減価償却資産の取得価額とは?付随費用の範囲を解説

減価償却資産の取得価額 とは、本体価格だけでなく、その資産を購入し、事業で使える状態にするまでに直接要した費用を含む金額です。運賃や据付費を漏らすと、減価償却費だけでなく少額資産・即時償却の金額判定も変わります。
一方、不動産取得税、登録免許税、使用開始前の借入利息など、取得に関連していても取得価額へ算入しないことができる費用があります。重要なのは、請求書の名称ではなく支出の性質と法令上の選択肢です。
この記事でわかること
- 減価償却資産の取得価額とは何か
- 取得価額に含める購入付随費用
- 据付費・試運転費など供用に直接必要な費用
- 取得価額に含めないことができる費用
- 借入利息と割賦購入の利息・手数料
- 購入代価と購入のために要した費用は原則取得価額
- 事業供用に直接必要な据付・設定等も原則取得価額
- 一定の租税公課・利息等は算入しない選択がある
- 税抜・税込経理と2026年改正後の金額基準を確認する
減価償却資産の取得価額とは何か

購入した減価償却資産の取得価額は、購入代価、購入のために要した費用、事業の用に供するために直接要した費用の合計が原則です。本体の請求額だけを固定資産台帳へ登録するのではなく、同じ導入案件に関係する請求書を横断して集計します。
取得価額はその後の税務計算の土台になる
取得価額を基礎として通常の減価償却費、特別償却、税額控除、少額資産の金額基準、 売却時の帳簿価額などを計算します 。最初の登録を誤ると複数年度に影響するため、取得時点での確認が重要です。
一つの機能単位で判定する
少額資産などの取得価額は、 通常一単位として取引される単位で判断します 。応接セットは机と椅子の一組、部屋のカーテンは部屋単位の組合せという国税庁の例があります。見積書を部品ごとに細分化しても、独立して機能しない場合は合計で判定します。
契約金額と固定資産台帳を照合する
一つの設備投資について、本体販売会社、運送会社、施工会社、 システム設定会社など複数社から請求が届くことがあります 。稟議番号や案件コードを共通化し、契約額、追加発注、値引き、未払費用を一覧にしてから固定資産台帳へ登録します。
取得価額がプロジェクト総額より少ない場合は、通常経費にした費用、算入しない選択をした租税公課・利息、撤去費などの内訳を残します。総額との差額を説明できれば、付随費用の計上漏れと意図的な除外を区別できます。
値引き・割戻し・補助金を混同しない
販売者からの値引きや割戻しは 購入代価の調整として検討します 。一方、国や自治体から受ける補助金は、販売者との取引価格そのものを下げるものとは限りません。補助金の圧縮記帳を利用する場合も、まず取得価額を正しく確定し、その後に制度要件と経理方法を確認します。
販売者からの値引きや割戻しは 購入代価の調整として検討します 。 一方、国や自治体から受ける補助金は、販売者との取引価格そのものを下げるものとは限りません。補助金の圧縮記帳を利用する場合も、まず取得価額を正しく確定し、その後に制度要件と経理方法を確認します。
出典: 国税庁「No.5400 減価償却資産の取得価額に含めないことができる付随費用」 / 国税庁「No.5403 少額の減価償却資産になるかどうかの判定の例示」
取得価額に含める購入付随費用

資産を購入して手元へ引き取るために通常必要な支出は、原則として取得価額に含めます。販売業者と運送会社から別々に請求されても、購入に要した費用であれば性質は変わりません。
| 費用 | 原則処理 | 確認資料 |
|---|---|---|
| 引取運賃・配送費 | 取得価額へ算入 | 配送伝票、運送会社請求書 |
| 荷役費 | 取得価額へ算入 | 搬入・荷下ろし明細 |
| 運送保険料 | 取得価額へ算入 | 輸送保険の対象期間・資産 |
| 購入手数料・仲介料 | 取得価額へ算入 | 仲介契約、成功報酬明細 |
| 関税 | 取得価額へ算入 | 輸入許可通知、納付書 |
| 値引き・割戻し | 購入代価の調整を検討 | 合意書、値引通知 |
社内の旅費や選定費は直接性を確認する
設備選定のための視察旅費、社内会議費、担当者人件費などは、 すべてが自動的に取得価額になるわけではありません 。資産取得との直接性、製作原価への算入、通常の販売管理費との区分を確認します。
複数資産の共通費は合理的に配賦する
一回の輸送で複数台を搬入した場合や、共通工事で複数設備を設置した場合は、重量、取得価額、 作業時間など合理的な基準で配賦します 。毎回都合のよい基準へ変えず、社内ルールを継続します。
セット販売は各資産の時価等で配分する
建物と土地、機械本体と周辺装置、ハードウェアとソフトウェアを一括価格で購入した場合、 各資産へ取得価額を配分します 。契約書の便宜的な内訳だけに依存せず、個別見積り、鑑定、固定資産税評価額、通常販売価格など、取引に合う合理的な基準を選びます。
配分結果は、土地と建物の減価償却、資産別耐用年数、少額資産基準、消費税の区分にも影響します。後から売却する可能性がある資産は、購入時点で個別の取得価額を説明できる資料を保存してください。
下取りは購入資産と売却資産を分ける
旧車両や旧設備を下取りに出して新資産を購入した場合、 差額支払額だけを新資産の取得価額にしないよう注意します 。新資産の購入価額と、旧資産の売却価額・帳簿価額を分け、売却損益と新資産の取得をそれぞれ記録します。
据付費・試運転費など供用に直接必要な費用

購入後、その資産を本来の用途で使える状態にするため直接必要な支出も取得価額です。機械の据付費、基礎工事、初期設定などは、本体と別会社の請求でも一体として検討します。
機械の引取運賃と据付費
国税庁は、特別償却対象の機械について、引取運賃と据付費が機械の取得価額を構成し、 特別償却の適用対象にもなると示しています 。これは付随費用を任意に通常経費へ落とせないことも意味します。
試運転に伴う材料費・電力費
設置・調整のための試運転費は、 事業供用に直接必要かを確認します 。一方、本稼働開始後の通常運転費は期間費用です。試運転で製品や副産物が生じる場合、収益との対応を含め個別に整理します。
既存設備の移設や撤去費
新設備導入に伴う既存設備の撤去・移設費は、支出目的と工事内容により、新設備の取得価額、既存設備の移設費、除却損、 修繕費などに分かれます 。工事見積を一式表示のまま処理せず、作業別に内訳を取得します。
試運転から本稼働への境界を記録する
据付調整のための試運転と、 販売用製品を通常生産する本稼働では費用の性質が異なります 。試運転計画、性能検査、検収条件、最初の通常生産日を記録し、材料・電力・外注費を期間別に集計します。
試運転中に作った製品を販売した場合は、試運転費の総額だけを取得価額へ入れるのではなく、生産物の価額や収益との関係も確認します。設備担当と経理担当で、どの日時までが据付調整工程かを決めてください。
建物附属設備・構築物との区分を確認する
機械のための配線、配管、基礎、空調、防音設備は、機械本体の据付費になる場合と、 建物附属設備・構築物など別資産になる場合があります 。設備専用か建物全体に効用があるか、取り外して移設できるか、見積内訳と図面から資産区分を検討します。
機械のための配線、配管、基礎、空調、防音設備は、機械本体の据付費になる場合と、 建物附属設備・構築物など別資産になる場合があります 。 設備専用か建物全体に効用があるか、取り外して移設できるか、見積内訳と図面から資産区分を検討します。
取得価額に含めないことができる費用

取得との関連があっても、法人税上、取得価額に算入しないことができる費用があります。「含めてはいけない」のではなく、算入しない処理を選択できる費用である点に注意してください。
| 算入しないことができる費用 | 実務上の確認 |
|---|---|
| 不動産取得税、旧自動車取得税 | 対象資産と納付時期を確認 |
| 新増設に係る事業所税 | 通常の事業所税と区別 |
| 登録免許税、登記・登録費用 | 司法書士報酬等の内訳を確認 |
| 計画変更で不要となった調査・測量・設計等 | 不要になった事実と変更経緯を保存 |
| 旧契約を解除し別資産を取得する際の違約金 | 新資産との直接費用と区別 |
任意処理は一貫した台帳へ残す
費用処理を選んだ場合は、勘定科目、対象資産、 根拠を明確にします 。固定資産台帳の取得価額とプロジェクト総支出が一致しない理由を後から説明できるよう、除外費用一覧を作ります。
税務上の選択と会計方針を確認する
税務上算入しないことができる費用でも、 会計基準や会社の方針で資産計上する場合があります 。会計上と税務上に差が生じるときは、申告調整や一時差異を含めて確認します。
計画中止・変更費用は経緯を残す
当初計画の調査・測量・設計費が、新しい資産の取得にそのまま利用されているなら、 新資産との直接関係を検討します 。計画変更で実際に不要となった費用を算入しない処理と、名称だけ旧計画のまま新計画へ転用した費用は区別します。
取締役会議事録、計画中止の決裁、設計変更指示書、旧契約の解約書を保存し、どの成果物が使われず、どの成果物が新資産に引き継がれたかを明確にします。違約金も、旧契約を解除して別資産を取得した経緯を契約書で確認します。
租税公課・登記費用は請求内訳を分ける
司法書士や行政書士の請求には、登録免許税などの立替金、登記申請報酬、 契約書作成や調査の報酬が一括されることがあります 。全額を同じ扱いにせず、税金・登録費用・取得に直接必要な専門家報酬を明細で分けます。
借入利息と割賦購入の利息・手数料

設備取得資金の利息は、支払時期と契約上の区分で処理が変わります。元本、本体価格、割賦利息、回収費用が契約書で分かれているかを確認します。
使用開始前の借入利息
減価償却資産を取得するための借入金について、 使用開始までの期間に対応する利息は取得価額に算入しないことができます 。資産計上を選ぶ場合との比較や会計方針も確認します。
使用開始後の借入利息
使用開始後の期間に対応する利息は、 期間の経過に応じて損金へ算入するのが基本です 。元利均等返済の毎回支払額を全額元本や全額利息として処理しないよう、返済予定表と照合します。
割賦価格に利息が含まれる場合
割賦販売契約で、購入代価と割賦期間分の利息、売手の代金回収費用等が明確に区分されている場合、 その利息・費用は取得価額に算入しないことができます 。区分のない総額表示では、契約内容を販売者へ確認します。
資金使途と利息期間を対応させる
一本の借入金で複数の設備と運転資金を賄う場合、 設備取得に対応する借入額と利息を合理的に区分します 。借入実行日、各設備の支払日、供用日、返済日を並べ、使用開始前・後の期間を計算できる資料を残します。
手数料という名称でも、融資手数料、保証料、割賦回収費用、設備購入手数料では性質が異なります。金融契約書と売買契約書を別々に確認し、本体取得に直接要する費用か、資金調達の期間費用かを整理します。
利息を除外するなら契約書上の明確な区分が重要
割賦総額から社内計算で任意の利息相当額を差し引くのではなく、契約上、 購入代価と利息・回収費用が明確に区分されているかを確認します 。区分が不明な場合は販売会社から返済明細を入手し、税務処理前に根拠を整えます。
ソフトウェア・自社製作資産の取得価額

ソフトウェアは本体ライセンス代だけでなく、導入設定や自社仕様への修正、開発に直接要した人件費等が取得価額になることがあります。保守費や利用料と混在しやすいため契約明細を分けます。
購入ソフトウェアの設定・付随修正
国税庁の法人税基本通達では、購入したソフトウェアの導入に必要な設定作業と、 自社仕様に合わせるための付随的修正費は取得価額に算入するとされています 。本稼働後の保守、障害対応、軽微な更新とは区別します。
自社開発ソフトウェア
原材料費、労務費、経費に加え、 事業供用のために直接要した費用を適正な原価計算で集計します 。開発担当者の全給与を機械的に資産計上せず、開発作業と保守・調査・通常業務の工数を記録します。
大幅改修と保守更新を分ける
既存ソフトウェアの仕様を大幅に変更して新たなソフトウェアを製作する費用は、 新資産の取得価額になり得ます 。一方、機能維持や不具合修正は修繕費等となる場合があり、改修目的、追加機能、利用可能期間への影響を文書化します。
クラウド利用料と導入資産を分ける
SaaSの月額利用料、導入コンサルティング、データ移行、追加開発、 操作研修が一つの契約に含まれることがあります 。契約期間に応じた利用料と、自社が取得するプログラム・設定成果物、それらを事業供用するために直接必要な費用を項目別に確認します。
研修費や業務設計費も、すべてが自動的にソフトウェアの取得価額になるわけではありません。ソフトウェアを利用可能にする直接作業か、従業員教育・経営コンサルティングという期間費用かを、作業報告書と成果物から判断します。
開発工数は段階・目的別に記録する
企画調査、要件定義、製作、テスト、本番移行、保守の各段階について、 担当者の工数と外注費を分けます 。研究・調査の段階と、製作することを決定した後の直接開発工程を混在させないことが、再現可能な原価計算につながります。
企画調査、要件定義、製作、テスト、本番移行、保守の各段階について、 担当者の工数と外注費を分けます 。 研究・調査の段階と、製作することを決定した後の直接開発工程を混在させないことが、再現可能な原価計算につながります。
取得価額が少額資産・即時償却の判定に与える影響

取得価額は、通常償却だけでなく少額資産制度や設備投資税制の入口判定にも使います。付随費用を足すと基準を超える場合があるため、見積時点の本体価格だけで制度適用を決めないでください。
年4月以後の少額減価償却資産特例
一定の中小企業者等が2026年4月1日以後に取得する減価償却資産は、 40万円未満 が特例の取得価額基準です 。年間の取得価額合計300万円が上限で、青色申告、対象法人、貸付用途等の要件があります。適用期限は2029年3月31日までです。
一般の10万円・20万円基準との違い
名称ではなく要件と税務効果の違いで区分することが重要です
10万円未満の少額減価償却資産や、20万円未満を3年間で均等償却する一括償却資産は別制度です。40万円未満特例を利用できない法人でも、他制度の要件を満たす可能性があります。一括償却資産の仕組みと比較してください。
税抜・税込経理で判定額が変わる
税抜経理方式を適用する法人は原則税抜額、 税込経理方式は税込額で取得価額を判定します 。免税事業者は税込経理方式です。インボイス制度により控除できない消費税相当額がある取引では、取得価額への影響を個別に確認します。
金額基準は付随費用を足した一単位で比較する
税抜本体価格が39万円でも、取得価額へ算入すべき運賃・設定費が3万円あれば42万円となり、 40万円未満の基準を満たしません 。本体請求と設定請求の日付や取引先が違っても、同じ一単位を使用可能にする直接費用なら合わせて判定します。
反対に、取得価額に算入しないことが認められる登録費用や明確に区分された利息を、根拠に沿って費用処理した結果、判定額が変わる場合があります。制度利用のために恣意的に分けるのではなく、通常の取得価額ルールを先に適用してください。
制度要件は金額以外も同時に確認する
40万円未満であることだけでは 少額減価償却資産特例を使えません 。法人規模、青色申告、従業員数、貸付用途、年間300万円上限、取得・供用時期、申告明細などを一覧にします。即時償却や税額控除も、対象設備、計画認定、供用期限を別途確認します。
40万円未満であることだけでは 少額減価償却資産特例を使えません 。 法人規模、青色申告、従業員数、貸付用途、年間300万円上限、取得・供用時期、申告明細などを一覧にします。即時償却や税額控除も、対象設備、計画認定、供用期限を別途確認します。
出典: 国税庁「令和8年度 法人税関係法令の改正の概要」 / 中小企業庁「少額減価償却資産の特例」 / 国税庁「消費税等の経理処理方式の違いによる少額資産判定」
減価償却資産の取得価額とは?付随費用の範囲を解説に関するよくある質問

減価償却資産の取得価額とは?付随費用の範囲を解説は節税だけを理由に選んでもよいですか?
いいえ。税額だけでなく、事業上の必要性、手元資金、将来の課税、解約・売却条件まで確認して判断します。不要な支出を増やすと、税負担が下がっても手元資金は減るためです。
適用できるかは何で決まりますか?
対象者、取引や資産の内容、金額、取得・契約・支払・事業供用の時期、申告書類で決まります。制度名が同じでも、事実関係が違えば税務処理は変わります。
契約や支出の前に確認する書類は何ですか?
見積書、契約書、仕様書、請求書、支払条件、所有権と解約条件を確認します。税制を使う場合は、申請や認定が取引前に必要かも確認してください。
税務調査に備えて何を残せばよいですか?
取引目的を示す稟議書、契約書、請求書、振込記録、納品・事業供用を示す写真や作業記録を残します。帳簿の摘要と証憑の内容を一致させることが重要です。
顧問税理士にはいつ相談すべきですか?
契約・購入・支払の前が基本です。決算直前では申請期限や納期に間に合わないことがあるため、利益の着地が見えた段階で早めに相談してください。
制度改正や最新要件はどこで確認できますか?
国税庁、財務省、e-Gov、制度を所管する省庁の最新資料で確認します。前年の記事や事業者資料だけで判断せず、適用日と経過措置まで確認してください。
契約や支出の前に論点を確認しておけば、選べる打ち手が広がります。
出典: 国税庁「No.5400 減価償却資産の取得価額に含めないことができる付随費用」 / 国税庁「No.5403 少額の減価償却資産になるかどうかの判定の例示」 / 国税庁「特別償却の適用を受ける機械の引取運賃、据付費」 / 国税庁「法人税基本通達 第1款 固定資産の取得価額」7-3-15の2・3 / 国税庁「令和8年度 法人税関係法令の改正の概要」



