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遂に2兆円超え 拡大し続けるWeb広告市場
今年3月に電通が発表した「日本の広告費の推移」によると、2019年に国内のインターネット広告費は初めて2兆円を超え、テレビ広告費を上回ったとのことです。
2010年代、一本調子で堅調に推移したインターネット広告は、今年に入って新型コロナウイルスの影響によるオンライン化やDX等の追い風も加わり、大方の予想を上回る勢いで、さらに伸び率を加速しそうな状況となっています。
本稿では、2020年代の幕開けとともに、一段ギアを上げた拡大局面に入ったと言えるWeb広告(インターネット広告、オンライン広告)市場を、そこに参入する、あるいは何らかの形で関わる人や会社(プレーヤー)の視点から、紐解いていきます。
売上高広告宣伝比率5割超えも!?
少し古い資料ですが、2017年9月の東洋経済新聞社の記事「広告宣伝費の比率が高い200社ランキング」によると、売上高に占める広告宣伝費の割合が5割を超えるような企業も僅かながら存在するようです。
5割はさすがに極端な例ですが、上位20位までなら2割超、10位までなら3割超となっており、2020年代を展望する意味では、売上高宣伝広告比率2〜3割は当たり前の時代がもうすぐそこまで来ているのかもしれません。
同記事の広告宣伝費は、広告がオンラインかオフラインかを区別してはいませんが、このランキングの上位にはネット関連企業やIT企業が多く名を連ねています。
実際には、インターネット広告の広告主がインターネットとは特に関係のない(あるいは関連性が薄い)事業を営んでいたとしても、何の問題もないはずです。
そう考えると広告のニーズ(宣伝したい)のうち、まだ市場に参加していない、もしくは、時代に合った適正な広告宣伝費の拠出に至っていない事業者が、相当数存在すると類推されます。
良貨は悪貨を駆逐する!?
グレシャムの法則とは逆ですが、貨幣を現代のインターネット広告に置き換えてみると、概ね改善の方向へ進んでいると見ていいようです。
昨年の12月にJIAA(日本インタラクティブ広告協会)が発表した「ネット広告に関するユーザー意識調査」によると、9割を超えるユーザー(消費者)がWeb広告に対して好意的(比較的受容度が高い)となっています。
Web広告の市場自体がまだ小さかった初期の段階では、悪質な広告も散見されましたが、市場の成長・拡大に伴ってその相対的な割合が減ってきているのでしょう。
また、メディア(出稿先)やDSPなどの配信側プレーヤーあるいはデバイスやブラウザ等の開発元メーカーによって、最終的にはユーザーが目にする広告のフィルタリングも、ひと頃に比べて進化してきていますし、徐々にではあるものの法整備等が進んでいることも背景として考えられそうです。
消費者側の視点に立っても、特に新しいサービスや商品について知ることができるのは、広告に依拠する場合も多いのが事実であり、スマートフォンの普及によって一気に情報取得メディアの王座を獲得したインターネットに、広告が欠かせない存在であるという認識が定着しつつあると言えます。
コロナ + DX で民族大移動
移動はできるだけ控えるのが好ましいコロナ下だからこそ、非物理的な移動、デジタルシフトが俄然加速しています。
コロナ以前から叫ばれはじめていたDX(デジタルトランスフォーメーション)も、テレワークの奨励などと相まって、いやおうなくその必要性が突きつけられている格好です。
決断力や行動力に乏しいと言われがちな我が民族(!?)にとっては、むしろ好機とも考えられる状況が、図らずも新型コロナウイルスによってもたらされているのです。
これまで技術やスキームを適切に活用できていなかった諸問題が一気に露見しましたが、これに符合するかのように、先日発足した新政権が「デジタル庁」構想を打ち上げ、国としてもようやく大きく舵を切った形となりました。
消費者や一般企業にとっても、もちろんBtoBの業態であっても、リアルな空間ではなく、サイバー空間に置き換えられるものは、(特に国土が狭小な我が国においては)仮にポストコロナの時代へ移っても、置き換えてしまうほうがメリットが多いのではないでしょうか。
そこで、本題の「Web広告」に目を転じ、これから本格的に展開していこうと考えている方々へ向けて、新しい時代にふさわしい広告の位置づけについて、考察してみましょう。
広告の商流とプレーヤー
広告主 ─ 媒体 ─ 消費者
広告を出したい人(広告主)と消費者(広告の視聴者)をつなぐのが媒体(メディア、広告を掲載・発信する)という基本的な構図はオンラインでもオフラインでも変わりません。
広告主 ─ 代理店 ─ 媒体
大半の広告主の専業は当然広告そのものではないため、広告主とメディアの間に広告に関する専門知識を有する広告代理店が入るのが一般的な商流です。
従来型の広告の場合は、ほとんどがこの枠組みで完結します。
代理店の下に制作会社等が複数ぶら下がる場合もありますが、商流としては基本的にこのパターンの範疇と考えて差し支えないでしょう。
一方で、Web広告の場合、後述するその特徴や特性が多岐にわたるためもあって、媒体も含め広告主と消費者の中間に位置するプレーヤーが多種多様に存在します。
Web広告の商流に介在する業態の主要例
- 代理店
- メディアレップ (Medea Representatives)
- 媒体
- DSP (Demand Side Platform)
- SSP (Supply Side Platform)
- アフィリエイトネットワーク
メディアレップとは、その名のとおりメディア(媒体)をの立場を代理する業態です。
従来の代理店にもそのような立ち位置が求められる場面はあり得ますが、それを専門とする業態が生まれた背景には、スマートフォンアプリ等も含むインターネットメディアの種類や数が膨大であることと、それらの中に多くのユーザー(視聴者)を抱える人気のメディアが多数存在することなどが挙げられます。
広告は事業の推進力
ほとんどどんな商売でも(場合によっては非営利であっても)、広告は(ほぼ恒常的に)欠かせないタスク(あるいはコスト)と言ってよいでしょう。
事業を進めていくうえで、それなりに大きなウエイトを占める広告ですから、その仕組みや役割について理解を深めておくことが肝要です。
推進力である広告の選択は、事業の成否をも分ける大きな要素なのです。
従来型の広告とWeb広告の違い
多くの経営者や大手企業のマーケティング担当者にとって、事業における広告の位置づけといった類いの話は、論を俟たないでしょう。
広告そのものがアナログかデジタルかという視点において、その果たすべき目的には大きな差異はないと考えられますが、それではいったいインターネットの台頭によって、広告の何が変わったのでしょうか。
Web広告(オンライン)の特徴
機能性 |
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多様性 |
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柔軟性 |
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従来型(オフライン)広告の媒体
紙媒体 |
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電波媒体 |
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その他 |
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特に「4マス」と呼ばれる在来のテレビ、ラジオ、新聞、雑誌媒体は、ターゲットとなる視聴者数、購読者数の規模の大きさから、出稿費用が高いため、中小規模以下の企業にとっては、事業規模に見合った出稿計画が立てにくいという問題が常につきまとっています。
Web広告の場合も媒体による差異がないわけではありませんが、媒体そのものの数が多いことや、媒体の規模による地域的な制約等はなく、出稿費用も比較的少額からはじめることが可能であり、この手の障壁はほとんどないと言えるでしょう。
広告主側の事業規模に関わらず、それぞれの規模に合った広告出稿が可能であることは、中小事業者や地方の事業者にとっても、より大きな事業展開を描けるメリットと言えるのではないでしょうか。
冒頭で述べたように、テレビ広告を超えたWeb広告は、広告主にも消費者にもメリットが大きい特性を生かし、早晩従来型の全広告を合わせた額をも超えることでしょう。
新しい時代の幕開けとともに、より大きなチャンスがより平等な形でより多くの人に巡るためのエンジンとしての役割を、Web広告に期待したいと思います。
参考サイト
- 日本の広告費の推移グラフ(2019年まで)電通の調査 / メディアレーダー
- 2018年度のインターネット広告国内市場規模は約1.6兆円、2023年度には約2.8兆円まで拡大を予測 / 矢野経済研究所
- 広告宣伝費の「比率が高い200社」ランキング / 東洋経済オンライン
- インターネット広告に関するユーザー意識調査 / JIAA