決まります。すでに施行されている項目も多くあります。
この記事では、決算や申告の実務で判断が変わる項目に絞って整理します。
設備投資に新しい制度ができた
いちばん大きいのは、特定生産性向上設備等投資促進税制の創設です。
即時償却か取得価額の7%の税額控除を選べます。経済産業大臣の確認を受けることが前提です。
既存の中小企業経営強化税制とは併用できません。どちらを使うかを選ぶことになります。
金額の基準が軒並み上がった
少額減価償却資産の特例は30万円未満から40万円未満へ引き上げられました。
中小企業経営強化税制の工具・器具備品も30万円以上から40万円以上へ、中小企業投資促進税制の工具も同じく40万円以上になりました。
個人側では基礎控除が58万円から62万円へ、給与所得控除の最低保障額が65万円から69万円へ上がっています。
| 分野 | 主な改正 |
|---|---|
| 設備投資 | 特定生産性向上設備等投資促進税制の創設 |
| 少額資産 | 40万円未満へ引き上げ・3年延長 |
| 個人所得 | 基礎控除62万円・給与所得控除69万円 |
| 消費税 | 2割特例の終了と3割特例の創設 |
個人側では基礎控除が58万円から62万円へ、給与所得控除の最低保障額が65万円から69万円へ上がっています。
特定生産性向上設備等投資促進税制

新設された制度です。即時償却を使ってきた事業者にとってはいちばん重要な変更になります。
即時償却か7%の税額控除を選べる
対象設備を取得して事業に使えば、普通償却限度額との合計で取得価額までの特別償却か、取得価額の7%の税額控除を選べます。
建物、建物附属設備、構築物については税額控除率は4%です。機械装置やソフトウェアなどは7%になります。
税額控除の上限は当期の法人税額の20%です。控除しきれなかった分は3年間繰り越せます。
設備ごとに金額の下限がある
対象になるのは一定の規模以上のものに限られます。
機械装置は1台または1基の取得価額が160万円以上、工具および器具備品はそれぞれ120万円以上です。
工具・器具備品には、1台40万円以上でその事業年度の合計が120万円以上になるものも含まれます。少額のものをまとめて判定できる余地があります。
経済産業大臣の確認が要る
産業競争力強化法の改正を前提に、経済産業大臣の確認を受けた設備に限られます。
確認を受けられるのは改正法の施行日から令和11年3月31日までです。確認を受けた日から5年を経過する日までに取得して事業に使う必要があります。
生産等設備が対象なので、事務用器具備品、本店や寄宿舎の建物、福利厚生施設は該当しません。
| 設備 | 取得価額の下限 | 税額控除率 |
|---|---|---|
| 機械装置 | 1台または1基が160万円以上 | 7% |
| 工具・器具備品 | それぞれ120万円以上 | 7% |
| 建物・建物附属設備・構築物 | 一定の規模以上 | 4% |
| ソフトウェア | 一定の規模以上 | 7% |
生産等設備が対象なので、事務用器具備品、本店や寄宿舎の建物、福利厚生施設は該当しません。
経営強化税制とは併用できない

新旧のどちらを使うかを選ぶ場面が出てきます。ここを取り違えると計画が崩れます。
投資計画の期間中は経営強化税制を使えない
特定生産性向上設備等の投資計画の確認を受けた法人は、その計画の期間中は中小企業経営強化税制の適用を受けられません。
地域経済牽引事業の促進区域内で特定事業用機械等を取得した場合の特別償却・税額控除制度も同様に使えなくなります。
経営強化税制の繰越税額控除制度だけは対象外とされています。過去に発生した繰越分は引き続き使えるという整理です。
経営強化税制の金額基準も上がった
中小企業経営強化税制の工具および器具備品は、取得価額要件が30万円以上から40万円以上になりました。
令和8年4月1日以後に取得等をするものから適用されます。30万円台の器具備品は対象から外れます。
中小企業投資促進税制の工具についても、合計120万円以上を判定する際の1台あたりの基準が30万円以上から40万円以上に上がりました。
どちらを選ぶかは規模で決まる
設備の金額が大きく、経済産業大臣の確認を取れるなら新制度が候補になります。
新制度は税額控除の繰越が3年間できます。当期の法人税額が小さくて控除しきれない場合、この違いが効いてきます。
確認の手続きが負担になるなら、これまでどおり経営強化税制を使う判断もあります。設備を入れる前に決めてください。
投資計画の確認を受けると、その期間中は中小企業経営強化税制が使えなくなります。複数の設備を年度をまたいで入れる計画なら、どの設備をどちらに載せるかを先に決めてください。
少額減価償却資産は40万円未満へ

使う頻度がいちばん高い制度です。金額の線と対象者の両方が動きました。
30万円未満から40万円未満へ
対象となる減価償却資産の取得価額が30万円未満から40万円未満に引き上げられました。
令和8年4月1日以後に取得等をするものから適用されます。判定は取得等をする日で行うので、3月31日までの取得は従来どおり30万円未満です。
所得税についても同様とされているため、個人事業主にも同じ基準が適用されます。
年300万円の上限は据え置き
取得価額の合計額については、引き続き年300万円が上限とされています。
金額の線が上がったぶん、上限に届くのが早くなります。40万円未満の資産なら8台弱で使い切る計算です。
超えた部分は通常の減価償却です。取得する年を分けると枠を新しく使えます。
従業員400人超の法人は対象外
令和8年4月1日以後の取得から、常時使用する従業員数が400人を超える法人が対象から除外されました。
改正前は500人超が除外の基準でした。範囲が狭まっています。
適用期限は3年延長され、令和11年3月31日までになりました。
| 項目 | 改正前 | 改正後 |
|---|---|---|
| 取得価額 | 30万円未満 | 40万円未満 |
| 年間の上限 | 300万円 | 300万円(据え置き) |
| 除外される法人 | 従業員500人超 | 従業員400人超 |
| 適用期限 | 令和8年3月31日 | 令和11年3月31日 |
適用期限は3年延長され、令和11年3月31日までになりました。
基礎控除は62万円になる

個人側の改正です。物価上昇に合わせて控除を見直すという考え方が入りました。
基礎控除が4万円上がる
合計所得金額が2,350万円以下の個人について、基礎控除の額が4万円引き上げられ62万円になります。
令和8年分以後の所得税について適用されます。給与や公的年金等の源泉徴収は令和9年1月1日以後に支払うものからです。
合計所得金額が2,350万円を超える場合は48万円、2,400万円超で32万円、2,450万円超で16万円と段階的に下がります。
給与所得控除の最低保障額も上がる
給与所得控除について、65万円の最低保障額が69万円に引き上げられます。
こちらも令和8年分以後の所得税から適用されます。源泉徴収税額表の改正は令和9年1月1日以後の給与からです。
令和8年と令和9年については、最低保障額をさらに5万円引き上げる特例が創設されます。年末調整で適用します。
扶養の判定ラインも動く
同一生計配偶者と扶養親族の合計所得金額要件が58万円以下から62万円以下に引き上げられます。
ひとり親の生計を一にする子の要件も62万円以下、勤労学生は85万円以下から89万円以下になります。
家内労働者等の必要経費に算入する最低保障額も65万円から69万円へ上がります。ひとり親控除は35万円から38万円になり、こちらは令和9年分以後です。
| 項目 | 改正前 | 改正後 |
|---|---|---|
| 基礎控除(合計所得2,350万円以下) | 58万円 | 62万円 |
| 給与所得控除の最低保障額 | 65万円 | 69万円 |
| 同一生計配偶者・扶養親族の要件 | 58万円以下 | 62万円以下 |
| 勤労学生の要件 | 85万円以下 | 89万円以下 |
| ひとり親控除 | 35万円 | 38万円(令和9年分以後) |
家内労働者等の必要経費に算入する最低保障額も65万円から69万円へ上がります。ひとり親控除は35万円から38万円になり、こちらは令和9年分以後です。
インボイスは2割特例から3割特例へ

消費税の改正です。時期が迫っているぶん、対応の優先度は高くなります。
2割特例は令和8年9月で終わる
現行の2割特例は、令和8年9月30日までの日が属する課税期間で終了します。
個人事業者の課税期間は暦年なので、令和8年分が最後です。12月決算の法人なら令和8年12月期が最後になります。
決算月によって最後の課税期間が変わります。自分の課税期間で確認してください。
個人事業者には3割特例ができる
個人事業者である適格請求書発行事業者の令和9年分と令和10年分は、納付税額を消費税額の3割にできます。
課税標準額に対する消費税額に7割を乗じた額を控除する形です。法人には適用がありません。
適用を受けるには確定申告書にその旨を付記します。事前の届出は不要です。
免税事業者からの仕入れは7・5・3割へ
経過措置の控除割合が見直され、適用期限が2年延長されて令和13年9月30日までになりました。
令和8年10月1日から70%、令和10年10月1日から50%、令和12年10月1日から30%と段階的に下がります。
同時に控除限度額が見直され、一の免税事業者などからの課税仕入れが年1億円を超える部分は経過措置の対象外になります。改正前は10億円でした。
| 期間 | 免税事業者からの仕入れで控除できる割合 |
|---|---|
| 令和5年10月1日から令和8年9月30日 | 80% |
| 令和8年10月1日から令和10年9月30日 | 70% |
| 令和10年10月1日から令和12年9月30日 | 50% |
| 令和12年10月1日から令和13年9月30日 | 30% |
| 令和13年10月1日以後 | 控除不可 |
同時に控除限度額が見直され、一の免税事業者などからの課税仕入れが年1億円を超える部分は経過措置の対象外になります。改正前は10億円でした。
そのほか押さえておく改正

該当する事業者は多くありませんが、当てはまれば金額の大きい項目です。
中小企業技術基盤強化税制が3年延長
研究開発を行う中小企業向けの制度について、税額控除率の特例と控除税額の上限の上乗せ特例が3年延長されました。
増減試験研究費割合が12%を超える場合の特例と、試験研究費が平均売上金額の10%を超える場合の特例が対象です。
あわせて、控除限度超過額を3年間繰り越せることになりました。当期の税額が小さい年でも取りこぼしが減ります。
カーボンニュートラル投資促進税制は縮小して延長
適用期限は2年延長されましたが、特別償却率と税額控除率は引き下げられました。
中小企業者の場合、炭素生産性向上率22%以上で特別償却率30%または税額控除率10%です。改正前はそれぞれ50%と14%でした。
求められる炭素生産性向上率の水準も17%以上から22%以上へ上がっています。ハードルが上がって効果が下がる形です。
住宅ローン控除は5年延長
住宅借入金等特別控除の適用期限が、令和7年12月31日から令和12年12月31日まで5年延長されました。
個人事業主が自宅兼事務所を取得する場合、家事按分との関係を整理しておく必要があります。
業務に使う割合が大きいと控除額が調整されることがあります。両方を取りにいくときは事前に確認してください。
大綱には地方税や国際課税を含む多数の項目があります。この記事では中小企業と個人事業主の決算・申告で判断が変わる項目に絞っています。
いつ何をするか

適用時期がばらばらなので、自分の決算期に落として並べ直します。
設備投資は取得する日で判定する
少額減価償却資産も経営強化税制も、取得等をする日で基準が変わります。
令和8年3月31日までに取得したものは旧基準です。30万円台の設備なら、4月以降に取得するほうが有利になる場合があります。
ただし事業に使い始めた年で経費にするので、年度末をまたぐ判断は納品と設置の時期まで含めて考えてください。
インボイスは9月末が区切り
2割特例が使えるのは令和8年9月30日までの日が属する課税期間です。
個人事業者は令和8年分までが2割特例、令和9年分から3割特例です。会計ソフトの設定を切り替える時期を決めておいてください。
免税事業者との取引がある場合、10月から控除割合が80%から70%に下がります。
個人の申告は令和8年分から
基礎控除と給与所得控除の引き上げは、令和8年分以後の所得税から適用されます。
つまり令和9年3月の確定申告で反映されます。源泉徴収税額表の改正は令和9年1月以後の給与からで、時期が1年ずれます。
従業員を雇っている場合、令和8年分の年末調整で対応することになります。
令和8年度税制改正大綱に関するよくある質問

実務へ落とし込むときに、相談として多く寄せられる論点をまとめます。
大綱はいつ閣議決定されましたか?
閣議決定は令和7年12月26日です。
令和7年12月26日です。大綱は方針を示すもので、実際の適用は改正法の成立と施行日で決まります。少額減価償却資産の特例のように、すでに令和8年4月1日から施行されている項目もあります。
新しくできた設備投資の税制はどんな内容ですか?
即時償却か取得価額の7%の税額控除を選べます。
特定生産性向上設備等投資促進税制です。経済産業大臣の確認を受けた設備について、即時償却か取得価額の7%の税額控除を選べます。建物や建物附属設備、構築物は4%です。税額控除の上限は当期の法人税額の20%で、控除しきれない分は3年間繰り越せます。
経営強化税制と両方使えますか?
投資計画の期間中は経営強化税制を使えません。
使えません。特定生産性向上設備等の投資計画の確認を受けた法人は、その計画の期間中は中小企業経営強化税制の適用を受けられません。繰越税額控除制度だけは対象外とされています。設備を入れる前にどちらを使うか決めてください。
少額減価償却資産の40万円未満はいつから適用されますか?
令和8年4月1日以後の取得等から適用されます。
令和8年4月1日以後に取得等をする資産からです。3月31日までに取得したものは従来どおり30万円未満が基準です。年間の合計300万円という上限は据え置きで、従業員400人超の法人は対象から除外されました。
基礎控除はいくらになりますか?
合計所得2,350万円以下なら62万円になります。
合計所得金額が2,350万円以下の個人で62万円です。改正前の58万円から4万円上がります。令和8年分以後の所得税に適用され、源泉徴収は令和9年1月1日以後に支払う給与等からです。給与所得控除の最低保障額も65万円から69万円になります。
インボイスの2割特例はいつまでですか?
令和8年9月30日までの課税期間までです。
令和8年9月30日までの日が属する課税期間までです。個人事業者は令和8年分が最後で、令和9年分と令和10年分は新設された3割特例に移ります。法人には3割特例の適用がなく、令和8年の課税期間で終わります。




